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146 魔道ケトル①

 【水魔法】の【ウォーターストリーム】は消費魔力量10で水を生成できる。ただ、その水の量は調節できるし、それを魔道具化した場合でも同様だ。

 最大で2リットル分なんだけど、それよりも少ない量で魔法発動を終了することも可能ってことだね。あ、ただし、水量を少なくしたからといって魔力の消費量が減るわけじゃないよ。

 俺がこの仕様に着目したのは、【火魔法】の【スモールファイア】を【複合魔法】で同時発動させた場合、水温が水量に反比例するからなのだ。

 温度計で水温を計測しながら何度も実験を繰り返した結果、以下の結果になった。


・【ウォーターストリーム】単体で発動した場合…水温15°C


・【ウォーターストリーム】と【スモールファイア】の【複合魔法】

 水量2000mlの場合… 40°C

 水量1800mlの場合… 43°C

 水量1600mlの場合… 46°C

 水量1400mlの場合… 51°C

 水量1200mlの場合… 57°C

 水量1000mlの場合… 65°C

 水量 800mlの場合… 78°C

 水量 600mlの場合… 98°C


 590ml以下にすると、沸騰(100°C)したお湯が得られた。

 もしかしたら季節によって変動する可能性もあるから、あくまでも現時点(季節は春先)の実験結果だけどね。夏や冬は基礎水温(15°C)が変わるかもしれないってことだ。


 で、問題は【複合魔法】を魔道具化することができるのかどうか…。

 初級魔法用の『魔道基板』を二つ用意し、一つに【ウォーターストリーム】の魔法陣を、もう一つに【スモールファイア】の魔法陣を刻んでみた。

 そして、その二つを同時に発動してみたのだが、()いた火が水で消されただけだった。…って、そりゃそうか。


 次に【ウォーターストリーム】の魔法陣を刻んだ『魔道基板』に、さらにもう一つ【スモールファイア】を刻もうと試みたんだけど無理だった。まぁ、これも予想通り。

 やはり【複合魔法】なのだから、同時に魔法陣を刻まないといけないのだろう。というわけで、試してみたが『魔道基板』が壊れてしまった。ただ、これが初級魔法用の『魔道基板』だったから失敗したのか、それとも成功率の問題だったのかが分からん…。

 なんとなく、初級魔法二つの【複合魔法】が中級魔法相当になることから考えて、『魔道基板』が中級魔法用じゃないとダメな気がする。でも、あれって値段が高いんだよなぁ。


 そんな状況下での『O-157』案件の高額報酬(総額2000万ベル…一人あたり400万ベル)だったわけです。

 中級魔法用の『魔道基板』は一つ100万ベルなんだけど、素材店に在庫が三つあったので迷わず全部購入してきたよ(総額300万ベル)。

 さて、次の問題は魔法陣を刻み付ける際の成功率だ。


 魔法単体(【複合魔法】ではない)ならば、以下の通りとなる(これは確定)。

 【(〇〇魔法のスキルレベル+【細工】のスキルレベル-魔法の最低必要スキルレベル)÷2】(単位:%)


 ただ、【複合魔法】の場合、俺の予想ではこうなると思っている。

 【(〇〇魔法のスキルレベル+△△魔法のスキルレベル+【細工】のスキルレベル-魔法の最低必要スキルレベル)÷3】(単位:%)


 つまり、(現時点では)【火魔法】が51、【水魔法】が66、【細工】が62というスキルレベルなので、以下の計算結果となる。

 (51+66+62-60)÷3=40%

 『魔法の最低必要スキルレベル』は初級魔法30、中級魔法60だから、『-30』ではなく『-60』になると思うんだよね(あくまでも俺の予想)。いずれにせよ、多くの試行によって確率を収束させないと、正確な計算式は不明だけど…。


 あと、最後の問題は、中級魔法の魔法陣を『魔道基板』に刻むには、本来ならば【細工】のスキルレベルが80以上は必要だってことだ。

 初級魔法二つを【複合魔法】として同時に発動する場合、中級魔法相当になるんだけど、果たして【細工】80以上のスキルレベルが必要なのかどうか…。だとしたら、(現時点では)そもそも無理だ。


 一回失敗すれば100万ベルが失われるという状況において、無謀な挑戦をするべきではないと思う反面、成功すれば世界初の画期的な魔道具が作れるという誘惑にも(あらが)えない俺がいる(笑)

 よしっ!中級魔法用『魔道基板』三個(300万ベル)を無駄にする覚悟でやってみよう!


 『魔道基板』への刻み付け手順としては、まず【スモールファイア】の刻み付けを実行直前の保留状態にしておいて、【ウォーターストリーム】の刻み付けのほうも準備する。

 で、その二つを同時に刻み付けるわけだけど、この手順が正しい手順なのかどうかすら、実は分からないという…。【複合魔法】自体が(おそらくは)俺のオリジナルなので、過去の文献が全く無いのだ。試行錯誤になるのは仕方ないね。


 ・・・


 さて、それではやってみるか…。まず1個目。

 中級魔法用『魔道基板』の中央に亀裂が…。うむ、失敗だ。あぁ、100万ベルが…。


 心にダメージを負いつつ、2個目。

 頼む!祈るような気持ちで魔法陣の刻み付けを実行したが、1個目と全く同じ結果だった。ぐはぁ!


 普通はここで()めておくべきだろうな。でも俺はやってやるぜ。

 3個目。てか、これで最後(もう『魔道基板』の在庫が無い)。

 頼む、ご都合主義の神様!


 …ん?成功した?

 『魔道基板』の中央部に二つの魔法陣が重なった状態で、うっすらと見えている。

 うん、どう見ても成功です。もちろん、魔法陣の刻み付けに成功したからと言って、これで【複合魔法】が発動できると決まったわけじゃないけどね。

 でも、少なくとも刻み付けに成功したのは間違いない。3回中1回成功したってことは、成功確率は約33%ってことだ。


 この喜びを誰かと分かち合いたいと思ったけど、ナナに見せたとしても『ふーん』と鼻で笑われそうな気がする。

 あぁ、【細工】仲間が欲しい…。


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