204 魔道ライフル
生き残りの賊たちは7~8人か?
髭面の大男(おそらく頭目)が倒されたことで戦意を失ったのだろう。散り散りに逃げ出そうとしているね。
後々のことを考えると、できるだけ全員を捕縛するか、もしくは皆殺しにすべきだろう。だが、深追いは避けたいところでもある。
頭目や倒れている手下たちの容態をチェックして、まだ息がある者については一か所に集めた。その中心で【光魔法】の【エリアヒール】を発動した俺…。面倒なので、一気に全員を治癒することにしたのだ。
あ、もちろん事前に賊たちの両腕を縄で縛り上げているよ。
結局、死者は五名、捕縛した賊は八名(頭目を含む)、逃げた奴らが七名という結果になった。
生きている賊については、この国の警察に引き渡すと報奨金が貰えるらしい。なので、二台目の馬車の後部からロープで引きずっていくことにした。
ちなみに、賊たちは徒歩だ(馬車に乗せたくない)。ロープを首にかけているので、歩かない場合は首が締まるようになっているんだけどね(別に死んでも構わないって扱いだ)。
街道を進む馬車の中では、イザベラお嬢様の使っていた魔道武器を見せていただいた。
デザイン的にはまるでライフル銃そのものだ。洗練されていてめっちゃ格好良いな。
トリガーガードの少し前には弾倉(いや、魔石カートリッジ)を挿せるようになっている。
カートリッジにセットされている魔石はそこそこ大きなもので、魔力量が100程度はありそうだ(中級魔法の魔力消費量は20なので、5連発ってことだな)。
「うーん、良いですねぇ。俺も免許を取ろうかな?」
「くくく、良いだろう?私の愛銃だよ。まぁ、こいつも【アイテムボックス】があるおかげで、気軽に持ち運べるのだがね。ちなみに、この武器の名称は『魔道ライフル』だ」
確かに、本来だったらご令嬢が気軽に持ち歩けるようなものじゃないな。
てか、まじで羨ましい。月給を増やしてもらったことだし、俺も業者に発注しようかな。もちろん、不法所持にならないように免許を取るのは必須だけど…。
中級魔法の魔道具や魔道武器は、俺の【細工】スキルのスキルレベル的に(現時点では)作ることができない。なので、魔道武器の業者に作ってもらうしかないのだ。
「暇さえあれば、こいつの射撃訓練をしているよ。それにしても、もしも侯爵令嬢のままだったら、一生縁のない趣味だっただろうな。その意味でもサトル君には感謝しているんだよ」
「うーん、エーベルスタ王国へ帰国したら、俺も魔道武器の所持免許を取ることにしますよ。そのときはこれを作った業者を紹介してください」
「くく、良いぞ。お安い御用だ。いやぁ、優越感に浸れるなぁ。愉快愉快」
イザベラお嬢様がめっちゃ嬉しそうだ。俺も立場が逆なら、ドヤ顔を披露していたと思うよ。そのくらい、この『魔道ライフル』は良い物です。
・・・
その日のうちに次の宿場町へとたどり着いた俺たち。
賊たちを警察署へと連行していき、全員の身柄を引き渡した。なお、この大男(頭目)って割と有名な盗賊で、指名手配犯だった上、かけられていた賞金もかなりの高額だったよ。
翌日以降も旅は順調で、たまに襲ってくる魔獣もいたけど、マクベス氏やカミーラさんが難なく討伐していた(俺の出る幕が無かった)。
魔獣のランクはほとんどがC~Eだったので、Aランクのマクベス氏にかかれば瞬殺なんだよな。カミーラさんもBランクだし…。
ただ、一度だけかなりの強敵が出現した。
それはちょうど湿地帯を抜ける道を進んでいたときのことだった。
街の人から教えてもらった話によると、この辺りにはEランク程度の弱い魔獣しか出ないらしい。
ところが、どこから迷い込んできたのか分からないけど、極めて運の悪いことに俺たちの前にAランク魔獣が出現したのだ。不幸中の幸いと言うべきか、出現したのは一体だけだったけどね。
「停まれ!カミーラだけこちらへ来てくれ。あれを鑑定できるか?」
馬車を停めるように指示を出したマクベス氏は、カミーラさんを自分のいる先頭の馬車のところへ呼び寄せた。
すぐに移動したカミーラさんは、前方50メートルくらいのところにいた魔獣をすぐさま【鑑定】したようだ。ちなみに、俺もカミーラさんの横まで移動してから、同じように【鑑定】してみた。
鑑定結果は以下の通り。
・種別:ヒュドラ
・種族:龍族
・スキル:
・耐鑑定 38/100
・魔法抵抗(首) 27/100
・魔法抵抗(胴) 62/100
・毒息吹 89/200
・再生(首) 118/200
身体のサイズもあまり大きくない(全長5メートルくらい?)し、スキルレベルも大したことはないかな?
あ、龍族にしては…ってことだけど(てか、ヒュドラって蛇族だと思っていたよ)。
「まさかヒュドラに出くわすとは思わなかったわね。いくら槍の間合いが長くても、攻撃できる距離まで近づいたらあいつの吐く毒にやられるわよ」
「くそっ、やはりか。君の【火魔法】で倒せそうか?」
「いえ、初級魔法で胴体部分を貫くには威力が不足しているわね。首の部分だったらダメージを与えられるけど、9本ある首をほぼ同時に潰さないと、すぐに再生しちゃうのよね」
ヒュドラは蛇のような胴体に枝分かれした9本の首が付いている。そしてその首は再生するらしい。…って、まじかよ。
だったら胴体部分をイザベラお嬢様の『魔道ライフル』で攻撃してもらおう。中級魔法ですら72%の確率で抵抗されてしまうけど、それが最も確実だと思う。
ヒュドラが俺たちに気づいたのか、するすると近づいてきている。移動速度はそれほど速くないな。
魔法の有効射程距離である約30メートルまで近づいたとき、カミーラさんの【ファイアアロー】と俺の【ウインドカッター】がそれぞれ別々の頭部へと命中した。
9本の首のうち2本を潰したってことだ。ところが、【ファイアアロー】で燃やされた首を別の首が噛み千切った。そしてその切断面が徐々に盛り上がってきて首の再生が始まった。
俺が【ウインドカッター】で切り飛ばした首についても同様だ。
一瞬で再生するわけではないが、ある程度の時間さえかければ元に戻ってしまうみたいだな。
俺が【水魔法】の中級【アイススピア】でヒュドラの胴体部分を攻撃しても良いんだけど、できれば【水魔法】を使えることは秘密にしておきたい…。
さて、どうすっかな(俺があまり焦ってない理由は、いざとなれば複合魔法を発動すれば良いと思っているから…)。




