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死、そして星は光りぬ


明るくなってきて目が覚めた。


昨日の話を聞いて、雅人の様子を探りたくなったが、結局俺が学校に行くことはなかった。




次の日、また次の日と学校に行くことができなかった。







そして家での引きこもりも1週間が過ぎた。

この間、ピアノの音が聞こえた日はなかった。




「ピロリンリンレレレレ レーレッレイ」


俺のスマホから『魔笛』の『私は鳥刺し」が流れた。


スマホには『今田さん』の名前が。



「はい、もしもし」


「佐々木くん、大変だ!ゆきさんが亡くなった!」


ガシャンッ!!


俺はスマホを地面に落とした。

画面の割れたスマホからは今田さんの声が聞こえている。


「おい!大丈夫か!?」


もう何も返事をする気になれなかった。




そしてそのまま意識が飛んだ。












電話の直後にメールが来ていた。

『雅人のやつだ。今証拠を探している。危険だから家から出ないように。』




「絶対証拠を見つけて殺してやる!」







深夜2時、何の手がかりもないのに、無鉄砲で雅人の家に忍び込んだ。


途中で買ったバールだけを手に。




雅人の家は近所でも有名な豪邸だった。


しかし意外にも警備は薄く、敷地内にはすぐに忍び込むことがきでたのだった。


トイレらしき場所の曇りガラス割った瞬間。


「ビィィィィィィィィィィィ!!!」


ものすごい音で警報が鳴り響いた。


俺はハッとして自分のしていることに気がついた。


俺がやっているのは犯罪。

アイツと変わらないじゃないか。






一目散に庭に飛び出した。


全速力で門に向かう。










「おいおいストーカーの次は強盗かー?w」


後ろから聞き覚えのある声がして腕を掴まれた。

こいつが誰か分かるまで、1秒もかからなかった。

瞬間、俺は冷静さを失った。


「お、おまえ、のせいでっ、ゆきは!!!!」


「何言ってるんだー?証拠あんのかー?w」


「お前がっ!」


「お前の探してるものは地下室にあって、オヤジ意外誰も入れないんだぞ〜w」


「っぐ」


「なんせそこには麻薬の取引の資料もあるからな〜w」


「殺して、やるっ!」


「無理だよwお前もうここで死ぬもんw」


「えっ」





ガンッ



背後から鈍い音がした。



「余計な首を突っ込まなければ死ぬことはなかったのに」


 そう言いながらやつは不敵な笑みを浮かべていた。


 後頭部から流れる血を感じながら俺は意識を手放した。




薄れゆく記憶の端で、『トスカ』の『星は光りぬ』

が聴こえた気がした。



────────────────────────


《E lucevan le stelle 星は光りぬ》


E lucevan le stelle


ed olezzava la terra,


stridea l'uscio dell'orto,


e un passo sfiorava la rena,


entrava ella, fragrante,


mi cadea fra le braccia.


Oh! dolci baci, o languide carezze,


mentr'io fremente le belle


forme disciogliea dai veli!


Svanì per sempre


il sogno mio d'amore.


L'ora é fuggita, e muoio disperato,


e non ho amato mai tanto la vita !




[日本語訳]

輝く星々 香る大地


きしむ庭の戸


砂を踏む足音


現れた彼女は


花のごとく香り


私の腕の中へ


ああ 甘い口づけ


とめどない愛撫


僕は震えながら


まぶしい女体を露わにしていく


永遠に消え去った僕の愛の夢


時は過ぎ 絶望の中で僕は死んでいく


これほど命を惜しんだことはない



────────────────────────



『星は光りぬ』はオペラ『トスカ』で歌われている曲で、画家であるカヴァラドッシが死の間際に最愛の恋人に向けて贈った歌です。


とにかくかっこいい曲なのでぜひ聞いてみてください。

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