206 帝都散策
ヒュドラの死体から魔石と有用な部位(牙や毒袋など)を回収し、イザベラお嬢様の【アイテムボックス】に格納した。
ただ、肉は食用には適さないらしく、残った死体はカミーラさんの【火魔法】によって焼却処分された。
てか、なかなかの強敵だったな。本当の実力を発揮しても良いのなら、俺の敵ではないけどね(【アイススピア】と【ウインドブラスト】の複合魔法の発動に成功しさえすれば、一撃で終わっていたはず…)。
ヒュドラの素材売却益の分配については、イザベラお嬢様が4割、『炎の蜂』が3割、俺が3割と決まった。マクベス氏とカミーラさんが15%ずつということになるので、『護衛三人は均等に2割ずつの分配にしましょう』と提案したのだが、その当人たち(マクベス氏とカミーラさん)から却下されてしまったよ(やはり良い人たちだ…)。
なお、Aランク魔獣の魔石は、ちょっと信じられない価格で取引されているらしい。冒険者ギルドでの買い取り額は最低でも300万ベルで、オークションにかけたりしたらそれ以上になるってさ。魔石のサイズによっても金額は変わるらしいけどね。
結局、魔石以外の素材の売却益がどれほどになるのか分からないけど、俺の取り分である3割というのは100万ベル以上にはなりそうだ。いや、戦闘時間はほんの数分だったのですが…。
まじで冒険者って儲かるよな。命懸けだけど…。
ちなみに、さんざんディスられた俺の虎の絵だけど、ツキオカ男爵家の紋章デザイン(まだ決めていないのだ)のベースにしても良いな。鷹や鷲などの猛禽類やドラゴンなどの強い魔獣を貴族家の紋章にすることはよくあることらしい。なので、うちが虎でも違和感はない。
俺以外の人間は、あの絵をなぜか漏れなく猫だと思っているみたいだけど…(虎だっつーの)。
・・・
特筆すべき戦闘はこれくらいで、あとは弱い魔獣しか出現せず、何の問題もなくこの国の帝都へと辿り着いたルナーク商会一行…。
俺の受注した護衛任務はこれで終了だ。マクベス氏とカミーラさんは復路の護衛依頼も受けているみたいだけど、俺はこの帝都に長期滞在する予定だからね。復路の護衛については、ここの冒険者ギルドの支部でも護衛依頼を出すらしい(『炎の蜂』以外にも、あと一つか二つの冒険者パーティーを復路の護衛として雇うつもりだそうだ)。
「サトル君、私たちは二週間ほどここにいるけど、本当に一緒に帰らないのかね?いったいここで何をするつもりなんだ?」
「えっと、おそらく2~3か月は滞在することになると思います。理由は言えませんが…」
「ふむ。何か別の依頼を受けているってことか…。まぁ、詮索するのは止しておこう」
さすがはイザベラお嬢様、不穏な気配を感じ取ったみたいだね。そう、割とヤバい仕事なのですよ。なにしろ、諜報活動だからね。
そうそう、ゴルドレスタ帝国の通貨はエーベルスタ王国とは異なっているんだけど、驚いたことに紙幣が使われていたよ。
どうやら紙幣の印刷機の人工遺物が存在していて、それによって帝国独自の紙幣を発行しているらしい。ただし、原版が一種類しか残っていなかったらしく、紙幣の種類は一種類だけだそうだ。細かいお金として銅貨や銀貨が使われているんだけど、そのあたりはエーベルスタ王国と同じ感じだね。
なお、帝国の通貨単位はゴルで、1ゴルが100ベル程度の為替レートらしい。ちなみに、紙幣は100ゴル紙幣のみだ(1万ベルくらいだな)。
あと、金本位制を採用しているので、兌換紙幣の通貨価値は担保されているってさ。なので、俺の持っているエーベルスタ王国の金貨(1万ベル)を帝国紙幣(100ゴル札)に両替してもらうのは簡単だったよ。
宿については、ルナーク商会一行と同じところにした。もちろん『炎の蜂』の二人も一緒だ。
一人部屋一泊の宿泊料金は100ゴル(約1万ベル)だったので、まぁまぁ高級宿だな。イザベラお嬢様たちが帰国のためにここを出立したあとは、もっと安い宿屋に移ったほうが良いかもしれない。
チェックインのあと、俺は一人で帝都の街並みをぶらつくことにした。ニホン人の噂話を聞くことができるかもしれないからね。
てか、さすがは一国の首都だよな。メインストリートはかなりの賑わいで、馬車や人通りも多い。様々な商店も建ち並んでいる。
俺の目当ては魔道具の素材店だ。中級魔法用の『魔道基板』の価格と在庫をチェックしておきたいと思ってね。さらに、もしかしたら上級魔法用の『魔道基板』があるかもしれない(もしも売っていたら、値段次第では購入したい)。
宿のコンシェルジュみたいな人に素材店の場所を聞いておいたので、そこへ向かう。もちろん、徒歩だ。
約一時間もかかったけど、宿から最も近い店がここらしい。
店の中へ入って一通り見て回った結果、品揃えに関してはエーベルスタ王国の王都にある店とそんなに変わらなかった。
ちなみに中級魔法用の『魔道基板』の価格は一個当たり8500ゴル(85万ベルくらい)だったので、王都の店よりも安いかな。『魔石ケース』や『魔道スイッチ』なんかも王都の店より微妙に安かった。
あ、ただ『ミスリルコード』だけはちょっと割高だった。これはミスリルという金属の需要がその供給量を上回っているかららしい。要するにミスリルは、この国では貴重なのだ。
だったらミスリルを王国で安く仕入れて帝国で高く売れば良いのでは?と思うかもしれないが、ミスリルには関税が高く設定されているため、その貿易には旨味が無いそうだ(たまに密輸業者が摘発されているらしいけどね)。
やはり、色々な国を訪問するのは、様々な発見があって面白いな。
仲良くなった店員さんにニホン人のことを聞いてみたい衝動にかられたけど、ぐっと我慢した。官憲へ通報されるおそれがあるからね。
能動的ではなく受動的に活動していかないと、下手したらスパイとして逮捕されるかもしれない。気長に情報収集していくのが一番なのだ(多分…)。




