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175 警吏本部①

 その日の夕食の席で、サリーから屋敷にいる全員に報告があった。冒険者ギルド支部長との面談結果だ。

「女性だけの冒険者パーティーで、かつ信用できて、さらに戦闘力も高いところって、なかなか無いみたい。ちょっと条件が厳し過ぎるかもしれないね。それでも今日はある一つのパーティーと面接してきたんだけど、あまり良い印象は受けなかったよ」

 サリーのセリフにナナとオーレリーちゃんも続いた。

「うん、私もあれはちょっとどうかと思ったよ。メンバー全員が巨乳で、それを強調するような煽情的な服だったし、貴族家の当主を色仕掛けで落とそうという意図が見え見えだったんだよね」

「サトル様がいらっしゃらなくて良かったです。あれは目に毒です」

 おぉ、それはちょっと見てみたかったかも…。いや、俺だって健全な男だからね。


「お兄ちゃん、内心で『見たかった』って思ったでしょ?幻滅だよ」

「ご、誤解だ。そんなこと思ってないぞ。お前はテレパスか?」

「語るに落ちるとは、まさにこのことだね。お兄ちゃんのエッチ…」

 黙秘権を行使しよう。何を言っても火に油を(そそ)ぐ結果になりそうだ。

 ちなみに、読心能力者(テレパス)という言葉の意味が分かったのはナナだけだったようだ。…って、そりゃそうか。


「サトルとナナの会話がときどき分からなくなるのはいつも通りとして、とにかく屋敷の警備に関してはしばらくの間、私とユーリさんの二人で回していくしかないね」

 サリーが助け舟を出してくれた。ありがとう。

「ああ、私としては全く問題ないぜ。サリーには『暁の銀翼』としての冒険者活動もあるだろうし、ここの戦力が手薄になるときは私に任せな」

 ユーリさんが頼もしいです。なにしろ大言壮語するだけの実力が備わっているからね。

 一応、俺も言っておこう。

「夜間の警備には俺も参加するから、シフトに組み込んでおいて欲しい。三人で回せば、そんなに負担でもないだろう?」

「うん、分かったよ。やっぱサトルは良い上司だよね」

 いや、この屋敷にいる唯一の男性として、当然の申し出だと思うのだが…。

 というか、侵入者感知システムを魔道具として何とか作れないものか、研究を進めないとな~。それさえあれば、特に冒険者を雇う必要も無くなるだろうし…。


 ・・・


 翌日、ナナと俺は二人で警吏(けいり)本部を訪れた。

 いきなり、長官であるグレンナルド伯爵に面談を申し込むのも唐突過ぎるので、とりあえず面識のある警部さんに会いに行ったのだ。

 駐車場にいた馬丁(ばてい)に馬たちと幌馬車を預けたあと、建物の中へと入っていった俺たち…。かなり大きな5階建ての建物だった。

 あ、当然だけど、幌馬車にツキオカ男爵家の紋章は入っていないよ。てか、まだ紋章のデザインすら決めていないのだ(それも宿題になっているんだよな)。


 1階のロビーは広々とした大きなホールになっていて、両側面にずらりと様々な窓口が並んでいた。各種申請や届け出なんかを行っている(っぽい)王都民を多く見かけたよ。

 柱には案内板が貼り付けられていて、それによると『刑事部』『公安部』『交通部』『生活安全部』『組織犯罪対策部』などがあるようだ。

 知り合いの警部さんはおそらく『刑事部』だと思うので、案内板に従って2階の『刑事部』へと続く階段を(のぼ)っていった。


「おい、一般人がここで何をしてる?」

 野太い声で俺たちに声をかけてきたのは、2メートル近い身長で横幅もある巨体の偉丈夫だった。しかも頭がスキンヘッドだよ。(こわ)っ!

「こらっ、王都民を威圧してんじゃねぇよ。お前は立ってるだけで怖いんだってことを少しは自覚しやがれ」

「いや、きょろきょろしてたから困ってるんじゃないかと思って、声をかけただけなんですが…」

 どうやらこの大男、見た目と違って良い人っぽい。


 あれ?警部さん?

 大男を注意したのは、見覚えのある警部さんだったよ。

 向こうも俺に気づいたようだ。てか、いきなり遭遇できるとは運が良い。

「おや?ツキオカ殿ではないですか。お久しぶりです。あ、こいつは『組織犯罪対策部(そたい)』の奴でしてな。気の良い奴なんですが、なにしろ強面(こわもて)なもので失礼しました」

「いえいえ、ちょっと驚いただけです。声をかけていただき、ありがとうございました」

 大男にもお礼を言っておこう。

 というか、『そたい』って言っても普通の人は分からないと思いますよ、警部さん。俺は日本の刑事ドラマを見て、知ってたけど…。

 要するに、カルローネ一家(いっか)のような反社会的勢力の犯罪を取り締まる部署ってことだね。


「それで今日はどうされました?私に何か御用でも?」

「はい。できれば別室で内密の話をしたいのですが…」

「ふむ、何か事情がおありのようですな。良いでしょう。では、こちらへ」

 取調室みたいなところへ行くのかと思いきや、連れられて行ったのは普通に応接室っぽい部屋だった。

 まずはユーリさんの父君と兄君が毒殺された(と思われる)事件について、その詳細を聞いてみることにした俺たち…。警吏本部での事件の取り扱いがどうなっているのかを最初に確認しておかないとね。


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