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182 被害者宅を訪問

 今日は屋敷の応接室でユーリさんとの話し合いだ。現在までに判明している内容を報告すること、及びユーリさんから新たな情報を得られないかと考えたのだ。

「なるほどねぇ。確かにすでに騎士団長を解任されているってのに、父上が殺される動機は考えられないよな。兄上が何か不正の証拠を(つか)んだせいで口封じされたと考えるのが理に(かな)っているよ」

 なお、この場には『暁の銀翼』メンバー全員が揃っている上、マリーナさんとサーシャちゃんにも参加してもらっている(仲間だからね)。つまり、この屋敷の住人全員が揃っているわけだ。


 ナナがユーリさんに質問した。

「ねぇ、ユーリさん。お兄さんの遺品の中に書類みたいなものは無かったの?」

「いや、よく確認してないんだよ。遺品は全部、義姉(あね)のところにあるからね。それにもしも不正の証拠があったとしても、すでに犯人に回収されてしまったんじゃないかな?」

 そう、実家の父親に相談する際に、そういう書類なんかは持参していったのだと思う。だったら当然、犯人に奪われたと考えるべきだろう。

 いや、待てよ。もしもユーリさんの兄君が慎重な性格だったら、そんなヤバい(ぶつ)を持ち歩くだろうか?

 俺だったらスマホで写真を撮っておいて、元々の証拠品は隠しておくけどな。まぁ、この世界にはコピー機も無いし、頑張って手書きで書き写すしかないんだけど…。

 ふむ、もしかしたら『写し』のほうを奪われただけで、『原本』は残っていたりして…。


「ユーリさん、お兄さんはどのような性格の方だったのですか?不正の証拠品があったとして、それを簡単に持ち歩くようなタイプでしたか?」

「うーん、兄上は騎士というよりも官僚タイプで、慎重な性格だったよ。【剣術】スキルよりも【会計】スキルのレベルが高かったしな。だから第一線の騎士から事務職に回されたとき、内心では喜んでいたのかもしれない。(はた)から見ると閑職に回されたように映ったみたいだけどね。で、もしかしたらそこで不正なお金の流れを(つか)んだのかも…。ま、あくまでも想像だがね」

「だとしたら、犯人に奪われたのは『写し』で、『原本』は奥さんのところに残されている可能性もありますね」

 俺のこの言葉にナナが反応した。

「お兄ちゃん、それが本当なら奥さんと息子さんが危ないかもよ。犯人が『写し』であることに気づいたとしたら…」

「いやいや、ここまで全て仮定の話だからな。事件からかなりの日数が経過しているし、もう大丈夫じゃないか?」

 だが、俺の楽観的な意見はユーリさんによって否定された。

「少しでも可能性がある以上、真犯人が捕まるまで義姉(あね)(おい)が危険であることには変わりない。すまんが様子を見に行っても良いだろうか?」

 やはり身内としては心配だろうな。


 俺はユーリさんに提案した。

「では、ユーリさんとナナと俺の三人で行ってみましょう。警吏本部が再捜査に動き出したせいで、真犯人側が(あせ)って関係者の殺害を(くわだ)てるおそれもありますし…」

 もしも奥さんや幼い息子さん(5歳らしい)に危険が迫っていたら、それは俺たちのせいになるかもしれない(余計な行動で犯人を刺激したという意味で…)。


 ・・・


 目的の家は王都の貴族街の中ではなく、平民街に位置しており、閑静な住宅街といった雰囲気の場所だった。

 建物自体も豪邸ではないけれど、そこそこの大きさの一軒家だったよ。なんと借家ではなく持ち家らしい。

 奥さんは寡婦(かふ)であり子供も小さいため、外に働きに出ることができないとのこと。なので、常に家にいるらしい。

 ちなみに、生活費についてはユーリさんの援助によって(まかな)っているとのことだ。


 ユーリさんがドアをノックすると、すぐに返事があった。

 解錠される音のあとにドアが開くと、そこには小さな男の子が立っていた。利発そうな見た目で、将来はイケメンになりそうな子だった。

「ユーリおばちゃん、こんにちは。あそぼ…」

 おそらく『遊ぼう』という言葉の途中でフリーズしてしまったのは、ユーリさんの後ろにナナと俺が立っていたからだろう。

「ター坊、ママはいるかい?」

「う、うん。ちょっと待って。ママ~、ユーリおばちゃんが来たよ~」

 男の子が母親を呼びながら家の奥へと戻っていった。ちなみに、男の子の名前はタッカー君というらしい。


 すぐに奥からエプロンをはずしながら一人の女性が現れた。ユーリさんの義姉(あね)ということだけど、ユーリさんよりも年下に見える。美人というより可愛らしいといった見た目の、おっとりほんわかとした感じの女性だった。

「ユーリさん、いらっしゃい。あら、そちらの方々は?」

 俺は初対面の挨拶をした。

「はじめまして。俺はサトルと申します。こっちは妹のナナ。実はグレイフィールド事件の捜査に協力している者です。辛い記憶を思い出していただくことについては大変申し訳ないのですが、事件解決のためにご助力願えないかとお伺いさせていただきました」

「これはご丁寧に、ありがとうございます。義父と夫を殺害した犯人を捕まえるためなら、どのような協力でも致します。どうぞ中へお入りください」

 一瞬で(りん)とした雰囲気に変わったのは、さすがに騎士の奥方だっただけのことはある。

 実はここへ来るまでは、奥さんも容疑者の一人では?と疑っていたんだけど、彼女に会ってすぐにその考えは消えたよ。あくまでも第一印象で…だけど。


 そろそろ更新を再開します。毎日投稿できるかどうかは分かりませんが…。


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