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160 初のお客様

 屋敷への訪問を打診する手紙が届いたのは、引っ越ししてしばらく()ってからのことだった。

 ちなみに、まだ屋敷警備の人材(冒険者)の確保はできていない。現状では、俺とサリーが一晩交代で深夜の時間帯の警備を担当しているという状態だ。

 昼間の警備は必要ないけど、夜間は誰かが見張ってないとマズイのだ。あぁ、警備システム(侵入者警報装置)が欲しい。


 届いた手紙の送り主はアインホールド伯爵様で、エイミーお嬢様と二人で訪問したいとのことだった。

 どうやら領地(アインホールド伯爵領)へ戻ることになったらしい。

 本当は『暁の銀翼』で領都リブラまでの護衛を務めたいところだけど、屋敷を留守にできないので無理なんだよな。まぁ、騎士のアキさんがいるから心配はないと思うけど…。


 そして、伯爵様とエイミーお嬢様の訪問当日、俺たちは全員総出で歓迎のための準備に忙殺されていた。

 俺たちの恩人であり、寄親(よりおや)(派閥の親分)でもあるお方だからね。

 馬車が屋敷の玄関前に横付けされて、伯爵様のエスコートでエイミーお嬢様が馬車を降りてきた。

「いらっしゃいませ。ようこそお()でくださいました。どうぞこちらへ」

「ツキオカ男爵、なかなか良い屋敷だね。お邪魔するよ」

「ツキオカ様、私たちの訪問をご快諾いただきまして誠にありがとうございます。次にお会いできるのは来年の春になりますので、今日はご挨拶できて良かったです」

 二人を応接室へと案内し、ひとまず(くつろ)いでもらった。アンナさんとサーシャちゃんがお茶の用意をしてくれたよ。


「僕とエイミーは領都リブラへ戻るけど、もしも何かあったら陛下を頼ってくれたまえ。話は通しているから」

 え?それはさすがに(おそ)れ多いのでは?

 まぁ、何かあるとも思えないけど…(フラグじゃないよ)。


「ねぇ、アンナ。進展はあった?」

「いえ、特には…」

「えええ?もっとグイグイいかないとダメなんじゃない?」

「お嬢様…」

「ご、ごめんなさい。少し威圧を緩めてちょうだい」

 相変わらずエイミーお嬢様とアンナさんは仲良しさんだな。会話の意味は不明だが…。


「ナナ君も男爵家のご令嬢という立場に少しは慣れたかい?」

「はい、いいえ。根っからの平民ですので、なかなか…」

「まぁ、おいおい慣れていくよ。立場が人を作るというからね」

 うーん、そんなものだろうか。未来のナナを想像しても、今と変わらない姿しか思い浮かばないけどな。


「サリーさん、冒険者ギルド『デルト支部』のマウントバッテン支部長に何か伝言はあるかしら?」

 エイミーお嬢様がサリーに問いかけた。

「えっと、でしたら『暁の銀翼』の近況をお伝えいただければありがたいです。サトルが男爵になったことも」

「ええ、分かったわ。ふふふ、きっと驚くでしょうね」

 お嬢様が楽しそうだよ。バッツさんは間違いなく驚くだろうしな。


「なぁ、ツキオカ男爵。オーレリー君のことだが、現時点ではその存在が教会には知られていない。だが、知られてしまった場合、教会へ入信させようと躍起(やっき)になってくると思う。聖女扱いになるかもしれん。どうか彼女を守ってやって欲しい」

「はい、もちろんです。この身に代えても守り抜きます」

 オーレリーちゃんは【光魔法】の上限が120という逸材だからね。教会に知られないようにするのはもちろん、知られた場合は拉致や誘拐には気を付けないと…。いや、教会の神官がそんな犯罪まがいのことをするわけないけどね。


「あ、そうそう、ナナさん。例の魔道具だけど、優秀な魔道具師たちの尽力により、少しは光明が見えてきたわよ。【細工】のスキルレベルが100(マスター)でも【ピュリフィケーション】を魔道具化できそうなのよね」

 え?まじで?

 本来は【細工】が110(エルダー)でないと、上級魔法の魔法陣を『魔道基板』に刻み付けることはできないはずなんだよな。

 何かしらのブレークスルーがあったのかな?

「あ、マヨネーズの商品化の件ですね。もう兄に頼るしかないと思っていました」

 うん、数年後にはなるだろうけど、俺の【光魔法】が90以上に、【細工】が110になれば【ピュリフィケーション】の魔道具を作れると思うよ。


 あ、そうだ。俺からもちょっと口を出しておこう。

「エイミーお嬢様、もしもマヨネーズを販売されるのなら、ぜひルナーク商会を販路の一つにご考慮いただきたく、よろしくお願い申し上げます。イザベラお嬢様はマヨネーズのことをご存知なので、商品に関する説明が楽ですから…」

「え?そうなの?どうもイザベラ様とツキオカ兄妹(きょうだい)の関係性が謎なのよね。まだアンナのライバルになる年齢では無いと思うのだけれど…」

 転生者ですからね。てか、ライバルって何だ?


 こうして応接室での談笑後、LDKのほうへ移動して、ナナの手料理を二人に振る舞うことになった。なお、料理については、マリーナさんとサーシャちゃん姉妹も手伝っているよ。

 からあげやカツレツ、ハンバーグ等の肉料理が中心で、伯爵様とエイミーお嬢様には喜んでいただけたようだ。レシピを欲しがっていたし…。

 ちなみに、材料については牛や豚、あと鶏ではなく、魔獣素材だけどね。というか、実は魔獣のほうが動物よりも美味いんだよな、この世界。


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