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150 叙爵の受諾条件

「話は変わるが、あの『魔道ケトル』を先ほど献上してきたよ。陛下は大層お喜びで、僕も面目(めんぼく)(ほどこ)した。ツキオカ殿、感謝する」

「いえいえ、趣味で作ったものなのにご購入いただき、さらに喜んでいただけて嬉しいです」

「それで陛下と話しているときに気づいたのだが、【火魔法】と【水魔法】の【複合魔法】ということは、君は【光魔法】【風魔法】【水魔法】のほかに【火魔法】まで使える四属性(クアドルプル)ということにならないか?」

 あ…、しまった。

 俺が【火魔法】を使えることは秘密だった…。『暁の銀翼』のメンバーは全員、俺が全属性の魔術師であることを知っているから、普通に【火魔法】を使ってしまったよ。もちろん、オーレリーちゃんにも俺の秘密はすでに打ち明けている。


 これって、かなりヤバいかも…。

 冷や汗を流す俺に伯爵様が言った。

「君が四属性だろうが五属性だろうが問題はない。叙爵(じょしゃく)されることはほぼ確定だからね。君のような優秀な魔術師を我が国に取り込めて、本当に良かったよ」

「隠していて申し訳ありませんでした。実は、私は七つの属性全てを使えます。とは言っても得意な属性は【光】と【水】なんですが…」

「なっ!全属性、だと…?それは予想していなかったな。うーん、そういう人間がこの世に存在するということ自体、驚きを禁じ得ないよ。このことは陛下にも伝えて良いだろうか?」

「はい、できれば国王陛下、いえ王族限定の情報としていただければありがたいのですが…」

「うむ、約束しよう。陛下にも念を押しておく。しかし、本当に驚いたな。君がAランク魔獣のアークデーモンを眷属(けんぞく)にすることができたのも納得だ」

 そう言えば、アークデーモンのメフィストフェレス氏は元気だろうか?

 しばらく会ってないな。

 余談だけど、エイミーお嬢様も俺が全属性魔術師であることを知って絶句していた。


「子爵位2割、男爵位8割という予想だったが、この情報で侯爵位まで見えてきたな。いや、さすがに叙爵において、いきなり侯爵位は難しいか。まずは子爵位から始めて、段階的に陞爵(しょうしゃく)していくことになるだろう。うん、一年後に伯爵、二年後に侯爵だな」

 えええ?

 伯爵様の予想といえども、そうなる可能性はあるってことだよね。いや、困る…。男爵、いや準男爵くらいで十分ですよ。


「あの~、先ほどの叙爵を受諾する条件に、あと二つほど加えていただけませんか?その一つは『将来の陞爵(しょうしゃく)が無い男爵位であること』でお願いします」

 準男爵では受け入れてもらえない可能性が高いけど、男爵位なら大丈夫じゃないかな?

「うーむ、僕としては君には侯爵まで(のぼ)り詰めて欲しいのだがね。しかし、それが条件であれば仕方ないな。陛下に伝えておこう。その代わりに、君にはうちの寄子(よりこ)になってもらいたい。これは君を守るためでもある。良いだろうか?」

 アインホールド伯爵家を寄親(よりおや)とする派閥の(した)()ってことだね。それはこちらとしても望むところです。

「もちろん、こちらからお願いしたいくらいでございます。貴族社会のことを色々とご教授いただきたく、よろしくお願い申し上げます」

 派閥に入っておくことは、他の貴族からの無理難題を避けるのに必要なことだと思う。多分だけど…。


「了解した。他の高位貴族連中が君を取り込もうと画策するだろうが、アインホールド伯爵家が君たちを守るよ。それをここに誓おう。それで、もう一つの条件とは何だね?」

「はい。これは難しいかもしれませんが『王命への拒否権をいただきたい』ということです。例えば、理不尽な命令には従いたくありませんし、あり得ないとは思いますが、万が一この国の王女様を(めと)れ等という命令が下された場合にも、やはり従うことはできません。最悪の場合、この国を出奔(しゅっぽん)して、他国へ移住させていただくことになるかもしれません」

 伯爵様が今日一番の難しい顔になっている。いや、この条件がかなりの無理筋(むりすじ)であることは自覚しているんだけどね。

「さすがに公式には認められないな。文書に残さない密約としてなら、あるいは…」

「すみません。『拒否権』は言い過ぎでした。軟らかい表現としては、『私の意思を尊重していただく』または『話し合いの余地を残す』ということなのですが、それで如何(いかが)でしょうか?」

「ああ、それであれば大丈夫だろう。加えて、君に無茶な命令を下さないよう、陛下には厳重に注意しておくよ」

 伯爵様って国王陛下に諫言(かんげん)できる立場なのだろうか?

 まじで謎なお人だ。


 ここでエイミーお嬢様が発言した。

「お父様、我が国がツキオカ様と敵対しないよう、くれぐれも頼みますね。アンナのためにも…」

「ああ、もちろん分かってるさ。そう言えば、シュバルツ男爵やデルト準男爵は王都への旅路に同行しなかったのかね?」

「ご一緒しましたよ。明日にはお二人揃って挨拶にお見えになるとおっしゃっていました」

 アンナさんの親父さんと冒険者ギルドの元・支部長であるアイーシャさんか。

 アイーシャさんとは面識があるけど、シュバルツ男爵とは初めてお会いすることになる。なんだか緊張するよ。

 なぜって、そりゃアンナさんのお父上だからね。


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