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238 ギルドへの報告

「ねぇ、お兄ちゃん。帝国ではイザベラちゃんとずっと一緒だったんだよね?このカカオ、じゃない『コーア』ってイザベラちゃんも知ってるの?」

「いや、教えてないぞ。教えたが最後、ルナーク商会で買い占められる未来が見えてたからな。いや、原産地まで直接買い付けに乗り込んでいくかもしれない」

「だよね~」

 まぁ、帝都ではめっちゃ世話になったから、そのお礼としてチョコレートを持っていくつもりではある。絶対に喜ぶはずだし…。

「とりあえず、残りの『コーア』を全部ここに出しておくから、自分の【アイテムボックス】にでも入れておいてくれ。自由に使ってくれて良いからさ。あ、イザベラお嬢様に献上する分のチョコについては、できるだけ早く作ってくれると嬉しいかな」

「分かったよ、お兄ちゃん。口当たりには全然納得いってないし、ミルクチョコやナッツ入りのチョコも作ってみたいよね。まぁ、色々と試してみるよ」

「ああ、頼む」

 ナナの前世が料理好きのすごい女子高生(JK)だったことに感謝だな。普通の人はカカオからチョコレートを作ることなんてできないと思うぞ(…てか、俺には無理だ)。


 このあと夕食までのほんの短い時間、書斎にこもって報告書を書き始めた俺…。

 帝都行きという冒険者ギルドからの依頼(本当は王室からの依頼だけど)に対して、その詳細を報告するための書類だ。


・ニホン人たち(勇者・聖女・賢者)の(一か月前の時点における)ステータス

・クロムエスタ神国諜報部員による賢者暗殺未遂事件

・MPKっぽいオーガロード襲撃事件(これが本当にクロムエスタ神国の暗躍なのかどうかは不明)

・ビエトナスタ王国国防軍第二部第五課との共闘

・ニホン人たちの留学を交渉するための全権大使一行がエーベルスタ王国を訪問したこと(これは事後報告になる)


 パレッタ氏との密約については、ギルドを介さず、直接王宮へ報告するつもりだ。通信魔道具の件も併せてね。

 集中してペンを走らせていると、その途中でサーシャちゃんがお茶を持ってきてくれた。

 あ、ちょうど良いな。

「サーシャちゃん、他の皆には秘密なんだけど、君だけにお土産を買ってきたんだ。受け取ってくれるかな?」

 そう言いつつ、【アイテムボックス】からオウカさん謹製の短剣を取り出した。

「これはドワーフ族の鍛冶師が作った名品でね。俺の【鑑定】によれば、素晴らしい品であることは間違いないよ」

「え?あ、ありがとうございます。旦那様、嬉しいです」

 満面の笑みで短剣を受け取ったサーシャちゃんは本当に嬉しそうだ。喜んでもらえて俺も嬉しい。


「君の【アイテムボックス】に入れておいてね。あと、マリーナさんにだけは俺からってことを言っても良いけど、他の皆には自分で買ったものだと言うように」

 サーシャちゃんだけに買ってきたってのは、不公平感があるからな。てか、皆に服やアクセサリをお土産に買おうかとも思ったんだけど、自分のセンスが悪いことを自覚しているせいで躊躇したのだ。

 女性へのお土産って難しいよね。


 ・・・


 翌日、一人で冒険者ギルドを訪れて、支部長さんと面会した。

「ツキオカ男爵、お久しぶりでございます。今回の長期依頼につきまして、早々に達成なされたこと、祝着(しゅうちゃく)に存じます」

「どうもお久しぶりです。こちらが報告書になりますので、ご査収ください」

「拝見させていただきます」

 支部長が俺の書いた報告書に目を通している間に、俺はゆっくりとお茶とお茶()け(の菓子)を堪能した。


「素晴らしい成果です。すぐに王室へご報告せねば…。ゴルドレスタ帝国大使との会合についても、これら内部事情が分かっているならば、かなり強気に交渉できますな」

 そうなのだ。帝国大使はクロムエスタ神国の件を秘密にして交渉しようとするだろうけど、王国は(この報告書によって)帝国側の内情を事前に把握できるってわけだね。


 ちなみに、依頼達成報酬だけど、三か月分の調査費用として3千万ベル。

 成功報酬は王室と相談の上、後日通知するとのことだった。一応、支部長自身は『最低でも2億ベル以上になるのでは?』…って言っていたけどね。

 あと、ルナーク商会の護衛費用もある。往復で58日間だったのだが、一日3万ベルで計174万ベル。さらに、ヒュドラの素材の分け前が120万ベルで、総額294万ベルになったよ。

 余談だけど、アインホールド伯爵家からの護衛依頼のときは一人一日10万ベルで、さらに戦闘ボーナスもあったけど、民間業者の護衛依頼だったらこのくらいの単価が相場らしい。


 とりあえず3,294万ベルは確定で、(うまくいけば)さらに2億ベルの上乗せってことだな。三か月分の収入としては十分過ぎる。

 なんだか最近、金銭感覚がおかしくなってきた気がするよ。とは言っても、これら収入のほとんどが侍女長であるアンナさん経由で会計責任者であるマリーナさんに渡り、そこで管理してもらうことになるんだけどね。要するに俺個人のお金じゃなく、ツキオカ男爵家のお金ってことになるのだ。

 あ、でも端数(今回の場合は94万ベル)については、俺の小遣いとしてちょろまかそうかな。ギルドから報酬を受け取った時点で、すでに税金が源泉徴収されているからこそできるんだけどね。

 余談だけど、あとで所得税の申告をするのであれば、収入の全額を一度屋敷に入れないと脱税になる可能性がある。しかし、冒険者ギルドでは税引き後の額が手渡されるので、俺が勝手に中抜きしても大丈夫なのだよ。つまりは『へそくり』ってことだな。


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