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第12話「休み時間」

 

 休み時間や自由時間ほど、ぼっちが手持ち無沙汰になる時間はないだろう。遠足や体育祭などの学校行事然り水泳の授業然り。そういった時間は友達と楽しく過ごすことを想定して作られているので、ぼっちが手持ち無沙汰になるのはもはや自明の理。大体人目のつかないところでボーッと人間観察してる。


「……」


 退屈な休み時間。この時間いらねえからさっさと家に帰りたい。そう毒づきつつ、俺はラノベのページをはらりとる。何かしながら別のことを考えるのは昔からの癖だ。話し相手のいないぼっちは一般人より思考する時間が長い。それゆえデュアルタスク能力が無意識のうちに養成されているのではないだろうか。いや本読みながら別のこと考える能力なんていらねえ。


 ぼっちにとって本は必需品だ。一冊あれば何時間でも時間を潰せるし、何より教養が深まる。まぁラノベで深まる教養なんてたかが知れているから、本気で教養を深めたいなら、飴宮さんのように文豪と呼ばれる人々の作品を読むべきだろう。


「……」


 今日も、隣の席の飴宮さんは机に広げた本に視線を落としている。タイトルは夏目漱石の「門」だった気がする。夏目漱石にわかの俺は「坊ちゃん」と「わが猫」、「こころ」しか知らないぜ……。


 俺がずっと見ているのに気づかないほど、飴宮さんは読書に夢中だ。ゾーン入ってるな、これは。周りの世界完全に遮断してるな。


 ボーっと横目で観察していると、無防備に垂れた長い前髪が風に揺れ、優しそうな瞳がチラッと一瞬だけ覗いた。なんだか見てはいけないものを見たような気がして、俺は思わず目を逸らしてしまう。読書に集中してこちらに気づいていないのは幸いだった。


「……」


 飴宮さんが気づかないのをいいことに、俺は再び彼女の横顔を眺める。と、何かに勘づいた飴宮さんはこっちを振り向いた。ドキリと心臓が強く鼓動する。


「……」


 俺は咄嗟に視線を逸らす。


「……」


 飴宮さんは軽く首を傾げて読書を再開した。はやる鼓動を全身で感じながら、俺は密かに息を吐いた。


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