第2話 謁見
白いアーマーに青いマント、碧の目に銀髪、出で立ちから気品すら感じられる男が俺に跪いて
顔を上げている。
ただ、【ホール・ワールド・オンライン】にこんなNPCいたっけ…?
「…あんたは?」
「申し遅れました。私はアリエス・ヴィダ。このグリシニア王国で近衛騎士団長を拝命しております。」
「…で、その近衛騎士団長が俺に何か御用でしょうか?」
少し怪訝そうな感じにとられたかもしれないが、何せこちらは状況が把握できていない。
混乱している中で声かけられても何もわからないだけだ。
「おや…使いの者から話をお聞きいただきはせ参じて頂いたと思ったのですが?
詳しくは我が王からお話があるかとおもいますが」
「王…武王ヤマト・グリシニアか」
ヤマト・グリシニア。
ゲーム中ではかつて魔王軍に戦いを挑み平和を手にした英雄のパーティの一人で、
帰還後このグリシニア王国を継いだ騎士だった。ただ、もう年齢が年齢のため後進に家督を
譲るか考えている、という設定だったような---?
「はい。我が王が堕天王殿の謁見を望んでおります。どうか私といっしょにお城までおいでください。」
「…少し時間をもらっていいか?色々整理しなくてはいけないことがあってな」
「?畏まりました。では一刻の後にまた再度お迎えにあがります。」
そういうとアリエスは王城の方向へと去っていった。
さて、今自分がどういう状況にあるか少し整理しておこう。
どうやらここは【ホール・ワールド・オンライン】の中で間違いないらしい。
今自分が装備しているものや、さっきのヤマト王の話からするとどうやら堕天王キーアに
変身?いや違うな…転生?させられたと考えたほうがしっくりくるか。
で、今まで読んだ転生系の話だと、恐らく王の話というのはこの世界を救ってくれ、みたいな
話だろう。不思議とステータスの確認だったりキーアが覚えていたスキルなんかは使い方がわかる。
分身みたいなものだったからか。
「---【ステート】」
キーア 職業:聖騎士 LV:81
HP:5628 MP:2501
ATK(攻撃力):839 VIT(防御力):602
MAG(魔力):414 MNT(精神力):669
特殊能力:【異世界の加護】
我ながらここまで育てたな…って【異世界の加護】?
こんなのはなかったが…なんだこれ?
まあ考えても今は何もわからないだろうし、いずれわかるだろう。
キーアがもっていた金もそのままだ。とりあえずはなんとかなるとして…
考えふけていたら一刻が過ぎようとしていた。
そろそろアリエスとかいう騎士が迎えに来るはずだ。
そんなことを思っていたらアリエスが迎えにやってきた。
俺はアリエスに連れられ、グリシニア城へと向かった。
--謁見の間。
「よくぞ参られた、【堕天王】キーア殿。」
一応いろんな漫画のみよう見まねで敬意の記としてこぶしを立て跪く。
「王におかれましてもご健勝そうで何よりでございます」
…一応テンプレっぽく返してみたが、特に変な目を向けられていることは無さそうなので
とりあえずこれで間違いはなさそうだ。
「顔をあげよ、キーア殿。」
「はっ」
「実は其方に頼みがあるのだ」
そらきた。テンプレ通り。
「実は其方に世界の中央にある穴を塞いでもらいたい」
「穴…ですか。どうやって?」
「詳しいことは儂にもわからん。ただ魔王が穴の中央に君臨しているのは間違いないだろう。」
「ならば総出で魔王軍を倒せばいいだけでは?」
「貴様!王にむかって!」
槍を向ける兵士をヤマト王が制止する。
「よい。キーア殿の言いたいこともわかる。だが、王国軍だけでは守るだけで手いっぱいでな。
状況を打破するまでには至らないのだ。そこで【堕天王】の名を轟かせた其方であればあるいは、
と思い藁をもすがる思いで頼んでおる。」
まあこうなるのはわかってたが。
「…わかりました。俺でどこまでできるかはわかりませんが。ただ---」
「ただ?」
「さすがに王国がどうにかできないものを私一人では難しいかと思います」
「ふむ。ならばアリエス、フレッドを連れてまいれ」
「はっ」
そのやりとりの少し後、アリエスが王に命じられて連れてきたのは背の高い女性。
気品は感じられるが、その中に凛とした雰囲気も感じられる。
銀髪のロングヘアで背中には弓をこしらえている。
「フレッドはアリエスの妹で近衛騎士団の副団長をしている弓使いじゃ。
付与魔法ももっているからキーア殿の力にはなるだろう。各国の情勢も把握しているので
力にはなるはずじゃ。フレッド、キーア殿の旅に力を貸してやれ」
「…王の御心のままに」
…こうして俺はフレッドと穴を塞ぐ旅にでることになった。
人物の名づけって難しいですねー。キャラ付けとか全然できてないけどw
ちなみに一刻は2時間くらいです。
キーアとフレッドの旅が始まります。さてどうなることやら?
俺にもわかりません!w