187 奇縁
「この屋敷にいる女性陣が美人ばかりなのはたまたまだよ。俺は一切手を出してないからな」
『好色』などという風評被害は払拭しておかないと…。俺の名誉にかかわる。
「ええ、残念ながら本当です。もしもまだ信じられないようなら、他にも悪人を成敗したエピソードがありますよ。お話ししましょうか?」
「いや、あんたのような美人さんが言うんだ。間違いねぇだろうぜ」
アンナさんの発言は、すんなりと信じるんだね。美人に弱いのは男の性か…。あれ?『残念ながら』ってどういう意味だ?
「あのぉ~、ちょっと良いですか?」
恐る恐るといった感じで右手を軽く上げながら発言したのはオーレリーちゃんだった。
「そちらの女性の方に見覚えがあるのですが…」
年配の男性が目を見張った。
「あ、あなた様は聖女様…、聖女様ではないですか。娘の命をお救いいただきましたこと、心より感謝申し上げます。いや、待てよ。黒髪のあんた、あんたは俺たちスラムの人間を地獄の苦しみから救ってくれたお方じゃねぇか!ちっ、恩人の顔を忘れていたとはな」
あれ?もしかして?
「お兄ちゃん、スラム街で発生した『第3号病毒事件』の被害者みたいだね」
ナナはいつも俺の考えていることを先走って口に出すんだよな。似た者兄妹ってことか。
「お、お父さん、お兄ちゃん。オーレリーさんだけじゃなくて、アンナさんやナナさん、サーサリアムさんもいるよ。衰弱して死ぬところだった私の命の恩人だよ。あぁ、なんということでしょう。恩を仇で返すとはこのことだよ」
「すまねぇ。恩人の住む屋敷に泥棒に入るとは…。恩に報いることと今回のお詫びで、俺たちにできることなら何でも協力させてもらうぜ」
「ああ、妹の命を救ってくれた恩人だ。これからはあんた、いや、あなた様の配下になるぜ」
うーん、そう言われても困るな。泥棒の配下なんて要らないよ。
一応、【鑑定】で判明した彼らのステータスを記しておこうか。
まずは親父さん。
・名前:ルイ
・種族:人族
・状態:健康
・職業:泥棒
・スキル:
・鑑定 54/100
・耐鑑定 41/100
・棍術 42/100
・徒手格闘術 23/100
・投擲 37/100
・窃盗 78/100
・隠蔽 65/100
サリーの【索敵】スキルが魔装具込みで、彼の【隠蔽】のスキルレベルを上回っていたから良かったよ。
てか、【窃盗】のスキルレベル高っ!
次に若い男性。
・名前:トミー
・種族:人族
・状態:健康
・職業:泥棒
・スキル:
・鑑定 29/100
・耐鑑定 25/100
・徒手格闘術 38/100
・窃盗 32/100
・隠蔽 39/100
【コーチング】無しでこのスキルレベルだとしたら、なかなか大したものだ。いや、本人がそう言ってたんだけどね。
最後に若い女性。
・名前:アイ
・種族:人族
・状態:健康
・職業:解錠師
・スキル:
・鑑定 22/100
・耐鑑定 18/100
・徒手格闘術 15/100
・解錠 51/100
・隠蔽 22/100
おや?職業が泥棒ではなく、解錠師になってるね。【解錠】のスキルレベルだけが、かなり高いな。
ちなみに、【解錠】については幼い頃に【コーチング】してもらってから、そのスキルレベルをこつこつ地道に上げていったらしい。努力家だな。
ノートに書いた彼らのステータスを横から覗き込んだナナが言った。
「ねぇ、お兄ちゃん。ルパン一家じゃなくて、キャッツだったみたいだね。名前が来生三姉妹じゃん」
いや、言ってる意味が分からんのだが…。キャッツって何だ?




