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253 魔獣襲撃①

 その日の夕刻、国境に最も近い街へと戻ってきた一行…。あと二時間くらいで街へ着けるだろうか?夜は宿屋で眠れそうだな(騎士団は人数が多いせいで野宿だけど…)。

 街道は麦畑の広がる平原の中を走っていて、とても見通しが良い。

 その道の遥か先に何者かが(たたず)んでいた。距離的には100mはあるだろうか?輪郭くらいしか見えないけど、どうにも人間とは思えない。

 人間のように二本足で立っているそいつの身長は約2メートル。これは街道脇に立つ並木との比較で推測した。

 俺は御者台の上に立ち上がり、【アイテムボックス】から取り出した望遠鏡を使って、そいつの詳細な容姿を確認してみた。ちなみに、俺たちの馬車は11台中、先頭から3台目だ。すぐ後ろにはアンナさんたちの馬車(うちの幌馬車)が続いている。


 望遠鏡の中に見えたのは牛のような顔、頭の左右から延びる長く尖った角、赤銅色の身体だった。そして、右手には斧らしき武器を持っていた。

 距離は遠いけど、望遠鏡越しにそいつを【鑑定】することができたよ。その結果は以下の通り。


・種別:ミノタウロススカウト

・種族:ミノタウロス族

・スキル:

 ・耐鑑定       45/100

 ・状態異常耐性   102/200

 ・魔法抵抗      94/200

 ・斧術       115/200

 ・投擲       101/200

 ・突進        66/100


 おいおい、これって魔獣ランクで言えばどのくらいなんだろう?

 スカウト(斥候)というくらいだから、ミノタウロス族の中では弱いほうなのかな?

 ただ、問題は【魔法抵抗】スキルの高さだよ。初級魔法と中級魔法は100%抵抗(レジスト)されるし、上級魔法ですら74%の確率で抵抗(レジスト)されてしまうのだ。

 物理的な戦闘力も高く、【剣術】120(レジェンダリー)のユーリさんだったら対抗できるだろうけど、普通の人は単独では太刀打ちできそうにない。

 【投擲】スキルがあるってことは遠隔攻撃もできるし、【突進】はよく分からないスキルだけど、おそらく高速で突っ込んでくるって感じ?


 俺は一枚の紙に急いでメモった上記のステータスをナナに見せてあげた。なお、エーベルスタ語で書いたのは、あとでパーティーメンバーにも見せる可能性を考えたからだ。

「これってたしかBランク魔獣だったと思う。でもダンジョンにしか生息していないやつが、なんで街道上にいるんだろう?確かに強いんだけど、それでも騎士が10人くらいで囲んでタコ殴りすれば倒せると思うよ。死傷者は出るかもしれないけど…」

 最後はちょっと痛ましそうな表情になったナナだった。

 確かに即死さえしなければ、魔法やポーションで治癒することは可能だ。ただ、手足をもぎ取られた場合なんかは、まだ俺では欠損を再生することができないし、教会に頼むと莫大な金がかかるんだよな(ユーリさんが未だに隻腕である理由だ)。


「勇者である俺の出番だな」

「タイキ、あんたが(かな)う相手じゃないよ。無謀な挑戦は()めときなさいね」

 ナナから渡されたメモ用紙を見たあとのサガワ君とホシノさんの会話だ。

 俺としてもサガワ君の参戦は許可できないな。


 うーん、どうすべきだろうか?

 あの魔獣が自然発生したものであれば、ある程度こちらの手の内を明かしても良い。しかし、誰かの作為的なものであれば、その誰かに俺の力を見せたくないんだよな。

 ナナが街道上にいるはずがないと言っていたってことは、召喚された可能性が高いってことなのだ。つまり、アークデーモンを召喚した人工遺物(アーティファクト)のようなものが他にもあって、クロムエスタ神国の工作員がそれを使用した可能性は否定できないってわけ。

 その工作員にこちらの能力(戦力)に関する情報を渡したくないんだけど、騎士たちに被害が及ぶのも避けたい。それが俺の悩んでいる理由だ。


 なお、俺の手札として使えるのは、以下の2枚のカードだ。


・アークデーモンのメフィストフェレス氏を呼び出して、あの魔獣(ミノタウロススカウト)を倒してもらう(間違いなく瞬殺だろう)

・【アイススピア】と【ウインドブラスト】の『複合魔法』を使って俺が倒す(確率的に一撃では倒せないけど…)


 確実なのはメフィストフェレス氏のほうだけど、俺が魔王っぽく見えるだろうし、騎士たちへの口止めも大変だ。

 やはり『複合魔法』一択かな。


 俺が悩んでいる間に、マルクル小隊長は部下の騎士たちに対して的確な指示を与えていた。

「大盾を構えた第一分隊5名が横一列に壁を作り、その後方を第一分隊の残り5名と第二分隊10名が支える。第三分隊と第四分隊の計20名は騎乗し、左右に展開せよ。第三分隊が右、第四分隊が左だ。盾で足止めした奴を包囲撃滅する。第五分隊はニホン人たちの護衛だ」

 恐れる様子もなく、きびきびと動き出した騎士たち。さすがは精鋭揃いの第二騎士団員だ。

 この様子では、俺たち冒険者の出番は無いかもしれないな。


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