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138 次の治療所へ

「お、おぅ。医官のグレッグだ。よろしくな。というか、お前、神官じゃなくて冒険者だったのか。【光魔法】の中級まで使えるたぁ、すげぇな。まじで助かったぜ」

「患者の枕元に置いていった布切れの意味なんですが、黄色はまだ『罹患』状態で、緑色を置いた患者は『健康』になっています。あ、【鑑定】で確認した結果です。『健康』状態の患者さんについては自宅へ帰らせても大丈夫だと思いますが、その判断はグレッグさんにお任せします」

「分かった。俺も【鑑定】は使えるが、その布切れは参考にさせてもらうわ。んで、病の原因は何だったんだ?」

「はい、それについては妹のナナのほうからご説明差し上げます」

 ここからはナナに任せるとしよう。なにしろ、俺たちの中で『O-157』に一番詳しい人間だからな。


 ナナが『細菌』や『大腸菌』、そして『病原性大腸菌』についての特徴やその予防法、治療法(対症療法)などを()()(さい)()り説明していった。てか、本当に詳しいな。

 ただ、話を聞いたグレッグ医官は懐疑的な表情になっていた。

「俺は目に見えないものを信じない主義でな。本当にそんな小さな生き物が腸内にいるってのか?俺は医官という仕事柄、他国の論文にも目を通しているのだが、そんな大発見は今まで公表されてないぜ」

「お兄ちゃん…」

 ナナが助け舟を求めるような目で俺を見た。

「それについては、微生物を観察できる装置を将来的に作りたいと思っています。そうですね、一か月ほどお待ちいただければ…」

 そう、顕微鏡を作るつもりなのだ。あ、スマホのカメラレンズにも顕微鏡用のレンズを取りつけられるようにしたいね。動画撮影できるように。


「おう、楽しみにしてるぜ。それにしても、さっきそっちの娘っ子が使ってた魔道具はすげぇな。なんて言ったっけ?『健康銃(ヘルシー・ガン)』だったか…」

「はは、趣味で作ったものなので、ここで役立って良かったですよ」

「お前が作ったのか?そいつはすげぇ。…なぁ、できれば俺に売ってくれないか?2、いや3、いやいや500万ベル出そう!俺の全財産だ」

 魔道具の値段としてはなかなかの高額だけど、同じものを何個も作りたくないんだよな。ちなみに、サリーにプレゼントしたものを売るのは論外だ。あ、サリー自身が転売するのは構わないけどね。

「今あるこれはこの子への贈り物なので、欲しいのならこの子と交渉してください」

 サリーにグレッグさんへの対応をぶん投げようとしたら、サリーから非難の目で見られたよ。

 すごい圧で迫るグレッグさんに対し、精神的に疲労しながらも一生懸命断っていたサリーさんだった。ごめんね。


 ・・・


 このあと、水筒に入れた経口補水液の説明を行い、解毒ポーションの在庫を補充してから、次の治療所へと向かうことにした俺たち…。まだまだ別の治療所が点在しているらしい。

 移動中の大型箱馬車の中でサリーが恨めしげに言った。

「サ~ト~ル~。この魔道具を私が売るわけないじゃん。それが分かってて、さっきのおっさんの対応を押し付けたよね?」

「すまん、すまん。なんか面倒くさくて…」

「う~、でもありがとう。魔術師じゃない私が戦闘以外でも役に立てるようになれて嬉しいよ」

 そうなのだ。俺たち『暁の銀翼』の中で、唯一魔術師じゃないのがサリーだったからね。それを引け目に感じないようにって動機で、サリーのために作ったものなのだ。喜んでもらえて俺も嬉しいよ。


 アリスさんも感心したように俺を見ていた。

「お兄さん、見直したよ。まだ若いのに大したものだ。最初に『冒険者ごとき』なんて言って悪かったよ。謝罪する。あ、でも『健康銃(ヘルシー・ガン)』は無いよな」

 ん?()められた直後に、なんだか(けな)された気がする…。

「ですよね~。『健康銃(ヘルシー・ガン)』は無いと思うよ。お兄ちゃん」

「私もその名前はどうかと…」

 ナナに続いてアンナさんまで?ちょっとショック…。


「わ、私は良いと思います。なんか可愛い名前ですし…」

 おぉ、ありがとう、オーレリーちゃん。君だけが俺の味方だよ。

「私も別に気にしないよ。なにしろサトルだからね」

 サリーは味方のフリして、実は敵っぽい…。なんとなく、俺のネーミングセンスを馬鹿にされた気がする。

「そんなことは良いから、使い終わったカートリッジを渡してくれ。新品の魔石をセットするからさ」

 【細工】スキル持ちなら簡単に魔石交換できるんだけど、素人が作業するのは難しいからね。ちなみに俺は、大量の安い魔石を常に【アイテムボックス】に在庫しているのだ。

 こうして、サリーから手渡されたカートリッジ3個の魔石交換を手早く済ませた俺だった。よし、話は()れたな。


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