表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

47/107

第四十六話 五の月の始まり

「入学からちょうど一か月が経ちました。今のA組はこの二十八名ということになりました。今年は優秀な生徒さんが多くてよかったです。入学人数の少なさがあり、先生はちょっとヒヤヒヤしていたのですが……」




 一ヵ月間にも及ぶ最初の課題が終わり、五の月の初日である今日。

 教室には、久しぶりにA組の全員が揃っていた……あれ?


「そのままシルビア先生の発言を信じるのは愚かね。もしくはちょっと間抜け? アーノルド君もそう思うでしょう?」


「クラスの三分の一くらい、B組とC組の人たちですよね?」


「さすがはアーノルド君。わかっていたか」


「そのくらいは……」

 

 アンナさんのお眼鏡にかなってよかった。

 四の月の初日、A組の生徒数は二十三名だった。

 それが今は、二十八名に増えている。

 さらに、元からいるAクラスの生徒は、およそ三分の二にまで減っていた。

 つまり、A組からB組、C組に脱落した生徒たちもいるというわけだ。


「クラス替えがない理由はこれってわけ」


 なるほど、定期的に成績順でクラスの入れ替えがあるのか。

 いくら入学試験で成績がよくても、この一か月の課題でいい成績を出せず、B組やC組に脱落していく者たちがいる。

 逆に、最初はB組・C組でも、努力次第で上のクラスに上がれる。

 新しいA組の三分の一が、B組・C組からの成り上がり組と考えると、この学校は厳しいところもあるが、ちゃんと努力をして結果を出した人を評価するというわけだ。


「各クラスに定員はないからね」


「そういえば、増えていますよね」


「相対評価じゃなく、絶対評価なのよ」


 今回の課題でいえば、傷薬(小)の錬金成功率が五割を超えれば、全員がA組に入れるということらしい。

 そしてこれからも、定期的にクラスの入れ替え試験・課題があるのだと、アンナさんが教えてくれた。


「一年生は、入学直後の傷薬(小)の課題。あとは、七の月の終わりにある前期期末試験。次に、二の月の終わりにある後期期末試験でクラスの入れ替えがあるわ。二年生以降は、前後期の期末試験の二回だけだけど」


 その他にも、なにか著しい成果を上げた者。

 新しい錬金レシピを開発したとからしいけど、例外でクラスの移動はあるそうだ。

 滅多にない事例であり、もしあっても大半の特例者は元々A組の人間で、クラスの変更はなかったというオチがつくらしいけど。


「アンナさん、詳しいですね」


 アンナさんが教えてくれた情報だが、今シルビア先生が同じ内容を説明しているからな。

 どうやって知ったのか気になるところだ。


「女性には、色々と秘密があるのよ」


「ローザもですか?」


「女性は全員が例外なくよ」


 確かに、裕子姉ちゃんには秘密が多いよな。

 俺もだけど。


「(それにしても、アンナさんが積極的に話しかけてくるなんて。もしかしたら来ちゃったのかな?)」


 なにが来たのかといえば、それは俺のモテ期だ。

 元々俺は、将来恋愛シミュレーションゲームに出てくるイケメンなので、いつかこの時が来ると思っていたのだ。

 見た目ばかりで中身がアレだとモテなさそうなので、ちゃんと勉学から、貴族としてのマナー、錬金、鍛錬もちゃんとこなしている。

 この世界は遊びも少なく暇なので、余計に頑張った面も否定しないけど。

 それでも、見た目も中身もイケメンな俺なので、きっと在学中は綺麗どころに囲まれてリア充ハーレムライフを送れるはず。


「(楽しみだなぁ)」


 などと思っている間に、シルビア先生の学校生活に必要な基礎情報の伝達が終わり、次の講義までの休み時間になった。

 きっと、俺に多くの女子たちが声をかけてくるはずだ。


 そのはずだったんだけど……。


「シリル君、私、頑張って同じクラスに上がってきたから」


「今度一緒に、素材を採りに行こう」


「私も!」


「今度、シリル君の家に遊びに行ってもいいかな?」


「……」


 なぜかこのクラスの女子たちは、誰もかれもシリルにばかり声をかけていた。

 俺の席が女子に囲まれることもなく、シリルばかり女子にモテモテなんて……。


「(こんな理不尽なこと。許されるわけがない!)」


「(許されるんじゃないかな?)」


 唯一、俺の隣の席になった裕子姉ちゃんのみが俺の傍にいた。

 いや、俺が求めているのは、他のもっと育った美少女たちなんだ!


「(あんたねぇ……自分の見た目について考えが及ばないの? 今のアーノルドは十歳なのよ)」


「(そうだった!)」


 そういえば、今の俺は十歳になったばかりの子供だった。

 そうでなくても錬金学校の入学年齢は高く、十五歳のシリルでも相当若い方なのだ。

 アンナさんとエステルさんは十八歳で、彼女たちよりも年齢が高い女子生徒も多かった。


「(十歳の弘樹に興味持つような女性たちに囲まれて、本当に嬉しいの?)」


「(いえ……暫くは錬金に没頭します)」


 かといって、リルルのような年齢の女の子にも興味を持てず……それでも俺よりも二つ上なのだが……俺は暫く錬金に没頭することを決意するのであった。


 一応、裕子姉ちゃんが婚約者だからってのもあるのか。

 いや、きっと学生時代中に甘酸っぱい初恋イベントとかあるはずだ!

 とにかくそれを見逃さないようにしないと!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] バカ野郎ッ! おねショタを楽しめるのは……今だけなんだぞッ!! ていう冗談はさておき、裕子姉が悪役令嬢なんだから主人公クラスじゃないと近寄れないオーラでも出てんじゃね? そらモブな女子では…
[一言] 十歳に懸想するなら重度のショタコンか純粋な金目当てだな。
[良い点] シリルさん、モテモテっすね! [一言] よっぽど気合の入った妾狙いでもない限りは近づく事も出来ないんじゃないかな? だって公爵家令嬢の婚約者で公爵が直々に後ろ盾になってる存在だし……。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ