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1曲目:二年二組

 もし、私が大人だったら。

 もし、私があなたの『生徒』じゃなかったら。

 あなたは、私を見てくれますか?

 あなたと恋人同士になることだって、出来るのかな。

 そんなこと思ったって仕方ないってことくらい、分かっているけど……。

 考えてしまうよ、どうしても。

 たとえ中学生の幼い恋心でも、私は本気です。

  『あなたが好き』その事実だけは、いつまでも変わらない自信がある。

 ねぇ、先生?私はあなたの目に、どういう風に映ってる?

 

 

「うっわ〜ドキドキする〜」

 桜舞い散る四月、私は今日から中学二年生になる。クラス替えがあって、もちろん担任の先生も変わる。各教科の先生だって変わってしまう。今日この一瞬で、私の大事な一年間がどうなるかが決まってしまう。緊張しないわけがない……。

「何組になるかなぁ」

 少し弾んだ声で秋乃(あきの)がにやりと笑うと、

「ま、また一組な気がするっ!」 

 と真希(まき)が不安そうに笑う。

 一年生のころから仲の良い二人。たまにはケンカもするけど、ケンカするほど仲が良いとは上手いこといったもので、クラスは違っても親友なのに変わりはない。

「クラスメイトも重要だけど、やっぱり担任も気になるね」

 私がそうつぶやくと、真希も激しくうなずいた。

「うんうんうん!真希は去年の担任最悪だったもん……。今年は絶対良い先生がいいっ!」

 真希の去年の担任は、よく言えば落ち着いている。悪く言えば、何事にも無頓着な先生だった。私も数学を教えてもらっていたけれど……数学が嫌いなのもあってあまりいい印象はない。いや、むしろ数学の先生ってだけで、嫌いだったのかも。

「ごちゃごちゃ言っても、もう目の前にクラス発表の紙が〜」

 秋乃はスキップ気味でクラス発表の紙の前に歩いていく。

「わ、私たちも行こうか」

 私がそう促すと、真希も覚悟を決めたように歩き出した。

 

「いい先生が担任でありますようにっ」

 そうつぶやきながら自分の名前を探す。

「あ、真希の名前発見」

 一組の紙に真希の名前を発見したけれど、真希はどうやら九組から見ることにしたらしく、向こうの方にいる。周りでは自分のクラスとクラスメイト、担任を知った生徒が声をあげていた。

「真希の担任は……なべちゃんかぁ」

 渡辺(わたなべ)先生、男、社会科担当。通称なべちゃん。生徒からは人気の高い先生で、面白いらしい。去年も私たちの学年の先生だったけど、私の社会科担当の先生は違う先生だったから、どんな先生かはあまりよく分からない。多分、真希も秋乃も担当じゃなかったはず……。

「真希ーっ!名前あったよ、一組!」

 自分で見つける方がいいかと思ったけど、九組から見始めて一組だった時の真希の反応を考えて、呼ぶことにした。

「やっぱり一組〜?担任誰〜っ?」

 どうしてそんなに一組なのが嫌なのかは分からないけど、がっくりと肩を落としながら聞く真希に教える。

「なべちゃん!後、また皐月(さつき)理沙(りさ)と同じクラスみたい」

 去年真希がクラスで一緒にいた皐月と理沙の名前を聞いて、真希のテンションが上がった。

「マヂでっ!?やった〜!よかった……」

 真希はほっとした顔で笑っているけど、まだ私の名前は見つかっていない。

「私の名前も探してくるね」

 喜ぶ真希にそう言い残すと、次のクラスの紙を見る。

『二組 担任:坂本(さかもと) (ゆう)

 あ、このクラスいいなぁ。坂本先生好き。

 そんなことを考えながらどんどんと下の方に目が移っていく。

『30番 松本(まつもと) 奈々(なな)

 31番 三谷(みつたに) 卓也(たくや)

 32番 (みなもと)  加夜(かよ)

「あ、あった……」

 私は今日から二年二組三十二番源加夜です――。

 

「加夜!もしかして同じクラス?」

 小学校のときに同じクラスだったことのある結城(ゆうき)紗知(さち)が明るい声で聞いてきた。

「紗知も二組っ!?よかったぁ!」

 一匹狼の紗知とは同じグループにこそいなかったけれど、さばさばした性格が好きな友達の一人。顔は何度か見たことがあっても、あまり話したことのない子ばかりで緊張していた心が、紗知のおかげでようやく解きほぐされた。

「あたしも加夜と同じクラスでよかった。苦手な子ばっかりでさ……」

 私からするとそうでもないけど……紗知は本当にさばさばしているから、常に皆で連れ立っていたりするいかにも『女の子!』といった子が苦手だから、大体の子は苦手なのだろう。

 確かにこのクラスにはそういったタイプの子が多いかもしれないなぁ……。

「別に大丈夫だって。紗知がさばさばしすぎだと思いまーす」

 一組だと分かったときの真希のように肩を落とす紗知を励ますと、紗知持ち前のプラス思考が威力を発揮したらしい。決意したように握りこぶしをつくると、にっこりと笑った。

「あたし、坂本先生好きだし、なにより加夜が同じクラスだし。頑張ってみるわ」

 加夜の決意に満ちた顔は何だかとても可愛くて。

「紗知は可愛いなぁ。ま、頑張って」

 と横目で紗知を見ると、紗知は少し得意げな顔をして、さっきよりもさらににっこり笑うと、自分の席に戻っていった。


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