011 非合法工作員
和やかに談笑する俺たちとは異なり、捕虜となった賊たちは地面にへたり込んでいた。周りを騎士たちが警戒していて、変な動きを見せた途端に斬り捨てるって雰囲気だ。
そう言えば、こいつらは単なる山賊なのかな?おそらく街に着いてから尋問するのだろうが、一人二人ついでに『鑑定』しておくか…。
するとタイミングよく、山賊の一人が話しかけてきた。賊の中では偉そうな雰囲気の中年男だった。もしかして頭目か?
「なぁおい、騎士さんたちよぉ。俺たちにも水を分けてやっちゃくれねぇか?喉が渇いちまった」
賊たちは後ろ手にロープで縛られているため、手が使えない。親切な騎士さんが飼葉桶から馬たちの飲み残しの水を柄杓ですくって、男たちに飲ませてやっていた。
俺はさっき発言した賊を『鑑定』してみた。
・名前:ゴラン
・種族:人族
・状態:健康
・職業:デルト役場職員(非合法工作担当)
・スキル:
・耐鑑定 78/100
・魔法抵抗 47/100
・剣術 74/100
・徒手格闘術 68/100
・乗馬術 48/100
注目したのは『職業』だ。
あと、スキルレベルの異常な高さ。特に『耐鑑定』が高い。これだけの高い数値なら『鑑定』されても、本当の身分がバレることはないって思っているんだろうな。
それに『剣術』なんか、マックス隊長よりもスキルレベルが上だよ。
俺はゴランという男に気付かれないよう、何食わぬ顔でマックス隊長に問いかけた。
「マックス隊長、デルトというのはこれから向かう街の名前ですか?」
「ええ、そうです。ここからなら、あと20キロメートルくらいでしょうか」
うわぁ、あと5時間は歩かなきゃいかんのか…。てか、やはりこの世界は『メートル法』なのか?まぁ、勝手に『全言語理解』が翻訳しているって可能性もあるのだが…。
いや、そんなことより、俺たちって敵地へと向かっている可能性があるんだよな。
「街を治めている方はやはり貴族なんですか?」
「ええ、デルト領主様は準男爵で、我が主アインホールド伯とは寄親・寄子の関係となります」
「なるほど。その方は信頼できるお方なのでしょうか?あ、失礼な質問をしてしまい申し訳ありません」
マックス隊長の顔が少し強張った感じになったけど、それでも落ち着いた口調で答えてくれた。
「ええ、大丈夫です。エイミー様のことを自分の娘のように思ってくださっていた先代様と同様、当代の領主様も信頼できるお方であると伺っております」
ふむ、ではここに非合法工作員がいるのは何故なんだろう?領主は関係ないのかな?
なお、他の賊を全員分『鑑定』してみたが、このゴランという男以外は全員単なる破落戸だった(職業表記が『盗賊』だった)。
うーん、街に着くまでに、もっと詳細な情報が欲しいんだけどな。
あと『鑑定』のスキルレベルが1上がって、【81/100】になっていた。賊たちを『鑑定』しまくったからか…。




