表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

125/373

125 実戦テストの開始

 翌日、朝日が昇る前から幌馬車に乗って狩場へと出発した俺たち『暁の銀翼』。

 御者を務めるのは【操車術】を覚えたオーレリーちゃんで、その隣にはサリーが座って【索敵】を担当している。

 荷台にはアンナさんとナナ、それに俺がクッション性のある座布団っぽいものを敷いて座っている。

 ちなみに、この座布団はナナが王都の仕立て屋に特注したものだ。うん、とても重宝しているよ。さすがに荷台に直接座るのは辛すぎる。


 快調に走ること1時間半から2時間ってところで、目的地である山の(ふもと)へとたどり着いた。

 ここからは緩やかに登っていく山道(一応、細い山道があったのだ)を馬たちの手綱(たづな)を引いて、徒歩で登ることになる。あ、幌馬車を俺の【アイテムボックス】に収納したのは言うまでもない。

「サリー、【索敵】をよろしく頼むよ。あ、グリズリーベア以外の魔獣が出現する可能性もあるから気を付けてね」

「まかせてよ。何が出てきても70メートルまで近づけば、感知できるからさ」

 サリーの持つ【索敵】のスキルレベルは(魔装具(マジックアクセサリ)込みで)70だから、それがそのまま感知可能距離(単位:メートル)になっているらしい。


 人間から逃げる習性を持つ動物とは違って、魔獣は(本能的に)人間を襲おうと近づいてくるので、居そうなところを歩いていれば勝手に向こうから現れてくれる。

 そういう意味では動物を狩る猟師よりも、魔獣を狩る冒険者のほうが楽なのかもしれない。

 この山にはホーンラビットやダイアウルフ等の魔獣も生息しているようで、たまに襲撃してくるそれらの魔獣を閃光銃(フラッシュ・ガン)を使うことなく倒していく面々…。頼もし過ぎる。

 だいたい、サリーとナナの【剣術】だけで問題なく対処できているよ(魔法を使うまでもない)。


「グリズリーベア、出てこないねぇ」

 このナナの発言がフラグになったのか、サリーが警告を発した。

「強い反応が近づいてくるよ。もしかしたらグリズリーベアかも…」

 山の斜面から木々をかき分けるようにして出現した魔獣は、やはり討伐対象のグリズリーベアだった(【鑑定】したから間違いない)。

 威嚇するように二本足で立ち上がったグリズリーベアは、身長2メートルってところかな。そこまで大きいわけじゃないね。


 最前線ではサリーがロングソードを構え、そのすぐ後ろにいるナナは右手に閃光銃(フラッシュ・ガン)を持っていて、ショートソードは腰に下げたままだ。

 接敵するまでの距離は残り10メートルってところかな。俺やオーレリーちゃんは馬の手綱(たづな)を握りながら、(おび)える馬たちを(なだ)めていた。

「私に任せてね」

 ナナのセリフのあと、閃光銃(フラッシュ・ガン)から【フラッシュ】が発動された。少し距離が遠いだろうか?

 グリズリーベアは何度も(まばた)きしながら、その場で両腕をブンブン左右に振り回していた。お、足止めに成功したのか?

 そこへナナの【水魔法】の初級である【ウォーターカッター】が発動されたのだろう。細い水流が飛翔していった。

 その攻撃は狙い過たず、グリズリーベアの胸の中心部へと吸い込まれていった。

 そしてその数秒後、ズズーンという地響きと共に巨体がうつ伏せに倒れたのが見えたよ。よし!討伐成功だな。


「どうよ、お兄ちゃん。Dランク魔獣であるグリズリーベアの単独討伐だよ。なんか強くなった気がするね」

「サリーの【索敵】と閃光銃(フラッシュ・ガン)があっての戦果だぞ。それを忘れるなよ」

「へへへ、分かってるって。でも魔法の発動に失敗するかも…って恐怖は無かったよ。やっぱ敵の視力を一時的にでも奪うってのは有効で、めっちゃ安心できるね」

 まぁ、それに気付かせてくれたのはオーレリーちゃんだけどな(オーガロード戦のときの話…)。


 このあとナナが閃光銃(フラッシュ・ガン)をアンナさんに渡し、それを使ったアンナさんが無双したのは言うまでもない。

 圧巻だったのは二体同時に現れたグリズリーベアを【フラッシュ】で足止めしたあと、『マルチキャスト』で二体同時に倒したことだな。え?アンナさんも『マルチキャスト』をマスターしたの?…って、いつの間に?

 なお、アンナさんの『マルチキャスト』は、【火魔法】の【ファイアアロー】と【水魔法】の【ウォーターカッター】の同時発動だ。

「ふふ、どうですか?サトルさん。こっそり練習してきた成果ですよ」

「アンナさん、すごいです。まさか『マルチキャスト』に成功するとは…」

 俺の誉め言葉を聞いて嬉しそうに頬を染めるアンナさん。可愛いなぁ。


 ・・・


 狩りの時間としては、ほんの2時間ほどだっただろうか(山の登りで1時間、下りで1時間)。

 この短い時間に得た戦果は以下の通り。


・グリズリーベア…3体(ナナが1体、アンナさんが2体)

・ダイアウルフ…5体(サリーが2体、ナナが1体、アンナさんが2体)

・ホーンラビット…8体(サリーが5体、ナナが3体)


 やはり解体不要ってのが、時間短縮に繋がっているよ。狩った(はし)から(俺とナナの)【アイテムボックス】に放り込んでいるからね。

 あれ?俺は何もしていないような?

 いやいや、ポーターとして役に立ってます。

 ちなみに、オーレリーちゃんも御者兼馬丁(ばてい)として役に立ってるからね。そんな申し訳なさそうな顔をしなくても良いんだよ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ