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193/373

193 VS近衛騎士団③

 あまり広いとはいえない庭を埋め尽くすように騎士たちが方陣を組んでいる。ちなみに騎乗していたのは騎士団長だけで、団員たちは元々徒歩だった。

 最前列の騎士たちが大きな盾を前面に構え、二列目以降の騎士たちは盾を頭上に(かか)げているね。弓矢や魔法攻撃への対処だろう。

 人数は、ざっと見ただけでも50人は超えているようだ。

 長方形の塊となった集団が整然と前進してきている。オーレリーちゃんがせっかくきれいに整備した花壇を躊躇(ちゅうちょ)なく踏み荒らしているよ。許せん。


 すぐに敵の最前列が魔法の射程距離内に近づいた。

 アンナさんが【火魔法】、ナナが【水魔法】、俺が【風魔法】を発動した。初級の攻撃魔法だ。

 しかし、さすがは近衛騎士団と言うべきか、一人も脱落することなく前進が()むこともない。初級魔法では威力が不足しているのか、全ての攻撃は彼らの盾で防がれてしまった。


 ここで左右からほぼ同時にユーリさんとサリーが仕掛けた。しかし、すぐさま方陣の側面が90度一斉回頭して左右を向いた。見事な運動に見惚(みと)れるよ。敵ながら天晴(あっぱれ)だ。

 遊撃の二人は敵の不意を突くことで陣形を崩すつもりだったのだが、どうにも攻めあぐねているようだ。いくらこちら側のスキルレベルが高くても、数的優位は敵にあるからね。いわゆる多勢に無勢ってやつだな。


 門を破壊した攻城兵器(先の(とが)った太い丸太を数人がかりで運搬している)が方陣の中心付近に見える。あれをぶつけられたら、こちらの土壁は一瞬で崩壊するだろう。

 仕方ない…。想定よりも早いけど、メフィストフェレス氏に出動してもらうか…。

『メフィストフェレスさん、敵の陣形の中心に【ロックブラスト】を投射していただけますか?』

『ふっ、お安い御用だ』

 メフィストフェレス氏が自身の翼を羽ばたかせて、ふわりと浮き上がった。

 敵陣形に(わず)かな乱れが生じた。さすがにAランク魔獣のアークデーモンが突然出現したら、驚くのも無理はない。


 巨大な岩が生み出され、それが敵陣の中心(ちょうど攻城兵器があるところ)に着弾した。

 丸太は中心から真っ二つに折れ、周りの騎士たちも跳ね飛ばされて倒れ伏した。

 さらにもう一発、【ロックブラスト】が発動され、盾を構えて前進していた前衛の騎士たちを()し潰した。致命傷を負ったかもしれないけど、手加減できないんだから仕方ない。


 この機を逃さず、ユーリさんとサリーが左右で乱戦状態に突入している。もちろん、俺たち魔法部隊も攻撃を継続し、一人また一人と倒していった。盾さえ正面に向いてなければ、鎧の関節部分や剥き出しの顔面を攻撃できるからね。

 【魔法抵抗】のスキルレベルはそれほど高くないようで、抵抗(レジスト)されることはほとんどない。

 一方的な蹂躙劇に勝利を確信した俺たち…。

 しかし、ことはそううまくは運ばなかった。


 ・・・


 突然、敵陣後方から火矢が射かけられた。

 十数本の火矢は俺たちの頭上を越えて屋敷の壁に次々と突き刺さった。1階の窓の部分は土壁で覆っているけど、そのほかの部分の防御力は無きに等しい。

 漆喰の壁に刺さった火矢はすぐに燃え上がることはないだろうが、ほっておくと火事になるかもしれない。あと、火矢が2階の窓から部屋の中へと入った場合、すぐにその部屋を燃え上がらせることになるだろう。

 とにかく、対処が必要だ。

「アンナさんとナナは、【水魔法】で建物の消火作業に尽力してください。ここは俺とメフィストフェレス氏で食い止めます」

「了解です」「分かったよ、お兄ちゃん」


 即座にアンナさんがナナに指示を出していた。

「ナナさん、あなたは2階に上がって各部屋の対処を、私はここから外壁に刺さった火矢の対処をします」

「了解!」

 ナナはすぐに玄関から屋敷の中へと消えていった。


『メフィストフェレスさん、敵陣後方の弓部隊を無力化できますか?』

『任せておけ』

 俺たちの頭上に浮かんでいたメフィストフェレス氏が屋敷の門の近くに移動し、敵の背後から攻撃を始めた。

 これで新たな火矢の襲来は無くなった。

 あれ?近衛騎士団長の姿が見えないな。

 あの巨体を覆う金色に光り輝く鎧はかなり目立つはずなのに…。


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