010 小休憩
何時間歩いただろうか?すでに森を抜けていて、左右には畑が広がっている。ただ、街はまだまだ遠そうだ。
人間はともかくとして、馬を休ませるためにもこの辺で休憩をとるみたいだな。街道の脇に少し広い空き地になったところがあって、公衆トイレみたいな建物もあった。
2メートル四方くらいの大きさの木のテーブルと、ベンチのような椅子もあった。雨ざらしなやつだけど…。
見晴らしは良いので、もしも追加の襲撃者がやってきたとしてもすぐに発見できるだろう。
「ツキオカ様、こちらでご一緒にお茶でもいかがでしょうか?」
エイミーお嬢様がテーブルのほうから俺を呼んでいた。俺としても歩き詰めで少し座りたかったので、遠慮なくお誘いを受けることにした。
「少しぬるくなっていますが、冷たいお茶をどうぞ」
侍女のアンナさんが差し出した木のコップを受け取り、口を付けてみると確かに常温だ。『冷たい』お茶ではないな。
ちなみに緑茶や烏龍茶ではなく、紅茶だった。今入れたのではなく、できたものを水筒かなんかに詰めてきたのだろう。
てか、ぬるい…。何か良い魔法はないだろうか?
俺は『水魔法』の項目を選択し、使えそうな魔法が無いか確認してみた。
〇【ウォーターストリーム】
〇【ウォーターカッター】
----------
〇【クラッシュアイス】
〇【アイススピア】
ああ、【ウォーターカッター】と【アイススピア】がおそらく攻撃魔法だな。
【ウォーターストリーム】は水を出すだけだろう。てか、馬たちに水を飲ませてやらなくて良いのかな?…って思っていたら、すでにアンナさんが大量の水を魔法で生成して、馬車の後ろに積んでいた飼葉桶に入れて馬に与えていたよ。
思わずアンナさんを【鑑定】してしまった。
・名前:アンナ・シュバルツ(シュバルツ男爵家三女)
・種族:人族
・状態:健康
・職業:アインホールド伯爵家侍女
・スキル:
・鑑定 55/100
・耐鑑定 41/100
・魔法抵抗 33/100
・徒手格闘術 62/100
----------
・火魔法 35/100
・水魔法 39/100
格闘の数値がかなり高いじゃん。なるほど、エイミーお嬢様の護衛も兼任ってことか。
まぁ、そんなことより使えそうな魔法として【クラッシュアイス】ってのがあったよ。細かく砕かれた氷ってことで良いのかな?
とりあえず出る量が分からないので、直接コップに入れるのはやめておこう。で、鍋のような入れ物があるかアンナさんに聞いて、それを借りたよ。
【クラッシュアイス】を発動して照準を鍋に合わせると、一瞬で鍋一杯にあふれるくらいの氷が出現した。しかも良い感じに細かい粒になっている。
木のスプーンを借りて一掬いの氷をコップに入れると、良い具合に冷たいお茶が出来上がった。うん、少し薄くなってしまったが、冷たくって美味い。
エイミーお嬢様が目を輝かせて聞いてきた。
「ツキオカ様、私にも少し氷を分けていただけないかしら?」
「もちろんどうぞ。侍女さんや騎士の皆さんもよろしければどうぞ」
アンナさんが申し訳なさそうにしながら言った。
「お嬢様、私の水魔法のスキルレベルが低いため、氷を生成することができず申し訳ありません」
「いえ、アンナの水魔法にはいつも助けられているわ。私には魔法が使えないから、火と水の魔法が使えるだけでも尊敬しているのよ」
エイミーお嬢様がアンナさんを慰めていた。まじで良いご主人様だな。




