116 久々の討伐系依頼
あとはアインホールド伯爵様への根回しも必要だな。
『暁の銀翼』に加入した新たなメンバーとして認識しておいてもらわないとね。
なお、現在の活動拠点として、アインホールド伯爵家の王都別邸に滞在させてもらっている俺たちだけど、オーレリーちゃんの分も部屋を用意してもらえるようにお願いしないといけない。まぁ、断られることはまず無いと思うけど…。
そして、オーレリーちゃんが伯爵様に初めて謁見したときの伯爵様の言葉に驚かされた俺たち…。
「ツキオカ殿が仲間と認めた人物なら、僕も歓迎するよ。いや、本来ならば、王宮で保護されるべき【光魔法】の素質の持ち主なんだけどね。そう、冒険者登録する前だったら、間違いなく保護という名目で王宮に軟禁されていたはずだよ」
「やはりスキル上限が120というのは希少なんですか?」
「うむ、【光魔法】のスキルレベルが120になった暁には、『聖女』と呼ばれるようになるかもしれないね。おそらく、この国でも周辺国でも例を見ないスキル上限だと思う」
俺は自分の魔法系のスキル上限が軒並み120(火・水・風・土の四つの上限が120なのだ)なせいで、そこまですごいものとは考えなかったよ。
オーレリーちゃん、すげぇ。
あれ?そう言えば、この世界ではスキルレベルが100で達人、110で長老、120で伝説って呼ばれているんだったな。…って、120は伝説的存在ってことか…。
そこまでのレベルに到達するのに、いったいどれだけの年数がかかるんだろうね?
一年間にスキルレベルが『4』上がると仮定すると、オーレリーちゃんが伝説になるまでに21年は必要だ。てか、それでも36歳で到達できるのはめっちゃ早い気もするけどね(もしかしたら、もっと早いかも…)。
なお、アインホールド伯爵家の王都別邸でのオーレリーちゃんの部屋は、別途用意してもらうのではなく、ナナと相部屋にしてもらった。というか、そうなるようにナナが強硬に主張した。
元々ナナは一人っ子のはずだけど、オーレリーちゃんのことを本当の妹のように想っているのかもしれない。ん?そうなると俺の妹でもあるのか?
オーレリーちゃんにしても、お屋敷の大きな部屋の中にポツンと一人で置かれるよりは精神的負担は少ないと思うし、良かったんじゃないかな。
あと、晩餐の席には当然のことながら伯爵様も同席するわけだけど、最初はかなり緊張していたオーレリーちゃんだった。
まぁ、ナナが付きっきりで面倒を見てあげていたから、それほど問題は無かったけどね。
サリーにしても最近はあまり緊張していないように見えるし、要は慣れだろう。
・・・
翌日の早朝、俺たちは馬車で冒険者ギルド『エベロン支部』へ向かった。
久々に依頼を受けてみようって話になったのだ。メンバー間の連携を確認するという意味合いもある。
当然、狙うのはCランクの依頼だ。
混雑する掲示板から激戦を制して勝ち取った依頼書がこれだ。この依頼書争奪戦って、高校のときの購買(売店)を思い出すよ。
・件名:オーガ討伐依頼
・場所:王都エベロンの南側約8km地点にある森の中での目撃証言あり(対象は移動しているため、場所の特定は不可能)
・報酬:70万ベル
・条件:この依頼を受注してから三日以内に討伐すること(期限内に達成できない場合は失敗として取り扱う)
・特記事項①:薬草採取のために森に入ったFランク冒険者が襲われるという事件が発生したため、緊急依頼とする
・特記事項②:複数体が群れでいることは考えづらいが、もしもその状態であればギルドに報告すること(討伐できなくても良い)
・特記事項③:討伐証明部位は体内の魔石であるが、爪や牙、皮膚の一部などは素材として買取可能
依頼受注を行う受付に並んで、自分の順番が来るのを待つ俺…。その間、女性陣は飲食スペースで優雅にお茶です。…って、別に良いけどね(何となく疎外感…)。
順番が回ってきたので、依頼書と全員分の冒険者カードを受付嬢に提示した。
「Dランクパーティー『暁の銀翼』です。よろしくお願いします」
「あら、あなたは…。ふふ、あなたはこの支部の恩人、いえ、受付嬢全員の恩人ですよ。あの名前を言ってはいけない方は、私たちへのしつこい食事のお誘いや卑猥な言動が目に余ってましたからね。本当にありがとうございました」
『名前を言ってはいけない方』ってハリポタかよ。てか、ゲイル君のことだろうな。セクハラ野郎でもあったのか…。はぁ~(溜め息)。
恙なく受注処理も終わったので、飲食スペースにいた女性陣と合流した俺。
で、このあとすぐに幌馬車で南の森へ向かうことになった。
うーん、オーガと戦うのは初めてなんだよな。ちょっと楽しみでもある。
あ、まさか『お兄ちゃんは手を出すな』って言われないだろうな。いや、まさかね。




