002 ステータス
森の中を50メートルくらい進んだだろうか。木々の隙間から物音の原因が確認できた。
そこには道幅3メートルくらいの街道があった。舗装されていない土が剥き出しの道だが、しっかりと踏み固められているなかなか立派な街道だ。
そこに一台の馬車が立ち往生していた。…って馬車ぁ?今の時代に馬車を使っているなんて、まさか王室とかですか?
進行方向に太い丸太が倒れていて、その馬車を通せんぼしている。
馬車の周囲には騎乗して剣と盾を構えた騎士(らしき人)が五人、さらにその騎士風の人に対峙しているのが山賊風の男たち多数(人数が多すぎて数えられない)。
山賊たちも長剣や短剣、斧などを構えていて、これが日本だとは信じられない。男たちの顔立ちは外国人みたいだけどな。
「多勢に無勢だろが…。なぁ悪いようにはしねぇから降伏しやがれ」
「騎士の誇りにかけて我が主を守り抜く。貴様らこそ退け」
え?日本語?外国人風の男たちが日本語をしゃべっているのを見ると、吹き替え版の外国映画を見てるみたいだ。
考えたくはないが、これってまさか『異世界』なのか?
ふと、異世界ものが大好きな友人から聞いたセリフを思い出した。
『異世界に行ったら、まずは【ステータス】と唱えるように』
半信半疑でとりあえず口に出してみた。
「ステータス」
すると目の前に半透明のボードが出現した。え?嘘だろ…。
そこには、
・名前:月岡 悟
・種族:人族
・状態:健康
・職業:大学生
・スキル:
・全言語理解 100/100
・鑑定 80/100
・耐鑑定 80/100
・アイテムボックス 100/100
・状態異常耐性 100/100
・魔法抵抗 80/110
・徒手格闘術 80/120
----------
・火魔法 50/120
・水魔法 60/120
・風魔法 50/120
・土魔法 50/120
・光魔法 80/100
・闇魔法 30/100
・空間魔法 30/100
と書かれていた。
HPとかMPとかSTRなどのRPGっぽい情報は無かった。
消せるのか?と思ったら、表示が消えた。
もう一度出そうかなと思ったら『ステータス』と声に出さなくても再表示された。さらに邪魔にならないように、視界の左上、左下、右上、右下など任意の場所にも置けるようだ。
うーん、脳波インタフェースか…。なかなかハイテクだな。
『風魔法』の項目を(思考で)選択してみると、さらにサブメニューが出てきた。
〇【ウインドカッター】
〇【ウインドブラスト】
試しに【ウインドカッター】を選択してみた。照準をつけるためのレティクル(丸と十字線の組み合わせ)みたいなやつが出てきたので、山賊の一人に狙いをつけてから発動を念じた。
目には見えない何かが発射された感触はあったが、俺自身何かが起こるとは思っていなかった。ところが、なんと狙いをつけていた山賊の背中が横一文字に切り裂かれ、鮮血が噴き出したのだ。
え?これって俺がやったの?