第二十一話 錬金学校
「アーノルドよ。デラージュ公爵様から聞いたぞ。お前には錬金の才能があるようだな」
「そんな優れた才能があったなんて、私はあなたの母親として鼻が高いです」
一ヵ月ぶりに実家に戻ると、父と母がとても嬉しそうであった。
俺に錬金の才能があることを知り、とても喜んでいる。
我がホッフェンハイム家は子爵であったが、代々の当主は王族の血を引く者として伯爵への昇爵を目指していたそうだ。
貴族が昇爵するためには、とてつもない功績を王家に対してあげないといけない。
貴族なので、一番の早道は戦で活躍することだ。
他国間との戦争はなくなっていたが、年に一度のモンスター狩りに、マカー大陸へと援軍に向かって、そこで大活躍するという方法もある。
だが、うちの父は文官なので腕っ節がまったく駄目だ。
かといって、内政の分野で昇爵するほどの功績を挙げるのも難しい。
自分が生きている間に昇爵は不可能だと思っていたところに、俺の存在が浮上したというわけだ。
なにかもの凄い錬金物の作り方を編み出せば、十分に昇爵のチャンスがあるというわけだ。
以上の理由で、父と母は大喜びしているのである。
「そこでだ。アーノルドには錬金学校に通ってもらおうと思ってな」
「錬金学校ですか?」
「そうだ、錬金学校だ」
実はこの錬金学校。
シャドウクエストだと設定だけ存在している。
マカー大陸のとある町にいる若い錬金術師が、『実は俺は、錬金学校の卒業生なんだ』というセリフにしか出てこないけど。
『錬金術』は役に立つ学問なので、ホルト王国のみならず他のどの国も錬金学校はあるらしいけど、シャドウクエスト内のマカー大陸には出てこなかった。
ゲーム会社の手抜きか、もしかしたら戦乱のため学校が運営できない状態だったのかもしれない。
「ですが、私はローザ様のご学友なのでは?」
勝手に学校に通ったら、デラージュ公爵に怒られないのであろうか?
それだけは心配である。
「大丈夫だ。デラージュ公爵様が推薦状を書いてくださったのだから」
「そうなの。アーノルドはもう十分に立派な錬金術師だけど、やはり学校を出て箔をつけた方が将来有利になると仰ってくださったの」
俺、随分とデラージュ公爵に気に入られているんだ。
あれ?
実は、俺も没落フラグ立ってる?
確か、デラージュ公爵もローザと一緒に没落したんだよな。
となると、ここは……。
錬金学校を卒業して実績を作る。
冒険者としても強くなっておく。
これを成し遂げておけば、もし俺も一緒に没落しても他国で生活できる。
ここは、錬金学校に通うべきだな。
「父上、母上。僕は錬金学校に通います」
「ならば、早速引っ越しだな」
父上が言うには、錬金学校は王都でも西の端にあり、ホッフェンハイム邸から通うと日を跨ぐほどの時間がかかるそうだ。
勿論、デラージュ公爵邸から通うのも同じくらい時間がかかる。
というか、ほぼ物理的に不可能であった。
「学校に近い家を私が見繕ってこよう」
「ありがとうございます、父上」
こうして俺は、十歳になるのと同時に錬金学校に通うことになるのであった。
『錬金術』を極める……恋愛シミュレーションゲームやRPGとは大分離れつつあるな。