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第四話  幸運にも世界を少し知りました

※挿絵があります


「――――異世界から来た?ふふっ、何の冗談?ありえないでしょ普通に考えて。」


「じょ、冗談なんかじゃない!俺は実際に事故に遭って死んだ、いや、・・死んだと思う。だが、ここは俺のいた世界じゃないんだ。俺はドラゴンなんて生まれてこの方一度も見たことはなかったし、

魔法に関しても同じだ。」


それは、旅館”三日月”での夜の出来事。アガサは初めての《風狼《ウィンド ウルフ》狩り》を余裕でこなしご機嫌のようだが俺は自分の現状を説明するのにいささか疲れてきていた。


「――あのね、コウ。魔法は行使する人間がそうであるように決して万能ではないの。私たちの今いる《獅子領(ししりょう)》の北には《十二星領(じゅうにせいりょう)》各地から集められた優秀な魔法師たちがいる《魔法皇庁》があるけど、誰一人として

異世界にわたる魔法なんて使えない。そんなのは神話の領域の話なの。」


「待ってくれアガサ。理解が追い付かないんだ。まずここはどこなんだ?《十二星領》?頼む、詳しく説明してくれ。」



「・・それを本気で言ってるとしたらかなり深刻ね。」


アガサは俺の異常なまでの緊張感を感じ取ったのかこの世界について詳細に話し始めた。

――どうやら夜のお楽しみイベントはもう少し先になりそうだ。




挿絵(By みてみん)




「このザラ大陸の全ての地域は12ある領のいずれかに属してるの。これらを総称して《十二星領》って言うわけ。獅子領は大陸南部にあって、私たちの住むレオ・クレタは獅子領の北東部に位置してる。領都レオ・ウェルキエルからは少し距離があるけどあんなとこよりここのほうが私には合ってるかな。

階級差別なんかもほとんどないし。そして、この12の領は増えることもなければ、減ることもない。―――――そして領ごとに強大な力を持つ”王”がいる、もちろんこの獅子領にもね。」


「そういえばアガサはさっき自分のことを《第3級民(サード クラス)》とか言ってたな。」


「そう、私は第3級民。全人口の6割がこのクラスに含まれていて、1割が王の親族である《第1級民(ファースト クラス)》と貴族階級の《第2級民(セカンド クラス)》。そして残りの3割が・・・”奴隷”。」


”奴隷”―――他者の思うように使役され、人としての権利を奪われた存在。


「この領にも奴隷はいるよ、基本的に炭鉱が近いレオ・トリボリで働かされていてこの町内にいるのは一部だけ。悲しいけど・・・どうすることもできない。」


「一部の貴族様と一般市民が使役しているってわけか・・・。」


「私たち第3級民に対する圧政も年々厳しさを増してる。国が炭鉱資源採掘のために第3級民すら借り出そうとしているの。王宮への献上金も増加する一方・・・。」


話の内容のせいか、どうにも暗い雰囲気だ。


(少し話題を変えてみるか―――)




「この世界には魔法が存在するって言ったよな。それは誰でも、例えば俺でも使えるものなのか?」


「使えるかどうかは”ステラ”との親和性次第だね。あっ、ステラっていうのは私たちの住む世界を維持し動植物に恩恵を与える力のこと。見えないけど確かにそこにある、それって神秘的だと思わない?」


アガサは興奮した様子でズイッと俺に詰め寄ってくる。――胸、完全に当たってるんですよねーアガサさん。


「あ、あのー・・アガサさん。近いんですが・・・。」


「ご、ごめん!魔法のことになるとつい調子に乗っちゃうんだよね、私。」


えへへと笑うアガサ。惚れてまうやろがい。


「見ててね。」


そういうとアガサは部屋の灯を消した。当然俺の視界は闇に包まれる。





「《明るき夜(ルミノックス)》」


呪文に応えるように、彼女の掌の上に明るい光源が現れた。



――すごい。   ただその一言に尽きる。



「これは灯を生み出す初等魔法。便利でしょ?でも、魔法を発動している間はステラを事象に結び付けるために体力を消費するの。そんなわけで、普段は魔力の必要ないオイルランプを使用してる。

魔法の等級と消費体力は比例するから体力のない人が高位魔法を唱えるのは危険ってわけ。

もちろんステラとの親和性が高ければ、同じ魔法を使っても消費体力が少なくて済む場合もあるからね。」


アガサの口からはすらすらと魔法に関する説明が出てくる。



「・・話を戻すね。本当に異世界から来たとしたらコウはまだ魔法適正を持っているかどうかわからないし、何よりステラに干渉するための”回路”を開いてない。」


「回路?」


「この世界の人間だって生まれた瞬間から魔法が使えるわけじゃないの。回路を開かなければ仮に魔法適正があっても呪文を唱えたところで何も起きないんだ。」


「そうなのか・・。」


「実は、領都ウェルキエルにある魔法局で魔法適性とステータスの診断ができるんだよね。そこで、魔法適正”有”だと判断されればすぐにでも回路を開いてもらえる。そこで魔法師に聞けばあなたの言う元の世界に帰る方法もわかるかもね。

”たまたま”明日領都に行く用事があるけど・・・一緒に来る?」


魔法――確かに興味のわく話題だし一回くらい使ってみたい気分もなくはない。だが俺の目的はそれじゃない。


「そこに行けば、元の世界に帰る方法がつかめる、のか?」


「必ずとは言い切れないけど、その可能性はあるね。」



「それなら喜んで行くよ。――少しでも可能性があるなら。」












――獅子領 領都レオ・ウェルキエル―――




都会って言うのはどうしてこうも暑いのだろう。


(まったく、アガサは魔法局の場所だけ教えてどっか行っちゃうし・・。とりあえず行くしかないか・・。)




「おっ、兄ちゃん。南方じゃあ珍しい顔つきだな。どうだいこの杖!樹齢660年の樫の木から作った一品さ。どうだい、安くしとくよ!」




うわ、、また来た。これじゃあ目的地に着くのにも一苦労だ。こんな時は、



「あー・・、杖ならひいきにしてる店があるので遠慮しておきます。すみません。」


とか、適当言って誤魔化す。いちいち相手にしている暇などない。



「・・そいつは残念。ったく、最近は商売あがったりだ。ここの王がよ、武器や魔道具関連の販売に規制を入れやがったのさ。最近は領各地で体制反対派の人間がちらほらと・・。まあ、せいぜい気をつけな。」


「は、はあ・・」




その時、近くの男女の話が耳に入ってくる


「おい、南通りで喧嘩騒ぎだってよ。」


「また?今月に入ってもう三度目じゃない。」


南通りといえば、目的地である魔法局があるはず。――いざこざに巻き込まれるのはごめんだが行くしかなさそうだ。





―――――南通り、言い争いをする二人の男がいた。


「この騒ぎはなんだ?」

とっさに近くの男に問う。


「なんでも露天商から買った竜の鱗が偽物だという証拠をつかんだ男がいたらしくてな。昼間からこの騒ぎさ。」






「てめぇ、よくもこんなあからさまなパチモンを売りに出しやがって!証拠は挙がってんだよ!!」


「出所のわからん証拠など証拠のうちに入らんわ!」


「・・どうやら、怪我したくて仕方ねえらしいなぁ。」


男は懐から短剣を取り出し、それを見ていた群衆の一人が悲鳴を上げる。


「お、おい、何のつもりだ。」


「だから、このナイフではらわた抉り出してやろうってんだよぉ!」


(まずいっ―――――)


男がナイフを振り下ろそうとした瞬間、その手は何者かに止められる。





「―――領都内での武器使用は厳禁、ですよ?」

いかにも高貴な洋装をした白髪の青年はこの緊迫した状況にも余裕の表情だ。



(見えなかった。本当に見えなかった。この青年がどこから現れたのかすらも。)


遅れて憲兵隊がやってきた。


「こ、これはヘクトール卿!ご協力感謝します!」


「このあたりから悲鳴のような声が聞こえましたので。まあ、大事にならなくてよかったです。この二人の連行をお願いできますか?」


「はっ!」

憲兵たちは青年に敬礼し、男たちを拘束する。


その時、青年と俺は目が合った。青年は俺のほうに歩み寄る。


「君は珍しい顔立ちをしていますね。大陸のどの人種とも違う――おっと失礼。

私はヘクトール・レオ・ミカエリスと申します。そちらは?」



「・・幸太郎、月宮幸太郎、です。あ、幸太郎が名前ですよ。」

おそらくアガサの言っていた貴族階級の人間だ。見れば見るほど美しさを感じる―――マジで迫力あるわ。


「コウタロウというのですか。そんなにかしこまる必要はありませんよ。これからどちらに行かれるのです?」


「えっと、魔法局に行こうかなと。」


「おお!奇遇ですね。私も魔法局に向かっていたのですよ。」


「もう一人女の子が来ているのですがどこかに行ってしまいまして。」


「その子の特徴はわかりますか?」


「え、ええっと、金髪で年の割に童顔で、あと巨乳ですね。」

―――もうちょっとましな表現はなかったのかよ、俺。


「ふむ、いいでしょう。」

ヘクトールはA4サイズの紙を取り出し呪文を唱える。


「《清浄なる瞳(クラルス オクリース)》」


すると紙に紋様が現れた。何らかの地図だろうか?


「その条件に当てはまる人物は何人かいますが、魔法局に向かう者が一人います。おそらく貴方の付添人でしょう。」


(そんなことができるのか?!)

俺は正直驚いてしまったが、ヘクトールはそれに気づいていないようだった。


「そ、そうですか。ならこのまま魔法局に向かえば合流できそうですね。」


「そうですね。では行きましょうか。」


 ふと、俺は立ち止まる。


「おや、どうかしましたか?」


「なんでしょう、こう、俺のイメージする貴族ってもっと偉ぶってる感じがあったんですよね。でもあなたからは下級の人間を見下そうとする感情なんてこれっぽっちも感じられなくて。意外だなーなんて。」


それを聞いてヘクトールはふふっと笑う。


「私は第2級民(セカンド クラス)に当たる貴族ですが、偉ぶることができるほどの人間ではありません。そんな私でも社会貢献くらいはしていたいのです。それが私の生きがいですからね。」


その言葉を聞いたせいか俺の口からはとっさにセリフが漏れていた。


「あなたのような人が王になればいいのになぁ」


「え?」


「聞きましたよ、この領の人々が王の圧政に苦しめられていると。あなたが王になればそんなこともなくなりそうなものですが。」







































































「―――この領の王は私の父です。」


ヘクトールは少しだけ悲しそうな顔をしていた。

投稿が遅れてしまい申し訳ありませんm(__)m

次回はついに主人公のステータスが判明します!

6/22あたりに更新する予定です。


ブックマーク・感想等よろしくお願いします(^^)/~~~



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