第零話 幸運にも誕生しました
―地球とかいう星の、とある島国にて
「うぅ・・ぐっ・・・」
「がんばれ、幸子!」
「大変!!へその緒が首に!」
新人助産師がそう叫ぶ一方、傍らのベテラン助産師は落ち着いている。
「大丈夫ですよ~」
ベテラン助産師は慣れた手つきで赤子を取り上げる。
「・・ゃあ・・ふぎゃああぁ」
「元気な男の子ですよ~」
ベテラン助産師は母親へ赤子を手渡す。
「よ、よかったぁ・・、父さんは心配したぞぉおお。」
年甲斐もなく号泣する父親、それを見た母親はぼそりとつぶやく。
「結局、名前どうするの?」
「ふふ~ん。ちゃんと決めてあるさ。『幸太郎』。お前は月宮幸太郎だ!」
「幸太郎・・かぁ。なんだか平凡ね。」
「おっとっと、約束は守ってくれよ~。男の子なら僕が名前を付けるってことだったよねぇ。」
(この父親、ウザい。)
「はいはい。わかってますよ。で、名前の由来は?」
「もちろんこの子に幸せになって欲しいからさ。見ろよこの福耳!かわいいじゃないの~。」
「それにしてもへその緒が首に絡まるなんて、びっくりしたわよねえ。幸太郎がぶじでよかったわ。」
「まったくだな、早速不幸スタートで名前負けというわけか。はっはっは」
「笑い事じゃないわよ。」
(笑い事じゃねーよ。)
他でもないこの俺「月宮幸太郎」の圧倒的に名前負けした不幸人生はこうして幕をきったのだった。