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109 事件の結末

 依頼達成報告が終わったあと、俺たちは依頼書が貼り出されている掲示板を見てみることにした。

 王都にはどんな依頼があるのか、ちょっと気になったのだ。

 俺たちはDランクパーティー(最も冒険者ランクの高いアンナさんがDランクなので…)だから、CランクかDランクの依頼を受注できる。

 まぁ、俺たちの実力なら、もっと上の依頼でも達成できると思うけどね(多分…)。


 で、俺たちがCランクの依頼書を閲覧していると、すぐ近くでさっきの四人組が同じように掲示板を眺めていた。

 ナナがすぐに気付いて目を向けると、向こうも気付いたようだ。

 (から)まれると嫌だなぁと思いながらも無視していると、ゲイル君のほうから話しかけてきたよ。ちなみに、ゲイル君の容姿は成長したスネ夫って感じだ。

「お前たち、Cランクパーティーか?その装備を見ると初心者っぽいが、受注もできない依頼書を眺めてるんじゃないだろうな」

「俺たちはDランクパーティーですよ。それより、あなた方のようなAランクパーティーにとっては、Cランクの依頼などレベルが低すぎるのではないですか?」

 これは巧妙な(あお)りだ。

 実はAランク冒険者のマクベスさんだけが実力的に突出していて、その他のメンバーの実力がせいぜいCランク程度だってことは【鑑定】で分かっているのだよ。


「うるせー、俺たちAランクパーティー『勇者の斬撃』が、わざわざ下々(しもじも)の依頼を受けてやってんだよ。それよりそっちの女たち、俺たちのパーティーに入らねぇか?こっちの女どもはブスばっかでな」

 パーティー名に『勇者』という単語を付けるとは、まさに勇気ある者だな。

 てか、カミーラさんやオーレリーちゃんをブス呼ばわりって、ちょっと酷いんじゃないか。


「お断りします」「お断りだよ」「絶対に嫌」

 アンナさんとサリーとナナがほぼ同時に発言した。

 一応、俺がフォローしておくか…。

「この三人はAランクパーティーに入れるような実力ではありませんから…。どうぞお気を悪くなされませぬように」


 すごい勢いで拒絶されたことに目を白黒させていたゲイル君も、俺のフォローで気を取り直したのか捨て台詞を吐いて去っていった。

「う、うむ。お前らが俺のパーティーに加入できるほどの実力になったら、いつでも声をかけろ。歓迎してやるぞ」

 まぁ、こればかりは女性陣三人の自由意思だから、将来的にはどうなるか分からないけどね(パーティー間の移籍を俺がどうこうできるわけないし…)。

 余談だけど、マクベスさんとカミーラさんは、何も言わずに掲示板に貼られた依頼書を眺めていただけだった。オーレリーちゃんだけが終始オロオロしていて、最後に深々とお辞儀をしてから去っていったよ。

 なお、マクベスさんが依頼書の中の一枚を()がして持っていったけど、それが何だったのかまでは確認できなかった。


「お兄ちゃん、私たちがお兄ちゃんの元を離れることなんて未来永劫あり得ないんだからね。少なくとも私だけは…」

「ナナさん、『自分だけは特別』というアピールは()めてください。サトルさん、私もこのパーティーから別のパーティーに移ることは絶対に無いですからね」

「サトル、もちろん私もそうだよ。サトルが結婚して、ここに居づらくなるまでは離れないよ」

 サリーの発言にギョッとした目を向けたのはアンナさんとナナだった。

 いや、結婚なんてまだまだ考えられないよ。そもそも相手がいない…。あ、ちょっと悲しくなってきた。

 でも、非モテ陰キャにはそれもまた慣れっこなのだ。すぐに意識を切り替えて、依頼書を確認する作業に戻った俺だった。


「お兄ちゃん?そういう聞こえないフリは良くないと思うよ。これだから童貞は…」

 おーい、ナナさんや。そういう心を(えぐ)るようなセリフは()めて欲しいのですが…。

 …って、俺がDTであることをナナに言ったことがあったっけ?


 ・・・


 結局、時間的な問題で新たな依頼を受注するのは断念し、俺たちは馬車でアインホールド伯爵家の王都別邸へと向かった。その場所はアンナさんが知っていた。てか、今まで毎年訪れていたそうだ(伯爵様やエイミーお嬢様と一緒に…)。

 お屋敷の使用人にはすでに話が通っていたみたいで、何のトラブルも無く、客人としての立場で各人の部屋へと案内された。

 デルトの別荘でもリブラのお屋敷でも、この王都別邸でもそうなんだけど、執事や侍女の方々が俺たちのことを平民の冒険者だからといって見下したり、ぞんざいな扱いをすることが無いってのが本当にすごい。使用人教育が行き届いているってことだね。

 こういうところもまた、アインホールド伯爵家に対する好感度が上がる要因だと思う。


 晩餐の時間になり、伯爵様が(ようや)くお屋敷に姿を見せた。どうやら王城での手続きは終わったらしい。

「ツキオカ殿、君から借りていたリバーシだけど、国王陛下や王妃様、王子王女の方々までもが大興奮でね。とても好評だったよ。この国発祥の新たな文化として、大々的に国内外に広めようという流れになったことを君に伝えておこう」

「それは良かったです。発案者のイザベラ・ハウゼン侯爵令嬢とそのご家族の処遇はどうなったのでしょうか?」

「うむ、次男シリウス、三男マテウスについては王都大広場での公開処刑が決まった。ガラシア盗賊団による被害者の心情を考慮した結果、これは譲れない」

 これは仕方ないだろうね。どういう処刑方法なのかは知らないけど、見に行くのは()めておこう。


「ハウゼン侯とその妻、嫡男のガイウス、長女のイザベラについては、貴族としての身分を剥奪、ハウゼン侯爵家は断絶となる。ただし、身分は平民となるものの、今まで通り家名を名乗ることを許すという温情ある判決が下ったよ。もちろん、連座による刑の執行は無い」

「なんとそれは…、本当にありがとうございました。伯爵様のお骨折りには深く感謝申し上げます」

 家名を名乗ることを許すというのは予想以上の温情判決だよ。


「でだ、嫡男ガイウス・ハウゼンを商会長とする新たな商会を立ち上げて、そこでリバーシの製造販売をさせることになったんだよ。イザベラ嬢も商会員として手伝う形でな。王室からとアインホールド伯爵家からかなりの額を出資するから、事業の元手についても心配ない。そうそう、無能なハウゼン侯とその妻は隠居させることで本人たちにも納得させたよ」

 ああ、その金の出所はビエトナスタ王国からの賠償金だろうな、多分…。ビエトナスタ王国の王太子殿下には感謝だね。


「一応、正式な裁判はまた後日に開かれるのだが、以上の結論は変わらない。それまでは全員が王城にて拘束されることになる。もちろん、次男と三男以外は客人としての待遇になるけどね。それからこれはツキオカ殿とナナ君へのイザベラ嬢からの伝言だ。『できれば今後もニッポンの知識チートで助けてください』とのことだ。相変わらずあの子の言ってることは、僕にはよく分からないのだがね」

「もしイザベラ嬢に伝えられるのでしたら、こうお伝え願えますか。『承知しました。同郷の(きずな)は不変です』と…」

「君の言ってることも意味不明だが、分かったよ。もし会えたら伝えておこう」

 うん、これで一件落着かな。

 犯罪とは無関係な人たちが刑に服することがなくて良かったよ。平民落ちにはなってしまうけれど、今後の生活の見通しも立ったみたいだし、本当に良かった。


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