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174 ミュラー公爵家③

 あとは刑罰関連だな。

 誘拐事件自体を警吏本部へ通報することができないため、犯罪者への裁きはミュラー公爵家独自で下すことになる。これは、私刑(リンチ)ってことになるんだけど、公爵家ともなるとそういうこともできるらしい。

 いや、自分の領地だったら全く問題無いんだよ。でも、ここは王都だからね。

 まぁ、法治国家とはいえ、王制国家でもあるからなぁ(公爵家って王族だし…)。『君臨すれども統治せず』を掲げる立憲君主制国家であれば、そんなことはできないはずなんだけど…。


 で、カルローネ一家(いっか)の構成員については、全員をミュラー公爵領にある鉱山へ犯罪奴隷として送り込むとのこと。ただし、カルローネ氏自身は死刑に処すらしい。

 あと、カルローネ氏の屋敷についてはミュラー公爵家が接収し、出入りの商人を経由して後日不動産屋に売却する予定だそうだ。

 相手が反社とはいえ、結構やりたい放題だな。


 ただ、処遇に悩むのがリュート・ハウスホーフェン侯爵令息だ。今回の誘拐事件の主犯であり、ミュラー公爵も彼に対しては激怒しているからね。さすがにお(とが)め無しとはいかない。

 結局、それについてはハウスホーフェン侯爵家との話し合いで決まるらしい。おそらく勘当されるのではないかと、ミュラー公爵自身は推測しているようだ。

 そうなった場合、単なる平民の犯罪者として裁かれることになるってさ。多分、鉱山送りになるんじゃないかな?まぁ、自業自得だけどね。


 最後に問題なのが、ユーリさんの家族を毒殺した犯人を捜査する手段だな。今回の誘拐事件とは無関係だけど、乗り掛かった舟だからね。俺にできることがあれば、やってあげたい。

 あ、そういえば、警吏本部にはライオネル商会の事件のときに出会って知り合いになった警部さんがいたな。

 あの人の力を借りることができるかもしれない。うん、これまで(つちか)ったコネは最大限に活用しないとね。


 ミュラー公爵も俺の話を聞いて、こう言ってくれた。

「うーむ、近衛騎士団には知己(ちき)がいないのだよ。力になれなくてすまないね。ああ、しかし警吏本部の長官は我が公爵家の寄子(よりこ)だな。グレンナルド伯爵という男だ。彼への紹介状を書いてあげよう。きっと君の力になってくれるはずだ」

「ありがとうございます。あ、そう言えば、騎士団長のグレイシアス様というお方をご存知ではありませんか?アインホールド伯爵のお従弟(いとこ)様らしいのですが…」

 てか、俺も名前しか知らない。アインホールド伯爵領の領都リブラを出立する際、ちらっとお名前を聞いただけだ(つまり、面識は無い)。


「王城には近衛騎士団、第一騎士団、第二騎士団という三つの騎士団があるのだが、たしか第二騎士団の団長がそのような名であった記憶がある。だが、第一と第二は仲が良いが、近衛だけは他の騎士団とは不仲だそうだぞ。あくまでも噂だがね」

 うーん、だとすると、グレイシアス様のお力を借りることができたとしても、あまり意味が無いのかもしれない。知りたいのは近衛騎士団の内情だからね。


 このあと、すぐに警吏本部長官であるグレンナルド伯爵への紹介状を書いてくれたミュラー公爵だった。仕事が早い。

「ツキオカ男爵を私の名代(みょうだい)と思い、最大限の便宜を図るようにと(したた)めておいた。彼は公明正大かつ高潔な人物だ。君とは話が合うと思うよ」

「感謝申し上げます。もしも不正行為が存在した場合、必ず(ただ)すことをここに誓い(たてまつ)ります」

 うん、政治的な忖度(そんたく)なんて俺には関係ないもんね。自由にやらせてもらおう。


 ・・・


 このあと、昼食を共にというミュラー公爵のお申し出をありがたく受けた俺とアンナさんは、昼食にしては豪華な食事を堪能させていただいた。

 なお、アンナさんもこの場では(侍女ではなく、男爵令嬢という立場での)お客様なので、ミュラー公爵やテレサお嬢様と一緒のテーブルについたのは言うまでもない。

 帰路についても公爵家の豪華な馬車でうちの屋敷まで送り届けてもらったよ。


 俺たちが帰宅したタイミングで、うちの幌馬車もまた帰ってきたようだ。冒険者ギルドへ行くと言ってたから、それだろう。

 オーレリーちゃんが御者を務めていて、荷台からはサリーとナナが降りてきた。ちなみに、サリーが自由に動けるようになったのは、最大最強の防衛戦力としてユーリさんが屋敷に常駐してくれているからだ。


「お兄ちゃん、お昼ご飯は?」

「俺もアンナさんも公爵家でご馳走になってきたぞ」

「分かった~。ちぇっ、良いもの食べてきたんだろうな」

 うーん、確かに金のかかってそうな料理だったけど、俺としてはナナの作るもののほうが好きなんだよな。照れくさいから言わないけど…。


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