表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

176/373

176 警吏本部②

 まずは単刀直入に聞いてみよう。

「グレイフィールド家で発生した死亡事件について、お聞きしたいのですが…」

「ああ、あれは捜査中の事件ですから、部外者への情報開示はできかねますな」

 そりゃそうだ。というか、簡単に教えてもらえたら、逆に驚きだよ。


「あぁ、まぁそうでしょうね。ところで、被害者の娘であり、妹でもあるユーリ女史はご存知ですか?」

「ええ、事情聴取を行いましたので、もちろん知っております」

「彼女とはちょっとした知り合いなのです。それで、父君と兄君が毒殺されたことを彼女から聞いたため、捜査状況が気になってここへ来たというわけです」

「うーむ。まぁ、事情はどうあれ、捜査状況を教えられないことに変わりはありませんな」

 さて、どうしようか?

 ここで伝家の宝刀(ミュラー公爵の書状)を抜くべきか?


 ここでナナが発言した。

「実は、ユーリ女史とは別に、この事件の調査をとある貴族家から依頼されたのです。ある男爵家からなんですけどね。どうも近衛騎士団に所属する騎士に不穏な動きがあって、その関連みたいですよ」

 ん?その依頼元って、うち(ツキオカ男爵家)のことか?

 ただ、これを聞いた警部さんは、ちょっと悩んだあと、こう言った。

「アインホールド伯爵からも信頼されているツキオカ殿のことです。他の貴族家からの依頼を直接受けても不思議ではありませんな。うーん、分かりました。ここは私の責任で、お教えしましょう。捜査資料を持ってきますので、少々お待ちください」

 いったん応接室を出た警部さんが、ファイルを数冊持って再び入室してきたのはそれから数分後のことだった。

 この警部さん、貴族が絡む案件ってことで協力的になったのかな?もしそうなら、これもまた王制国家ならではってことなのかもしれない。

 というより、貴族家からの依頼の証となる書状等をまだ提示していないのだが…。口頭だけの説明なのに、俺たちをすぐに信用するのって大丈夫なのだろうか?


「君たちは命の恩人ですからな。何らかの建前さえあれば、協力するのは(やぶさ)かではないのですよ」

 なるほど、そういうことですか。ありがたいことです。

 まぁ、あのときは俺たち自身の命もかかってたからね。(いま)だに俺の【アイテムボックス】の中には爆発1秒前の人工遺物(アーティファクト)が眠っているわけで…。


 ・・・


「それで、グレイフィールド家の事件について現時点で判明している内容ですが…」

 ここから捜査資料を参照しながら警部さんの説明が始まった。

 それをまとめると以下の通り。


・事件の発生は約一か月半前。

・被害者は元・近衛騎士団長であるランドン・グレイフィールド氏及びその息子のアレン・グレイフィールド氏の二人。

・元・騎士爵ではあるが、事件発生当時は平民であったため、捜査は警吏本部の管轄になった(騎士爵のままだったら、第一騎士団か第二騎士団が捜査権を得ていた)。

・ランドン氏の妻は既に他界しており、娘のユーリ女史(元・近衛騎士団員)と二人暮らしである。

・息子のアレン氏は別に世帯を構えているため、アレン氏の妻子は現場にはいなかった。

・何らかの用件でアレン氏は父親の家を訪れていたのだろう。応接室でその二人が死亡しているのを帰宅したユーリ女史が発見した。

・応接室には三人分の茶器があったため、第三の人物の関与が疑われている。

・ユーリ女史は第一発見者ではあったものの、殺害動機が見当たらないため、(現時点では)容疑者から外されている。

・死亡原因は毒物の摂取であるとの検視官の判断である。また、茶器の中から神経系の毒物の痕跡が発見された。

・動機としては怨恨の線で考えている。騎士団の仕事に関連して恨みを買っていたのではないかと推測されている。


「それで、容疑者は浮かび上がっているのですか?」

「近所の人間から目撃証言を集めたのですが、フードを深くかぶって顔の分からない大柄な人物が、事件の直前にグレイフィールド家へと入っていったのが分かっております。こいつが犯人であることはほぼ間違いないですな」

「その人物の特定は?」

 まぁ、できていればすでに事件は解決しているだろうけどね。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ