第3話
もう書くことないわ
次の日、コウタは朝から仕事に出ていた。朝はピシッとしていたスーツも、日が沈むにつれて、よれていき、朝はピシッとしていた瞼も、日が沈むにつれて、重くなっていく。そうして仕事が終わり、ヘトヘトになりながら帰路につくと、彼女がいた。
「やぁ少年、かなり疲れているようにみえるぞ。」
「あ、こんばんは。あれ、なんで俺の帰り道知ってんすか?」
「フフフ、私は何でもお見通しなのさ。」
え、ちょっと怖い
「それはそうと、少し付き合ってほしいことがあるんだが、空いている日はないかい?」
「そうっすね~...今週の土曜なら暇かな~..」
「そうか、ならまた土曜に伺おう。そういや少年、まだ名を明かしていなかったな。私の名前はカナタだ。どうだ?珍しい名前だろう?」
「へぇ~、あ、俺は清白...」
「コウタ、だろう?」
「え、なんで俺の名前知ってんすか?」
「フフフ、私はなんでもお見通しなのさ。」
え、結構怖い
「それじゃまた土曜日に伺うとしよう。今日はゆっくり休んで明日の仕事に備えるんだぞ。」
「あ、ハイ」
色々怖かったが初めての彼女だし、考えるのは止めることにした。
土曜日コウタは気づいてしまった。
これって...で、でぇとって言うヤツでは!?と
そんなことを思ってるとチャイムが鳴った。
ワクワクとドキドキで語気も強まる。
「ごめーん!待ったァ!!!!?」
宅配便かよ
顔を真っ赤にしながら宅配物を確認していると、またチャイムが鳴った。ドアスコープを確認。
間違いなく彼女である。語気を強めるのはなんかもう嫌なので、落ち着いて挨拶する。
「あ、こんにちはー」
「やぁ少年!昨晩はゆっくり休めたか?」
「あハイ」
お母さん並みに気を遣ってくれる彼女に、多少動揺しながら家を出たコウタ。
「今日はどこ行くんすか?」
「む、もっと気楽に話せ。私たちはカップルというヤツなんだぞ。」
「はあ。あ、それじゃこれはやっぱりデー...」
と言おうとしたが、なぜか止まってしまった。
相手がそんなこと思ってなかったりしたら少し気まずくなる、と考えてしまった。コウタは何故か昔から女性付き合いが苦手なのだ。
「ん?何か言ったか?」
「い、いや何も..」
「ふむ、そうか。今日は、君に教えてほしいことがあるんだ。」
「はぁ」
「少年、私に 「女子力」 というのを教えてくれないか?」
「え?」
無論、無理である。
女子力とか知らんし、あなたが初彼女なんだもの
しかし、ここでコウタはまたもや見栄を張ってしまう。
「お、おう!教えてあげるよ!」
コウタは、いつジャンピング土下座しようかなぁ
と考えつつ、このデート..いや外出の不安なスタートを切るのだった。
サイレンが響く。
周りに集まった野次馬達が噂をしている。
「また例の変死体が発見されたんですって。」
「また~?最近やけに物騒ね。怖いわ~うちの子も、この辺通って学校行くし、しばらく車で送ってあげようかしら。」
そんな野次馬達を横目に、ボロボロの服をきた男が、歩き去っていく。
「次は...コイツだな...」
その男は写真を見て、静かに呟き、その場を去った。