仕事終わりません
ここのところ、手紙の量が尋常じゃない。
「やべー、終わらん」
来る手紙は物的依頼と特急依頼ばかり。
なぜかというと、地上は今、未聞の災害時代を迎えている。
各地で地震が多発したり、それまで全然活動していなかった火山がいきなり活発になって噴火したり。
なんでだろーねー。
そう思いながら、私は黙々と仕分ける。
前に鈴ちゃんに聞いたことがある。
『仕分けって別に私がしなくてもいいんじゃないの?』
と。
すると彼女は、
『地上に生きる人々がどのように思い、感じているのか神様に知っていただき、世界を良くしてもらうことが神様の最終的な仕事です』
とのこと。
世界を良くしてって、何すればいいのか。
わからん。
まあ考えても仕方ないので、仕事をする。
終わらんけども。
とりあえず今日の分は終わった。
終わらんかと思ったぜ。
風ちゃん呼ぼ。
一束だけポストに投函する。
すると風ちゃんがバイクに乗って現れた。
ん…?
「リコ様ー、お手紙受け取りに参りましたー」
やばいぞ、風ちゃんふらふらしてる。
「風ちゃん大丈夫?」
「はいー、大丈夫ですよぉ。忙しいので、臨時で何人かに配達を手伝ってもらうことになりましたー」
「んー、そっか。それならいいけど。お仕事終わったらしっかり休んでね」
「はーい、リコ様はお優しいですね。えーと、こちらがリコ様に閻魔様へお届けしていただきたい手紙ですー。ではこちらの手紙、確かにお預りしましたー」
そういって、風ちゃんはまたふらふらしながら帰っていった。
「…待って、風ちゃんいなかったら行けないよー!」
「神様はじめまして」
横からいきなり声がした。
驚いて見てみると、男の子。
風ちゃんより大きいかな?
「天です。よろしくお願いします」
ちょっと無表情な子だ。
これはこれで可愛い。
「はじめまして、リコです。よろしくね」
「僕は風に頼まれまして、リコ様を閻魔様のもとへお連れします」
「…さすが風ちゃんだ」
わざわざ手配してくれてた。
「じゃあお願いします」
「はい」
天ちゃんは淡々とリアボックスからヘルメットを出し、私に手渡した。
「どうぞ」
「ありがとうー」
将来は仕事人間になるなこの子。
バイクの後ろに乗らせてもらう。
「出発します」
「お願いしまーす」
ギュン!
…慣れたな、もう怖くない。
「到着しました」
「ありがとうー、ちょっと待っててね」
門を叩くべく、バイクからおりた。
コンコン
「…はーい」
何だか心なしやつれた閻魔様が出てきた。
「閻魔様、お疲れ様です」
「あー、りこちゃーん。お疲れ様ー」
「…大丈夫ですか」
「さっきやっと裁ききったのよー、疲れた」
「私もです」
二人で疲労感漂う笑みをうかべた。
「まあ、入りなされ」
閻魔様に促され、奥へ入った。
「今日は風じゃないんだねー」
「風ちゃんもお仕事が忙しくて」
「あー、最近なんだろーねー、これ」
「閻魔様は大変ですね」
「まあ、仕事だししゃーないねー」
「あ、閻魔様、今回はこれだけ持ってきました」
「はーい。…うーわ、なんじゃこりゃ。」
私は閻魔様に束になってる書類を渡した。
「もー。ちょい待っててね、確認するから」
そう言って閻魔様は分厚いファイルを引き出しから何冊か取り出した。
「んー、あ、この人か。おっけー」
何かぶつぶつ言いながら書類を書いている。
しばらくして。
「ごめーん待たせた。やっとできたわ」
閻魔様は門のところにいた私のもとに来た。
「お疲れ様でした。お預りします」
「はーい。ちょっと私寝るわ、あくび止まんない…」
「おやすみなさい」
閻魔様は手を振りながら帰っていった。
「ただいまー」
「おかえりなさいませ、リコ様」
「待たせちゃったね、ごめん。はいこれ」
「いえ、お気になさらず。確かにお預りしました。帰りましょう」
私はヘルメットをかぶり、バイクの後ろに座った。
「出発します」
「お願いしまーす」
「到着しました」
「ありがとねー、お疲れ様」
「失礼します」
真面目だね、いい子だ。
「…はやく、災害連発止まらないかな」
みんな大変な思いをしてるよ。
…これ以上、辛い思いをする人が出てきませんように。
そう思いながら、寝袋に入った。
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