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197 ゴルドレスタ帝国 ~第三者視点~

 月岡悟が転移した国は、エーベルスタ王国である。転移の原因やその理由は不明…。

 そのエーベルスタ王国と隣接する国の一つに帝政国家であるゴルドレスタ帝国という大国が存在する。

 この国に『異世界人の召喚』という禁忌の呪法が存在することは、他国には一切知られていない。ただし、この呪法、大量の魔石と多くの魔術師や神官を用意せねばならず、その召喚スパンは数十年にも渡る。

 召喚に使用した魔石は全て失われ、儀式に参加した魔術師や神官の半数ほどがその命を落とすのだ。頻繁に召喚できないのも無理もない。


 そして、前回の召喚は58年前であり、そのときは地球(アース)のユーエスエーと呼ばれる国から三人の勇者(正確には、勇者・聖女・賢者)がやってきた。

 もちろん、彼ら全員がすでに鬼籍に入っているのだが、その子孫は存在している(もっとも、彼らの子孫に特別な能力は無い)。

 なお、召喚された人間には何らかのスキルが高いスキルレベルで最初から備わっている。それはこれまでの歴史を振り返ってみても例外はない。

 また、召喚の大義は『魔王を倒すため』である。しかし、実は魔王などという者はこの世界に存在していない。要するに、ゴルドレスタ帝国の『軍事力強化のため』、ただそれだけを目的とした召喚なのである。


 今回は地球(ちきゅう)という世界の中にあるニホンという国から三人の若者が召喚された。

 一人目は『勇者』、年齢が17歳の男性だ。黒髪に黒い瞳を持つ中肉中背の平凡な容姿ではあったが、おそらく最大の戦闘力を保持しているに違いない。

 二人目は『聖女』、同じく年齢は17歳で、当然女性である。どうやら『勇者』と同じ学校に通う幼馴染とのこと。金髪だが瞳の色は黒い。小柄でなかなか可愛らしい女性である。

 三人目は『賢者』、21歳の女性で、『きょういくじっしゅうせい』と自称していた。黒のロングヘアーに黒い瞳、スタイルはスレンダーではあるが、身長はあまり高くない。かなりの美人なのだが、鬱陶しいほどの長い髪と眼鏡によってその事実は誰にも気づかれてはいない。

 彼らの召喚は昨年の夏ごろに行われた。ちょうど月岡悟が異世界転移したのと同じタイミングなのだが、彼の転移にこの召喚が影響していたのかどうかは定かではない。


「俺らがこの世界に来て、そろそろ一年か。軍隊との訓練やダンジョンでの戦闘なんかで、かなり強くなったよな。てか、来た時からすでに俺TUEEEEだったけどよ」

「そうね。誰かさんだけはちっとも成長しないけどね。こんなんでホントに魔王なんて倒せるの?」

 職業『勇者』が職業『聖女』と行っている会話だ。なお、『聖女』の髪色は金髪だったはずだが、今ではすっかり黒くなっている。帝国には髪の染色技術が無いらしい。

 あと、ここにはもう一人『賢者』がいるのだが、顔を(うつむ)かせて『勇者』や『聖女』が放つ言葉の(やいば)に耐えているようだ。この世界にやってきたときから比べてさらに長く伸びた黒髪が顔の前に垂れ下がっている姿は、有名なホラー映画の登場人物を彷彿(ほうふつ)とさせる。


「アカリ、そう言ってやるなよ。クロダ先生だって頑張ってるはずだ。まぁ、努力が少し足らないのかもしれないけどさ」

「私たちの実力に比べたら全然だよね。このままだと、そろそろこの城を追い出されるんじゃないの?」

「実はそういう話も出ているらしい。あと二か月くらい()ったら俺らのお披露目をやるらしいんだけど、先生だけは恥ずかしくて表に出せないってさ。だって勇者パーティーの一員としては全く相応(ふさわ)しくないもんなぁ」

 職業『賢者』の女性はかつて教育実習生として『勇者』や『聖女』の通う高校に来ていた大学生だった。もしかしたら本来の『賢者』と間違ってこの世界に召喚されてきた『巻き込まれ召喚』だったのかもしれない。そう考えたくなるほど、『賢者』の戦闘力は壊滅的に低いままなのである。


 ここで彼らの能力を記しておこう。カッコ内は転移直後の時点から増加した値である。


・名前:タイキ・サガワ(佐川 大樹)

・種族:人族

・状態:健康

・職業:勇者

・スキル:

 ・言語翻訳      73/100(+3)

 ・鑑定        74/100(+4)

 ・耐鑑定       72/100(+2)

 ・魔法抵抗      73/100(+3)

 ・剣術        75/110(+5)

 ----------

 ・火魔法       72/110(+2)


 召喚直後の各スキルレベルが軒並み70はあり、【剣術】と【火魔法】の上限が110(エルダー)である。

 確かに、そこそこの戦闘力ではあるが、特筆すべきほどではない。いや、『俺TUEEEE』には程遠い。

 しかし、魔法防御力の高い魔術師で、なおかつ剣の腕もある人材が戦力として貴重であるのは言うまでもない。


 ・・・


・名前:アカリ・ホシノ(星野 朱里)

・種族:人族

・状態:健康

・職業:聖女

・スキル:

 ・言語翻訳      72/100(+2)

 ・鑑定        73/100(+3)

 ・耐鑑定       74/100(+4)

 ・魔法抵抗      71/110(+1)

 ----------

 ・光魔法       76/110(+6)


 こちらも最初からそれぞれ70のスキルレベルを持ち、【魔法抵抗】と【光魔法】が110(エルダー)まで育つ可能性がある。

 中級魔法まで発動可能な魔術師である彼女は、『勇者』と同様、かなりの戦力であると言えるだろう。

 パーティーの位置付けとしては『ヒーラー』となる。


 ・・・


・名前:サチ・クロダ(黒田 沙智)

・種族:人族

・状態:健康

・職業:賢者

・スキル:

 ・言語翻訳      90/100(+10)

 ・鑑定        87/100(+7)

 ・耐鑑定       93/100(+13)

 ・魔法抵抗      92/120(+12)

 ・隠蔽        86/100(+6)

 ----------

 ・火魔法        0/110

 ・水魔法        0/110

 ・風魔法        0/110

 ・土魔法        0/110


 問題は『賢者』である。

 召喚直後は各スキル(魔法以外)の初期値が80もあり、さすがは『賢者』様だと皆から称賛された。

 ところが、なぜか一切の【コーチング】を受け付けないのだ。魔法の素質があるにもかかわらず、スキルレベルがゼロのままなので魔法は全く使用できない。ゆえにスキルレベルも上げられない。

 さらには【剣術】や【徒手格闘術】の【コーチング】も受け付けないのだ。つまり、新たなスキルを獲得することもできない。

 できるのは敵の魔法攻撃を一身に引き受ける盾役(被害担当)くらいだが、【隠蔽】を持っているため、それすら務まらないと見られているのが現状だ。端的に言って『役立たず』である(現状では)。


 ちなみに【言語翻訳】とは【全言語理解】の劣化版ともいえるスキルであり、知能を持つ魔獣と会話できるようなものではない。

 彼らが同じ異世界転移者である月岡悟(サトル・ツキオカ)とどう関わってくるのか…。それはこのあとの話である。


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