表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
半天の貴方に  作者: 小説家にならない
6/7

第5話

感情移入出来ない?気合いでなんとかしろよ。

深夜4時頃、コウタは急に目が覚めた。たまにあるアレだ。急に目が覚めたものの、なかなか寝付けない。これもたまにあるヤツだ。折角の休日に朝からゲームというのもアレなので、コウタは少し、夜明けの町を散歩することにした。


外に出てみると、そこには、普段見えない町の顔があった。朝が苦手なコウタは、とてもテンションが上がった。いつもは人通りが多く常に騒がしい、この道も、今は誰もいない。どうしてこんなにもテンションが上がるのだろうか。そう思いながらコウタは小一時間ほど歩き、いつも行く公園で一息ついていた。この公園も今は、「いつもの」公園ではない。いつもは人が多いが、今見えるものといえば、酔いつぶれたおっさんがベンチに座っているくらいだ。朝散歩も中々良いなぁ~

、と思っていると、


「おにーさん」


と声をかけられた。可愛らしい声に振り返ると、1人の女性が立っていた。年はカナタと同じくらいだろうか。女性と言うより少女っぽい雰囲気、そして、なんと言ってもめっちゃ美少女だった。

タイプでは無いけど。

「おにーさんなにしてるの?」

「え、あーえっと、散歩っす。」

「ふーん、散歩ねぇ。こんな時間に?いつもは見たこと無いのに。」

「ま、まぁ目が覚めたものだからちょっと気晴らしにと思って...」


この人は一体何が言いたいのだろうか。


「アタシ早起きだから、毎日この時間になると散歩しに来るんだよね。ほんで毎朝この公園に休みにくんの。」


へぇ


「おにーさん、正直に言っちゃいなよ。ほんとはアタシに会いに来たんでしょ?」


は?


なんだろう、こういう人ってホントにいるんだなって思った。女嫌いとか関係なく嫌いだ。確かに自分の可愛さを完全に理解し、使いこなしている。だから嫌い。俺ってそんなチョロそうなヤツに見えるのかな...俺も1人の男、きっぱりと断ろう。


「いや違います。ただ散歩しににただけです。」

「ふーん...」


彼女は動揺するどころか、少しニヤついているように見えた。


「あ、そう。ならいいわ。じゃ、これ」


そういって渡されたのは、1枚の紙切れ。これはこの人の電話番号だろうか。数字が羅列していた。


「それ、アタシの電話番号だから。また気になったら電話してきて。じゃあね」


彼女は颯爽と去っていた


帰り道、コウタは、こりゃモテ期の到来かな?などと思ってニヤニヤしていた。小学生の通学時間帯と重なっていたら、おそらく通報されていただろう。家に着くと疲れていたのか、意外とすぐに眠りに付けた。


目が覚めると、午前11時だった。やべ寝過ぎたかな、と思いながら服に着替える。そんなことをしていると、スマホが鳴った。


「もしもし?」

「よぉコウタ、久しぶり。」

「たっくん!」


電話の相手は、高校の時の仲良し四人組の1人、緑川タクミだった。彼も東京に住んでいるが、コウタの家からはかなり遠い。


「どしたん?」

「いやさ、なんか前に、全然知らないおじさんにお前のこと聞かれてさ、お前がなんかやらかしたのかと思ってさ。」

「いや、多分俺なんもしてない。」

「あ、そう?だったらいいんだけど。あ、そうそうお前彼女出来たんだって?アスカから聞いたよ。」

「いや~聞かれちゃいましたかァ~実は俺もついに彼女デビューしました~!」

「ふーん...」


コウタのテンションとは裏腹に、タクミは少し声のトーンが下がっていた。


「え、なんでテンション下がってんの?」

「お前大丈夫なん?高校から、女付き合い苦手だったじゃん。」

「大丈夫!何とか克服したみたい。あれ?高校からだっけ?てっきり俺昔からだと思ってたけど。」

「やっぱお前、忘れてんだな...」

「え?なんて?」

「いやなんでもない。お前が幸せなら俺も掘り返すつもりもない。また進展あったら教えてくれよな。」

「お、おう」

「あ、そういやさ。たっくんと俺らって仲良し四人組だったじゃん。あっくんと俺らとあと誰だっけ?」

「いやお前、それは~...アイツだろ?....やべ覚えてねえかも。」

「お前も?あっくんも覚えてなかったんだよね、また今日卒アル見てみるわ。」

「俺も見るわ。」

「OKありがと。」

「おう」


なんだかモヤモヤする電話だった。

一体たっくんは何を心配していたんだろう。俺の女嫌いって昔からじゃなかったか?そもそもなんで俺が覚えてないんだ?かといってたっくんが言う高校からっていうのも、なんの違和感もなく聞こえてしまった。思い出そうとしても何も出てこない。あと4人目が誰も思い出せないのは何故だ?俺も卒アル見てみよ。そう思い、棚に手を伸ばしたとき、チャイムが鳴った。


「はーい」


ドアを開けるとカナタがいた。


「しょうね...コ、コウタ君...」

「あ、カナタちゃんどしたの?」

「今、ここの前通ったから、それで私達連絡先知らないでしょ?交換しといた方がいいと思って...」

「OK、スマホ取ってくるわ。」

「あ、あともう1つ大切な用事があって...」

「ん?何?」

「こ、今度さ。一緒に遊園地とか行かない?」


まさかの誘いだった。マリさんに何か教えてもらったのだろうか。口調も大分変わっている。そんなことはどうでもいい。どうであれコウタの返事の選択肢は


「是非!!!」


のみだった。

結局その日、コウタは卒アルを見るのを忘れた。







「もしもし?タクミ?」

「おう、アスカか?今日コウタと電話したんだけどさ」

「どうだった?」

「やっぱり忘れてる。」

「やっぱりか」

「まぁ忘れてるなら掘り返すつもりもないんだけどな。」

「まぁな。」

「でもホントに忘れられるもんなのかな。心に封じ込めるとか、そんなこと完全に出来るわけないと思うんだが。」

「それはコウタにしかわかんねぇよ。俺たちは見守ることしか出来ん。」

「まぁそうだな。あ、そうそう。俺たちって仲の良い四人組だったじゃん。そのことなんだけど..」

「あと1人がわかんねぇんだろ?」

「よく分かったな。」

「俺とコウタもその話題になったんだわ。ちょうど今卒アル見てるとこ。」

「どう?」

「それが...全然分からねぇんだわ。」

「そんなことある?俺にも写真送ってくれよ。卒アル探すのめんどいし。」

「おう。」

「んー...やべぇ全然わかんねぇ。」

「だろ?」

「そんなことあるかなぁ。もう年かも」

「何いってんだよ。俺らまだ25だぞ。」

「いやでもフツーありえんて。」

「第三者の手によって記憶を消されたとか!?」

「確かにありえる。なわけねぇだろSFかよ。」

「だよなぁ..うっわコイツの名前懐かし」

「変わった読みしてるよなぁ。たまに学年に数人いるヤツ。」

「それな。この子の名字なんて読むんだろ。」

「だれだれ?」

「ほら~この右から4番目の女の子。」

「うわ~珍しい名字してんなぁ...そもそもこんな子いたっけ?」

「全然覚えてねぇ笑」

「やっぱ俺たち年なのかなぁ...」









後ろから足音がついてくる。怖い。最近世間を騒がせている通り魔だったらどうしよう。そう思った束の間、息使いが聞こえるほどにまで距離を詰められていた。あまりの恐怖に走り出す。すると追うように、後ろの足音も走りだす。ヤバイ。

もうすぐ追い付かれる。そう思ったとき、誰かがその足音を吹き飛ばした。


「逃げて!!」


その声を聞いて、少女は走りだし、その場にはシーナと、1人の男だけが残った。


「お嬢ちゃん、なんで邪魔するの?」


彼の目に怒りの炎が宿る。手元の刃物がギラリと光る。


「お前みたいなヤツがいるから、ヤツらがいなくなんないのよ。」

「はぁ?何ぶつぶつ言ってるの?殺すよ?」

「何も言ってなくてもどうせ殺すでしょ。それに殺されるのはお前の方だ。」

「は?」


カナタが腕を伸ばす。その瞬間男の体が宙を待った。鈍い音を立てて、男が落ちる。血が流れ出るのを横目にカナタは去った。


「カナタ!!」

「サツキ...」

「あんた、またやったんでしょう?」

「大丈夫、浄化はしといたし、殺してもいない。」

「そういう問題じゃないの。あなたがそうやって大胆に動けば動くほど、あなたも危険に晒されるのよ?」

「何を保護者面してんだよ。私の面倒は私が見る。どうせ一回死んでんだ。もう失うものは何もねぇよ。」

「ほんとかしら?あなたコウタ君に何か思い入れがあるんじゃないの?」

「...」

「だんまりってわけね。いいわ。今日は許してあげる。でも次はないわよ?それと、コウタ君のこと、早めに決断なさい。彼が向こう側についたら、おそらく私達に勝ち目はないわ。」

「ああ...」

「あと、あんた、記憶は消したの?」

「あ、忘れてた。」

「もう、そういうところよ。後は私が処理しておくから。もう金輪際やるんじゃないわよ。」

「うっ、わかったよ。」

「あと、冷蔵庫に色々入っているから。自分で温めて食べなさい。もう皆食べたんだからね。」

「あ、ああ。」


サツキってやっぱ私のお母さんなのかな?そんなことを思いつつ、カナタは帰路についたのだった。




特になし

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ