123 お披露目
「魔道具を作ってみました。【光魔法】の【フラッシュ】を発動します。皆様のご意見・ご要望をお聞かせください」
現在、アインホールド伯爵家の王都別邸の中の立派な応接室(かなり広い)に集まっているのは、アインホールド伯爵様、アンナさん、サリー、ナナ、オーレリーちゃん、そして俺の六人だ。
「ツキオカ殿、君は元々【細工】スキルを持っていたのかね?魔道具を作るには、【細工】のスキルレベルが50以上は必要って話を聞いたことがあるのだが…」
「ええ、実はそうなんです。以前リバーシを作れたのも、このスキルのおかげですね」
はい、嘘です。本当は【コーチング】してもらったばかりなんだけど、そんなことは言えないよな(非常識過ぎて…)。
「お兄ちゃん、ちょっと貸して」
「ああ、撃っても良いけど、人には向けるなよ」
ナナがグリップの上にあるボタンを押すと、シャコッという音と共にグリップ部分の下からカートリッジが飛び出した。
「おっ!弾倉交換できるの?」
「ああ、魔石をカートリッジ方式にして、簡単に交換できるようにしてみたんだ」
「へぇ~、魔力量の多い高価な魔石を使わずに、安い魔石を随時交換しながら運用できるってわけだね。良いじゃん良いじゃん」
さすがは転生者。すぐに気付くとは…。
俺は予備のカートリッジを3個取り出して、テーブルの上に置いた。現時点でカートリッジは4個作っているのだ(1個は本体に装着済み)。
ナナが自身の右手で持っている魔道具を誰もいない空間へ向けてから、引き鉄を引いた。
ピカッ!
うん、問題なく発動したね。
さらにカートリッジ交換をしたあとに、もう一度試していた。よし、連続発動でも問題は無さそうだ。
「面白いよ、これ!ねぇ、お兄ちゃん。これ、私にちょうだいよ」
「免許が必要な魔道武器という扱いにならなければな。伯爵様、いかがでしょうか?」
最も詳しそうなアインホールド伯爵様に質問してみた。
「僕にも見せてくれたまえ」
ナナが魔道具を伯爵様に手渡した。
様々な角度から眺め回していたけど、最後に一回だけ引き鉄を引いて【フラッシュ】を発動した。
「なるほど。これは確かに面白い。今まで【フラッシュ】の魔道具は無かったからね。で、これが武器の扱いになるかどうかだけど、ちょっと微妙だな。攻撃魔法を魔道具化した魔道武器ではないけれど、準・魔道武器と言っても過言ではない」
「確かに魔獣との戦闘において、魔獣の視力を一時的に奪うという効果は得られます。しかし、武器とまではいかないと思うのですが…」
「ツキオカ殿、君は【魔法抵抗】スキルで初級魔法を抵抗できる確率はどのくらいになる?」
「100%抵抗できますね」
「では、【フラッシュ】を浴びた場合、目は何ともないかね?」
「あ、ダメですね。眩しく感じてしまいます。そうか、盗賊団などの悪人がこの魔道具を使った場合、かなりの脅威になりますね」
そうなのだ。初級魔法の【フラッシュ】は攻撃魔法じゃないから、【魔法抵抗】スキルで抵抗できないんだよね。
「うーん、そうだな。大量生産して販売しないこと。『暁の銀翼』のメンバー内だけで使用すること。街中では使用しないこと。以上のことが守れるならば、僕としては見なかったことにしても良いよ。それにしても、この魔石交換のアイディアは画期的だ。できれば魔道武器の製造業者に教えてあげたいのだが、構わないだろうか?我が国の技術力の向上に繋がるのは間違いないからね」
「ありがとうございます。ええ、カートリッジ方式のアイディアでしたらご自由にお使いください」
だって、元々は俺のアイディアじゃないしな。てか、やはりこの世界には無かったのか。
伯爵様の話では、魔道武器に組み込まれている魔石は、魔力を使い切ったあとは専門業者によって交換されることになるらしい。というか、魔道具全般がそうみたい。
確かに『魔石ケース』に魔石を装着する際、サイズ調整が必要で、ワンタッチでの装着はできなかったんだよな。
このあと、アンナさん、サリー、オーレリーちゃんの順番で次々とリレーされていった【フラッシュ】の魔道具…。
この三人にも好評だったのは嬉しい。嬉しいんだけど、全員から欲しいって言われたのには困ってしまった。
同じものをあと三台も作りたくないよ…。
「サトルさん、この円錐形の内側ですけど、銀色の塗料を塗ったほうが良いのではないかしら?より【フラッシュ】の効果が高まるように…」
「サトル、この持ち手の部分って鉄板剥き出しだけど、両横に木を貼り付けたらどうかな?滑り止めになると思うんだよね」
「サトル様、外側もおしゃれな感じになるように色を塗ったらどうでしょうか?ピンクとか…」
順にアンナさん、サリー、オーレリーちゃんの改善要望だ。
納得できる貴重な意見だな。ピンクには塗りたくないけど…。
「お兄ちゃん、そう言えば、これの名前は?」
「仮だけど、閃光銃という名前にしているよ」
「まんまだね」
くっ、ひねりが無いのは自覚しているよ。てか、ひねりなんて要らんだろ。




