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第43話「LINE」

 

 飴宮さんに会うことなく学校が終わった。俺は帰りの電車に揺られていた。この時間帯には他校の生徒や暇そうな大学生やおばさんがいたりするが、そもそもの乗車率は低いので席に座るのは容易い。


「……」


 ゲームでもしようとスマホのスリープを解除する。ちなみに重度のスマホ依存症の俺は学校内では滅多にスマホは触らない。一見矛盾しているように見えるが、重度のスマホ依存症ゆえに、万が一没収でもされて一晩でもスマホを使えない日があれば、たちまち発狂死する自信があるからだ。


 公式アカウントからの通知をさばくべくLINEを開く。既読既読……と画面をスライドさせていくと、見慣れないアイコンがひとつ――送信者は飴宮さんだった。今まで1回も使ったことがなかったからすっかり忘れていたが、俺は前に飴宮さんと連絡先を交換していたのだ。


 アイコンの写真の飴宮さんは、シロノワールの後ろで控えめにピースをしていた。いつぞや逸部が撮った1枚。それはさておき俺はトークルームを開いた。


[今朝はご迷惑をおかけしました]


[すみません]


 飴宮さんからのメッセージはこの簡素な2文だけだった。送信されたのは昼休みの時間帯。その時間にはもう帰ってたのか、それとも昼休みなら俺が着信に気づくと思ったのか。別にどっちでもいいけど。


【迷惑掛けられた覚えはないけど、ティッシュは返して】


 どこまで真剣になれば良いのか分からなかったから、俺は適当に惚けた返信をした。ゲームでもしようとLINEを閉じようとしたら、今送った吹き出しに既読の文字が付いた。偶然にも、飴宮さんも今スマホを見ているらしい。


[!]


[すっかり忘れてました…]


[明日2倍にして返します]


 立て続けに3通送られてくる。2倍にして返す、は彼女なりのギャグなのだろうか。特段面白い訳でもないが、ふっと顔がほころんでしまう。向かいの席の女子中学生がドン引きしているが、何かあったのだろうか。変質者でも出たのかな。


【そんなに要らん】


 返信すると、すぐ既読が付いた。あまりにもリアクションが早いもんだから、飴宮さんと実際に会話しているような感覚になってくる。


[すみませんでした]


[昔のことを思い出して、心が不安定になってしまいました]


[でも、だからって、配慮してほしいとか、腫れ物に触るように扱われたい訳ではなくてですね、今まで通りの自然体で接してくれると、とても有り難いのです]


 自然体で接するように心掛けてる時点でそれはもう自然体ではないのでは……と一瞬思ったが、それを言うのは野暮ってもんだろう。


【分かってるよ】


 シンプルに書いて送信すると、既読が付いて返信が送られてきた。


[ありがとうございます]


[では明日、学校で]


 明日……ね。


【(- _-)/"】


 俺はLINEを閉じた。飴宮さんの過去について詮索はしない。俺から聞くようなこともしない。腫れ物のように扱って馴れ合いみたいにもしない。そして、いつか打ち明けてくれたら全て受け止める。きっと、それが俺の取るべき行動だ。


[孤羽くん、顔文字なんか使うんですね笑]


 ゲームアプリを開いてロードしていると、返信が送られてきた。やかましいわ。


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