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101 棒の騎士再び

 冒険者ギルドで色んな店の場所を聞いたとき、その中には【コーチング】の斡旋(あっせん)業者(というか、その店)もあった。

 んで、そこへ訪問した俺たち四人…。いや、別に俺一人だけで良いんだけど、なぜか全員ついてきたのだ。

 俺が【コーチング】してもらうつもりなのは、【棍術】のスキルと【細工】のスキルだ。せっかく十手を買ったんだからそれを使いこなしたいし、将来的に魔道具を製作できるようにもなりたいからね。


 店のドアを開けた瞬間、女性の大声が聞こえてきた。

「なぜここには【アイテムボックス】の達人(マスター)がいないのだ。いったいどこへ行けば取得できる?」

 はい、ここにいます。…などと自己申告する必要は無いので、内心ドキドキしながら何食わぬ顔で、店員さんから声をかけられるまで待つことにした。


 ところがここで、サリーがびっくりしたような顔でその女性に話しかけたのだ。

「アキ姉ちゃん!アキ姉ちゃんだよね?10年ぶりくらいだけど、私を覚えてる?サリー、いえ、サーサリアムだよ」

 その女性は俺より少し低いくらいの身長で、長い銀髪をたなびかせた驚くほど美しい女性だった。アンナさんとタメを張るくらいの美人さんです。

「え?サリーって従妹(いとこ)のサリーかい?驚いたな。10年前は子供だったというのに、随分と立派になったものだ。胸以外は…」

 サリーの胸部を見ながら男だったらセクハラで訴えられるような発言をしている美人さん(『アキ姉ちゃん』さん?)。口調が女性っぽくないというか、ぞんざいな感じだ。


「とりあえず店の中で騒ぐのは迷惑だろうから、いったん外へ出ようか」

 俺の提案に『アキ姉ちゃん』さんとパーティーメンバー全員が同意して、近くの喫茶店っぽい飲食店でお茶することになった。

「はじめまして。俺はサトルと申します。冒険者でサリーの仲間です」

「はじめましてじゃないよ。よくも私に【アイススピア】を突き刺してくれたね。騎士の戦いに魔術師が割り込んでくるんじゃないよ、まったくもう…」

 あれ?まさか…。


 俺は目の前に座る女性を【鑑定】してみた。おいおい、『棒の騎士』のアーキンアトキンセルさんじゃん。

 まじかよ…。世間は狭いな。まさかサリーの従姉(いとこ)だったとは…。

「棒の騎士さんとは気付きませんでした。その節は誠に失礼致しました」

「誰が『棒の騎士』か。変な呼び方で私のことを呼ぶんじゃないよ。でも、あんたの魔法は大したもんだ。あの距離で【アイススピア】の飛翔速度だったら余裕で()けられると思ったんだけど、気付いた瞬間には命中していたからね。あと【光魔法】で治癒してくれてありがとよ」

「えっと、アキさんとお呼びしても構いませんか?」

「ああ、良いぞ。サリーもそうだと思うが、獣人族が愛称で呼ぶことを許しているのは本当に信頼している奴にだけだからな」

 え?そうだったんだ。俺はバッツさんとサリーのことを何も考えずに愛称で呼んでいたよ。


「そう言えば、アキさんって、アインホールド伯爵様からアインホールド領の騎士団に入るよう勧誘されていませんでしたか?」

「ああ、ハウゼン領騎士団からアインホールド領騎士団に移籍することにしたぞ。伯爵はイケメンだしな」

 冗談っぽく言っているけど、本当はハウゼン領騎士団が解体されてしまうからだと思う。なんだか明るい人だ(暗い顔をされるよりは良いけどね)。

「良かったです。俺たちも伯爵様には色々とお世話になっているんですよ。なぁ、サリー」

 俺ばかりがしゃべっていたので、話をサリーにも振ってみた。


「うん、アキ姉ちゃんが伯爵様のところで働くようになったのは私も嬉しいよ。伯爵様って、私たちによく指名依頼を出してくれるし、とても良いお方だよ。あ、そうそう、アインホールド領にあるデルトの街の冒険者ギルド『デルト支部』って、マウントバッテンのおっちゃんが支部長をしているからね。仕事が休みの日なんかに、会いに行ってあげてよ。きっと喜ぶよ」

「え?バッツのおっさんが支部長だって?あの脳筋おじさんに事務仕事なんか(つと)まるのかい?」

 それについては俺も心配している。大丈夫なのだろうか?


 このあとアンナさんとナナも自己紹介して、つい先日敵対したばかりだという(わだかま)りはすっかり無くなったよ。

 それにしても、これは良い機会なんじゃなかろうか。

 俺は【棍術】のスキルを【コーチング】してもらいたいし、アキさんは【アイテムボックス】を【コーチング】してもらいたいわけだ。つまり、お互いにバーターで【コーチング】し合えば良いんじゃないかな?


「アキお姉さん。さっきの店で騒いでいたのは何でなの?」

 ナナの質問にアキさんが答えた。

「ああ、最近この街に【アイテムボックス】のスキル持ちが現れたらしい。しかも噂では【コーチング】直後って感じのスキルレベルだったそうだ。これは私も【コーチング】をお願いしようかなと思ってね。まぁ、さっきの店にはそれができる奴はいなかったみたいだけど…」

 ナナが俺と目を合わせて何か言いたげだ。うん、分かってるよ。


 サリーがアキさんに言った。

「その【アイテムボックス】のスキル持ちって私のことだよ、多分…」

「何ぃ~、どこで【コーチング】してもらった?頼む、教えてくれ!あ、それと、料金はいくらだった?1億ベルくらいか?分割払いでも大丈夫だろうか?」

 怒涛の質問ラッシュだ。サリーも困り顔になってるよ。

 ここは俺が答えてあげよう。

「アキさん、【コーチング】したのは俺です。で、一つ提案なんですが、俺がアキさんに【アイテムボックス】を教える代わりに、アキさんも俺に【棍術】を教えてもらえませんか?お互いに【コーチング】し合うことで料金についてはチャラにしましょう」

 アキさんが驚きの顔で俺を凝視しているよ。どんな表情になっても美人は、やはり美人だな。


「相場じゃ、【棍術】の【コーチング】料金なんか50万ベル程度のもんだぞ。【アイテムボックス】と同レベルで語ることなんてできるわけが無いんだが、あんたは本当にそれで良いのかい?」

「ええ、大丈夫ですよ。てか、もう【コーチング】を発動しましたから、ステータスを確認してみてください」

「な、なんというお人好しだ。欲が無いというか何というか…。ああ、確認した。本当にありがとよ。これで今までより、もっと長い棒を持ち歩けるようになるよ」

 前の戦いでは自分の身長と同じくらいの長さの棒を使っていたけど、それって持ち運びの都合上だったのか…。騎士として馬に乗る際、長い棒だと邪魔になるのだろう(多分…)。

 孫悟空の如意棒(にょいぼう)みたいに伸縮自在な棒があると良いのにね。いや、人工遺物(アーティファクト)として本当にあったりして…。


 ちなみに、もう一度アキさんを【鑑定】してみたんだけど、その結果は以下の通りだ。


・名前:アーキンアトキンセル

・種族:獣人族

・状態:健康

・職業:アインホールド伯爵家騎士団員 ←ここに注目!

・スキル:

 ・耐鑑定       41/100

 ・アイテムボックス  33/100 ←ここに注目!

 ・魔法抵抗      72/100

 ・剣術        31/100

 ・棍術       107/120

 ・徒手格闘術     43/100

 ・乗馬術       34/100


 うん、『職業』が変わっている。それに【アイテムボックス】のスキルが追加されているね。

 33立米(りゅうべい)ってことは一辺が3.2メートルの立方体だから、かなり長い棒でも収納できるはずだ。


 で、このあと俺のほうも、アキさんから【棍術】を【コーチング】してもらったよ。俺にとっては初【コーチング】だ(『する』側ではなく、初めて『される』側になったってこと)。

 だが、【コーチング】後に自分のステータスを確認した結果、俺は目を見張ることになる。それは【細工】スキルを【コーチング】してもらったあとも同様だった。


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