ピアノレッスン
投稿遅くなってすみません
「ごめん!パパ、オーストラリアの演奏会に急に呼ばれちゃって」
有希の父は電話でそう言った。
「代わりにパパの教え子が先生してくれるから!!」
とのことで俺たちは近くでピアノ教室をやっている、内村真那さんの家に伺うことになった。
「いらっしゃい、2人とも」
「「こんにちは」」
とても綺麗なお姉さんだった。
「みか先輩もお久しぶりです」
「久しぶりねー!今度ゆっくりご飯でも行こ!」
「今日は先生の娘さんと幼なじみの男の子のレッスンってことでいいんですよね?」
「急でごめんねっ、よろしくっ」
「2人ともよろしくね!まな先生って呼んでね!」
「「よろしくお願いします!まなせんせいっ」」
「早速レッスン始めましょう。まずは2人ともピアノ触ってみて」
ポンッ
俺が触れた鍵盤からは軽い音が鳴った。
今までさんざん聞いてきた音を自分が出せたことに大きな驚きと感動が襲ってきた。
ポポポンッ
有希も楽しそうにピアノを触っている。
「これがピアノの音です。それじゃあ先生が1曲弾いて見ましょう」
先生がゆっくりと椅子に腰掛けた瞬間、部屋が静寂に包まれた。
直後、ピアノの音色が聞こえ始める。
知っている。
ベートーヴェンの「月光」だ。
繊細な演奏が終わった。
「ありがとうございます」
はっとした俺は拍手をしながら涙を流していることに気がついた。
いつもテレビやCD越しで聞くのとは全く異なり、感動なのか興奮なのか分からない状況だった。
ふと横を見ると満面の笑みを浮かべた有希が拍手していた。
「初めて聞いた!!有希も弾くっ!!」
そう言って有希は先生を椅子から引きずり下ろし、トンっと座った。
「フゥウー」
軽く息を吐いて有希は目を閉じてピアノに触れ始めた。
そして
有希が弾き始めたのは
ベートーヴェンの「月光」だった。