表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

124/373

124 実戦テストの準備

 試作機である閃光銃(フラッシュ・ガン)に様々な改良を加えて、ついに初号機が完成した。

 改良した点は以下の通り。


・円錐形の内側を銀色に塗る。

・グリップの両横には、格子状の溝を彫って滑り止めの効果が得られるようにした薄い木を貼り付ける。

引き鉄(トリガー)をロックするための安全装置(セーフティ)(となるスイッチ)を取り付ける。もちろん、トリガーガードも設置。

・全体の色だけど、引き鉄(トリガー)の部分を境目として手前側は白色に、先端側はピンク色に塗る。ただし、色の境目は曖昧にしてグラデーションに。

・カートリッジは銀色に塗る。


 余談だけど、黄色と黒の猛虎カラーにしようとしたら女性陣から大反対された。ええやん、猛虎軍(タイガース)

 え?可愛くないって?…はい、ごもっともです。


「うーん、素晴らしい。めっちゃ素晴らしい物を作ってしまったよ」

「お兄ちゃん、自画自賛はほどほどにね。まぁ、私も良い物だとは思うよ。で、これを誰が持つの?」

「ああ、まずサリーは両手でロングソードを持つから、手が(ふさ)がっているよな。オーレリーちゃんと俺は自分の【光魔法】で【フラッシュ】を発動できるから、こいつは不要だよね。となると、アンナさんかナナってことになるんだけど、どうする?」

 俺の言葉を聞いたサリーとオーレリーちゃんが残念そうにしてたけど、これは仕方ないだろう。


「最前線により近いのは私だから、私が持つべきだと思うんだよね」

 …とナナが言えば、アンナさんも反論した。

「私が【複合魔法】の発動を準備するための時間を稼ぐには、私自身のタイミングで敵を足止めしたいですね。サトルさん、いかがでしょう?」

 うーん、どちらの言い分ももっともなんだよな。どうしよう?

 てか、もう一台作れば良いじゃんってのは無しね。面倒くさい…。


 ここでサリーが折衷案を出してくれた。

「ねぇねぇ、冒険者ギルドで魔獣討伐依頼を受けて、その魔獣に対して二人で交代しながら使ってみたらどうかな?実戦で運用してみれば、どっちが持つべきか分かるんじゃない?」

 お、良い考え!それでいこう。

「私はそれで良いよ。アンナさんは?」

「私も問題ありません。では、さっそくギルドに行って、適当な依頼を受けましょう」

 二人ともめっちゃやる気に満ちているよ。そんなに使ってみたいのかね?(本音を言えば、俺も使いたいんだけど…)


 ・・・


 冒険者ギルド『エベロン支部』にやってきた俺たち『暁の銀翼』は、Cランク依頼書が貼られている掲示板の前に全員で陣取った。

 ちなみに、現在の時刻は正午頃なので、掲示板の前は閑散としている。

 てか、相変わらず多くの依頼が毎日貼り出されているんだけど、これは主に食肉の安定供給のためらしい。畜産業が発展していないこの世界では、食肉ってのは魔獣から得られるものがメインなのだ。

 特に、この王都は人口が多いので、食肉需要は供給量を常に上回っているってさ。

 要するに、冒険者ってのは狩人(ハンター)でもあるってことだな。


「うーん、割の良い依頼じゃなくても良いんだけど、これといったものが無いな…」

「A~Cランクの依頼は基本的に集落や街道、森の浅い地点等の【安全確保】が目的ですからね。【食肉供給】を目的とする依頼はどうしてもDランクやEランクになりますから、そちらのほうが依頼の数も多くなりますね」

 アンナさんの言葉に両隣のBランクやDランクの依頼書も眺めてみた(Bランクは受注できないけど)。


「Bランクの依頼だったら面白そうなやつがあるんだけどなぁ。うーん、Dランクのグリズリーベアの討伐依頼ってのをやってみるかい?」

 熊肉や熊胆(ゆうたん)ってのは需要が高いらしい。熊胆(ゆうたん)、つまり熊の胆嚢は食用じゃなく、薬の材料になるらしいけど…。

 てか、王都の近くにいるのかな?

 依頼書にはこう書かれていた。


・件名:グリズリーベア討伐依頼

・場所:王都エベロンの西側約20km地点にある山中に生息

・報酬:30万ベル(1体あたり)

・条件:必ず魔石と共に、20kg以上の熊肉を納品すること

・特記事項①:討伐期限は特に設けない

・特記事項②:胆嚢については、新鮮な物であれば上記の報酬とは別に高価買取可

・特記事項③:討伐数に制限はない(何体であっても報酬を支払うものとする)


 魔石がいくらなのか知らないけど、ざっくり100gあたり1000ベル以上ってことになるね。てか、買取価格がこれなら、販売価格はさらに高いだろうけどね。…って、かなりの高級肉だな。

 なお、俺たちの場合、獲物を解体せずにそのまま【アイテムボックス】に収納して持ち帰るので、食肉供給系の依頼は得意だ。特に俺とナナは、肉や内臓の鮮度を保てるってのが大きいよ(時間経過無しの【アイテムボックス】の威力…)。


 うん、狩場がちょっと遠いけど納期の縛りも無いし、良いんじゃないかな?

 今日は受注だけしておいて、明日早朝から幌馬車で出発すれば良いよね。早朝からなら日帰りもできるだろう(あまり野宿はしたくない…)。

「お兄ちゃん、手を出しちゃダメだからね。司令官として指示だけ出して、…いえ指示も出しちゃダメだから。本当に危ないときだけ助けてよ」

「そうですね。サトルさんが参戦すると閃光銃(フラッシュ・ガン)のテストになりませんし…」

 基本的にDランク以下の魔獣は【魔法抵抗】スキルを持っていないって話だから、魔術師であるアンナさんとナナは魔法で十分に無双できるはずだ。盾役としてのサリーがいれば、安心して魔法の発動もできるだろうしね。

 いや、閃光銃(フラッシュ・ガン)で魔獣の足止めができるならば、盾役すら不要になるかも…。

 うん、明日が楽しみだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ