024 依頼の掲示板
気絶しそうになったアンナさんだったが、気を取り直して俺に言った。
「〈後衛(ポーター)〉の項目にはバツを付けておきましょう。それと屋敷に戻ってからお話があります」
真剣な目(怖い目とも言う)で見られたので、俺はアンナさんの言葉に従った。
あのぉ、屋敷に帰るのが怖いです。さっきアンナさんの身体に触ったからセクハラとか言われるのだろうか?
受付嬢に提出した登録用紙はすぐに処理され、冒険者カードという運転免許証のようなものを貰った。顔写真は無いけど…。
カードのサイズは運転免許証とほぼ同じだったが、材質は薄い鉄板だった。これで首筋を狙えば頸動脈くらいカットできそうな薄さだよ。
「冒険者ギルド登録料とカード発行手数料として10,000ベルをいただきます。なお、最初はFランクからのスタートですが、依頼をこなしていけばランクアップしていくこともできますので、頑張ってくださいね」
Fラン大学生だった俺がFラン冒険者にジョブチェンジしたってわけか。
ちなみに、ギルド規約やランク制度の詳細については、あとでアンナさんが教えてくれるらしい。Fランクってことは上から六番目ってことで良いのかな?
あ、そうそう。このタイミングでステータスを表示して【職業】の項目を見てみたのだが、『無職』だったのが『冒険者(Fランク)』に変わっていた。
これで【住所不定・無職】からは卒業だ。住所不定はそのままだが…。
「依頼はこちらの掲示板に貼り出されます。パーティーへの勧誘なんかも貼られていますので、できるだけ誰か他の人と組んで依頼を受けることをお勧めします」
アンナさんの案内で左側の壁一面に貼られている様々な依頼書を順番に見ていく。
ランクごとに区分されているみたいで、当然俺はFランクの依頼を確認することになる。あれ?アンナさんのランクは?
「あの、アンナさんの冒険者ランクは何ですか?」
「領都リブラを中心に二年間ほど活動しておりまして、この前ようやくDランクに上がりました。あ、でもツキオカ様ほどの実力があれば、すぐにランクアップされると思いますよ」
なるほど。一年で一つレベルが上がる感じだろうか。先は長いな。
一応、ざっとFランクの依頼を見てみたのだが、簡単だけど体力的にきつくて、依頼料も安いものばかりだった。これは早めにランクアップしないと、やってられないかもしれないな。
ただ幸いだったのは、一つ上のランクの依頼までは受注できるというギルド規約だったことだ。つまりEランクの依頼を受けられる。
で、そっちのほうも見てみたのだが、採取系メインのFランクとは違って、何かの討伐系が多かった。よく知らない名前の生き物ばかりだったが…(名前から何となく分かったけど)。
例えば、『ホーンラビット』とか『ダイアウルフ』とか、あと『ゴブリン』など…。てか、そんなのどこにいるんだよ。…って思ったら、依頼書には目撃された場所がきちんと書かれていた。
うーん、一人でも狩れるだろうか?
最初はどこかのパーティーに加わって討伐経験を積むべきかもしれないな。一人だと命の危険がありそうだし…。
俺は掲示板の端っこにあったパーティー勧誘の貼り紙エリアに移動して、かなりの枚数が貼られている勧誘ポスターを一枚一枚見ていった。
ほとんどは【○○職求む。定員○名】という感じで特定の役割の人を募集するものだった。
中には『アットホームでホワイトな職場、新人さん大歓迎』のような謳い文句が書かれているものもあった。いや『ホワイト』って書いてるってことは、『ブラック』もあるのかよ。
『火か水の魔術師求む』『Cランク以上の魔術師求む』など魔術師も大人気だ。ただ、俺の登録内容に合致するようなものはなかなか見当たらなかった。風と光は不人気なのか?
俺とアンナさんが勧誘ポスターの前で佇んでいると、後ろから声をかけられた。
「お前たち、若く見えるが新人か?その体格だと前衛職じゃねぇな。弓使いなら歓迎するぜ」
振り向いた先に立っていたのは精悍な顔つきをした大男だった。身長は2メートル近いんじゃないか?
見上げる感じになってしまい、これは首が疲れそうだ…って思ったよ。年齢は30代くらいだろうか。
どう返答すべきか迷っていた俺よりも先にアンナさんが答えた。
「私はリブラを拠点に活動しているDランクのアンナです。こちらの男性は今日ここで登録したばかりの新人ですが…」
「へぇー、Dランクならそこそこ戦闘力はあるってこったな。で、そっちの坊主は成人したばかりって感じだが、何ができる?」
あー、21歳だから成人したばかりってのは当たっている。しかし『坊主』呼ばわりは失礼だろう。
「坊主ではなく、サトルと言います。二属性の魔術師です」
「おっとすまねぇな。二属性ってのはすげぇじゃねぇか。属性は何だ?」
「風魔法の初級と光魔法の中級が使えます」
大男は驚愕の表情になって、俺をじっと見た。あ、【鑑定】しようとしているな。
しばらく俺を見つめていた大男が首を振りながら言った。
「おいおい、鑑定できねぇぞ。お前【耐鑑定】のスキルレベルがよっぽど高いんだな」
逆に俺のほうもこの大男を鑑定してみた。先にやられたんだから失礼じゃないよな。
で、鑑定結果は以下の通り。
・名前:マウントバッテン
・種族:獣人族
・状態:健康
・職業:冒険者(Bランク)
・スキル:
・鑑定 73/100
・耐鑑定 44/100
・魔法抵抗 59/100
・剣術 87/110
・斧術 91/110
・徒手格闘術 76/110
うわっ、ツッコミどころが満載だ。
まず【種族】が『獣人族』って何だよ。見た目では獣人っぽくは無いけどな。
【鑑定】のスキルレベルが高いし、【魔法抵抗】もかなりの数値だ。俺の攻撃魔法の中では【水魔法】だけがダメージを与えられる感じだな。
なにより自分以外でスキル上限が100を超えている人を初めて見たよ(武術系が軒並み110だ)。てか、斧術のレベル高っ!
よく見たら背中にでっかい斧を背負っていた。怖っ!
タイトル回収完了です。Fラン大学生からFラン冒険者へ(笑)
もっとも、将来的に冒険者ランクがFのままってことは無いでしょうけど…。




