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108 王都到着

 王室からこの領の統治のための官僚チームが派遣されてきた。ハウゼン侯爵家のお取り潰しは確定なのだろう。

 アインホールド伯爵様は管財人としての立場を官僚チームのトップ(代官だな)に引き継いでから、犯罪者護送用馬車に乗せられたハウゼン侯爵一家と共に王都へ向かうことになった。

 伯爵様もご自分の領地での仕事があるだろうに、こんな事件に巻き込まれて気の毒だよな。…って、巻き込んだのって俺たちなんだけどね(申し訳ない)。


 で、俺たちはといえば、高級宿屋に宿泊し続けるのはお金がもったいないので、一足先に王都へ向かうつもりでいた。

 ところが、伯爵様からの指名依頼が再度冒険者ギルドに出されたのだ。それは俺たち『暁の銀翼』への指名依頼で、王都への同行を依頼するものだった。

 もはや相談役ですら無い。ただ、同行するだけというものであり、依頼料も前回と同じく100万ベルだったよ。

 しかも、出発まではハウゼン侯爵家のお屋敷に泊まれるよう、四人それぞれに部屋を用意するという厚遇ぶり…。

 まぁ、ここまでの好条件なら、依頼を受注することに誰からも文句は出ないよ。


 あと、お屋敷にいる間に【アイテムボックス】の【コーチング】ができるようになったので(インターバル解除)、イザベラお嬢様に【コーチング】を実行した。

 その結果のお嬢様のステータスが以下の通りだ。


・名前:イザベラ・ハウゼン(ハウゼン侯爵家長女)

・種族:人族

・状態:健康

・職業:なし

・スキル:

 ・耐鑑定       35/100

 ・アイテムボックス  64/100 ←ここに注目!

 ・状態異常耐性    70/100

 ・徒手格闘術     32/100

 ・乗馬術       31/100

 ・交渉術       41/100


 うん、【アイテムボックス】の初期値が異常なのは確認した。

 スキルレベルが64ってことは4の3乗だから、容積は一辺が4メートルの立方体ってことになるね。もちろん、スキルレベル50以上なので、時間経過無しだよ。

「くくく、これで私もチート持ち…」

 などと、悪役っぽい独り言を(つぶや)いているイザベラお嬢様がそこにいた。悪役令嬢かよ。


 ・・・


 王都までは三日間ほどかかったが、何の問題も無く到着した。あっさりとね。

 それにしても、アインホールド領の領都リブラから約一週間の道のりだったはずが、ここまで来るのに随分と時間がかかったものだ。

 (ようや)く、まさに(ようや)くって感じだよ。


 すぐに伯爵様とその騎士団、ハウゼン侯爵一家は王城へ向かい、国王陛下に謁見することになるらしい。

 俺たちは指名依頼の達成報告を行うため、王都にある冒険者ギルド『エベロン支部』へ向かうことにした。王都の名称(都市名)が『エベロン』なのだ。

 ちなみに、宿屋には泊まらない。アインホールド伯爵家の王都別邸に泊まらせてもらえることになったのだ。貴族家はどの家も王都にお屋敷を構えているらしいよ(規模の大小はあるけどね)。


 王都の街並みはよく整備されていて、さすがは国王陛下のお膝元って感じだった。

 石畳の道を馬車で走って到着した冒険者ギルドの建物もまた、かなり巨大なものだった。例えるなら、東京駅くらいの大きさか。

 馬車の駐車スペースも広かったし、馬丁(ばてい)も多く働いていたよ(駐車場の誘導員兼警備員って感じかな)。

 ギルドに入るとそこは広い空間の片面が全て受付になっていて、何人もの受付嬢が冒険者や依頼者の対応をしていた。元の世界で言えば、大規模空港の空港カウンターみたいなイメージかな。


 誘導標識に従って歩き、やっと依頼達成報告の窓口を見つけた。そこの行列に並んで、自分たちの順番になるのを待つ俺たち四人。

 もうここまでの時点でかなり疲れている。

 王都の冒険者は大変だなぁ。やはりギルドの建物はもっとコンパクトなほうが良いね。


「次の方どうぞ」

 やっと俺たちの順番になり、窓口へと進もうとしたその瞬間、事件が発生した。

 行列にすら並んでいなかった複数の男女が横から俺たちの前に割り込んできたのだ。10代後半と20代後半くらいと思われる若い男性が二人、10代前半にしか見えない女の子が一人、20代半ばくらいと思われる女性が一人の四人パーティーだ。

 20代後半くらいの男性は長い槍を立てて持ち歩いているのでめっちゃ目立っている(冒険者で槍を使っている人をあまり見たことが無いのだ)。


 受付嬢さんも困惑しながら苦言を呈していた。

「またあなた方ですか。列に並ぶように何度も言ってますよね?」

「Aランクパーティーが行列に並ぶなんて、そんな格好悪いことできるかよ。いいからさっさと手続きしやがれ」

 また、トラブルか…。ナナが目を輝かせているのもいつも通りだ。


「お兄ちゃんお兄ちゃん、Aランクだって!さすが王都だね。私、初めて見たよ」

 その声が聞こえたのだろう。

 受付嬢さんに暴言を吐いていた10代後半の男性が振り返って、俺たちに目を向けた。いや、視線はナナに向いているのか?

「お、可愛い子がいるじゃん。ん?二人、いや三人もいやがるぜ。一人は可愛い系じゃなく、超絶美人だけどな」

 当然ながら『超絶美人』ってのはアンナさんのことだろう。うむ、よく分かってるな。ちょっと親近感を覚えるよ。


 俺たちの後ろに並んでいる冒険者には気の毒だけど、俺はこのAランクパーティーの割り込みを黙認することにした。気が弱くて何も文句を言えないって(てい)で…。

 いや、無用なトラブルを起こしたくないのだ(あとでナナに怒られそうだけど…)。

 さっきの発言以上に俺たちに(から)んでくることも無かったしね。

 で、こいつらが窓口で手続きしている間、俺はこの高校生くらいに見える若い男性を【鑑定】してみることにした。


・名前:ゲイル・ロータス(ロータス子爵家四男)

・種族:人族

・状態:健康

・職業:冒険者(Cランク)

・スキル:

 ・鑑定        31/100

 ・耐鑑定       34/100

 ・魔法抵抗      32/100

 ・剣術        44/100

 ・徒手格闘術     38/100


 うーん、弱い…。サリーやナナでもタイマンで勝てそうだ。

 このくらいのスキルレベルでもCランクになれるんだな。

 てか、俺たちの前にいた強面(こわもて)のおじさんたちがいなくなったタイミングを見計らって割り込んできたような気もするぞ。

 まぁ俺たちって、全員が初心者っぽい服装だからな(防具は【アイテムボックス】に入れているし、俺なんてそもそも防具を持っていない)。


 次に20代後半の男性を【鑑定】してみた。


・名前:マクベス・シャインストーク(シャインストーク騎士爵家三男)

・種族:人族

・状態:健康

・職業:冒険者(Aランク)

・スキル:

 ・耐鑑定       42/100

 ・魔法抵抗      51/100

 ・剣術        76/100

 ・槍術       100/100

 ・徒手格闘術     64/100

 ・乗馬術       56/100


 おぉ、この人がAランク冒険者か。騎士崩れって感じのスキル構成だけど、槍術が達人(マスター)レベルに到達しているのがすごいな。

 なんとなくゲイル君とマクベスさんの関係性が分かっちゃったよ。

 おそらく、シャインストーク家はロータス子爵家に代々仕える騎士の家系で、貴族のボンボンが冒険者遊びをする際、子爵家当主からお目付け役を命じられたとか…、そういうことじゃないかな?(あくまでも俺の推測…)


 ついでに20代半ばの女性と10代前半の女の子も【鑑定】してみよう。

 まずは、20代半ばの女性…。

 少しキツイ顔立ちではあるが、普通の容姿の人だった(特に美人というわけではない)。


・名前:カミーラ

・種族:人族

・状態:健康

・職業:冒険者(Cランク)

・スキル:

 ・鑑定        41/100

 ・耐鑑定       53/100

 ・魔法抵抗      65/100

 ・徒手格闘術     37/100

 ----------

 ・火魔法       43/100


 火の魔術師だね。

 初級魔法を10連発可能な魔力量の持ち主だし、初級魔法なら100%、中級魔法ですら75%の確率で抵抗(レジスト)できるという防御力もある。

 なかなかのものだね(って、上から目線…)。


 最後に10代前半にしか見えない女の子だ。エイミーお嬢様やイザベラお嬢様と同じくらいの年齢に見える。

 前髪で目元が隠れているせいで顔立ちは良く分からなかったけど、ちゃんと食べてるのか心配になるくらいの小柄な体格だった。体力無さそう…。


・名前:オーレリー

・種族:人族

・状態:健康

・職業:冒険者(Fランク)

・スキル:

 ・鑑定        24/100

 ・耐鑑定       13/100

 ・魔法抵抗      17/100

 ・徒手格闘術     12/100

 ----------

 ・光魔法       36/120


 おお、【光魔法】のスキルだ。神官では珍しくないんだけど、冒険者では珍しいと思う。

 パーティーの回復役ってことだね。

 で、驚いたことに【光魔法】のスキル上限が120だったよ。将来的には伝説(レジェンダリー)と呼ばれる魔術師になれる素質を秘めているってことだ。

 この一点だけは俺よりも優れているよ(俺の【光魔法】のスキル上限は100なので…)。


 目の前のAランクパーティーが窓口での手続きを終えて立ち去るとき、この子だけが後ろに並んでいた冒険者全員に対してペコペコ頭を下げていた。

 この世界における魔術師ってのは傲岸不遜(ごうがんふそん)ってのがデフォルトらしいので、カミーラさんのツンと澄ました態度のほうが普通であり、オーレリーちゃんの態度は珍しいほうだと思う。

 でも、好感度は高いよね。


 俺が上記のステータスをこっそりとノートに書き込んでいたら、その手元を(のぞ)き込んだナナが俺の耳元で(ささや)いた。

「お兄ちゃん、私の予想では将来、オーレリーちゃんが仲間になるような気がするよ。しかもこの子って、私の勘では美少女だと思う。ますますハーレムパーティーって言われちゃうね」

 いやいや、勝手に仲間になるって前提で話を進めるな。てか、現時点ですでに『ハーレムパーティー』って呼ばれてるのか?

 それがめっちゃ気になるんだけど…。


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