1通目
2話目投稿です!
ポストから手紙の束を出した。
さあ、やろか。
…この手紙、どこで広げよう。
そういえば私、家無いんだった。
申し訳ないけど、ここに置かせてもらおう。
とりあえず、床なのかなんなのかわからないふわふわしてるとこに座り込み、1通ずつ目を通していく。
『神様、お願いです。
リンを見つけてください。
もう4日もおうちに帰ってこないんです。
お願いします。』
封筒には、手紙と一緒に猫の写真が入っていた。
ん?この猫…
私は見おぼえがあった。
この猫、私が助けた子?
あの子迷子だったのか。
そういえば首輪してたかも。
おうちに帰してあげないとな。
さっそく天使たちに届けよう。
…これ、私も猫探しちゃダメなのかな。
コンコン
「はいよー」
「ねえ神様、天使にお手紙送りたいんだけどやりかたわかんない。それと、これ私も一緒にやっちゃだめ?」
「んー?なんの仕事なんじゃ?」
「猫探し。この子だよ。たぶん私が死んだときに助けた猫なの」
「そうか、なら心配じゃの。よいぞ、行っておいで。」
「ありがとう!神様」
「まず、天使への手紙の出し方じゃな」
神様はそう言いながら、ポストのところまで歩いていった。
私も後ろからついていく。
「確認した手紙をポストの投函口に入れるだけじゃ」
神様は手紙を投函した。
すると、
「来たぞ」
神様が指差す先に、郵便配達員のような格好の男の子が大きなバイクに乗って現れた。
「神様こんにちは!お手紙を受け取りに参りました!」
見た目小3くらいだ。
めっちゃ可愛い。
ほっぺもちもちそう触りたい。
「こんにちは、風。今日はこの手紙をよろしくな」
「はい!…もしかして、あなたが新しい神様ですか?」
「え、あ、はい。新しい神に選ばれましたリコです。」
「リコ様!僕は風です!お手紙を運ぶ天使です。よろしくお願いします!」
風ちゃん。
なんて可愛いの。
「リコ様じゃなくてリコお姉ちゃんって呼んでほしーなあ」
「?リコお姉ちゃん」
きゅんっ
「あああ!っ可愛い!」
もう可愛い可愛いすぎる!
私は思わず風ちゃんを抱き締めた。
「リコ様ー、苦しいですー」
「リコお姉ちゃんでしょー」
私と風ちゃんがじゃれていると、
「リコよ、仕事じゃ。
猫を探しに行くのじゃろ?」
はっ、そうだった。
「風ちゃん、私も一緒にこの猫を探したいの。いいかな?」
「はい!一緒に行きましょう!」
風ちゃんはバイクに戻って、後ろについているリアボックスからヘルメットを出した。
「はい!リコ様、これつけてください」
「リコお姉ちゃんだよ~」
「ほれ、早く猫を見つけてくるのじゃ。いや、その前に事務局に行くのじゃな。」
「はい、確か今日は蓮様がいらっしゃると思います。
良かったですねリコ様、蓮様はベテランさんですよ!」
「ん?何?え、風ちゃんは一緒に猫探さないの?」
「ごめんなさい。僕は他にもお仕事があって…」
しょぼんとする風ちゃん。
そうだよね、風ちゃんも頑張ってるんだよね。
お姉ちゃんわがまま言っちゃったよ。
「わかったよ風ちゃん。リコお姉ちゃんはその蓮様と一緒に猫を探してくるね。だから今度お休みの日お姉ちゃんのおうちに遊びにおいで」
「いいのですか!?ありがとうございますリコ様!」
「ほら、はよ行かんかね」
神様から追い出される。
ひどいわー。
「じゃあリコ様、危ないので絶対に手を離さないでくださいね!」
「うん、風ちゃんお願いね」
風ちゃんの体には大きすぎるバイク。
私は後ろに座らせてもらう。
こけないかな?大丈夫かな?
心配なんて必要なかった。
ギュン
「!!!」
心臓が飛び出た。
いや、出てないけども、出てはいないけど。
こ、怖い…!
「リコ様、つきましたよ!事務局です!…リコ様?」
やばい、頭くらくらしてるよ。
風ちゃん、すご。
いつもこんなの乗ってるんだ。
たいへんだね。
「ありがとー、風ちゃん。事務局ってこれ?」
「はい!ここが事務局です!」
何かすごいねこの建物。
日本で言うところの国会みたいだ。
「行きましょう!」
風ちゃんに促されて事務局の中に足を踏み入れた。
「こんにちはー、風です!蓮様いらっしゃいますかー?」
入ったところにあるカウンターの女性が応対してくれた。
「はい、ただいまお連れします」
「ちょっと待ってましょ、リコ様」
…リコお姉ちゃんって呼んでよー。
「お待たせ致しました」
カウンターにいた女性が一人の男性を連れてきた。
髪が水色だー、綺麗。
でもなんか眠そう。
「おはよーございまーす。」
「リコ様、こちらが蓮様です。普段はよく寝てらっしゃるのですが、仕事の時はスイッチが入るので心配しないでくださいね」
「風、説明が雑だね」
「蓮様、こちらが新しく神様に就任されましたリコ様です。可愛いでしょう」
「んー?新しい神様?」
「あら、そうでしたか。私、藍と申します。ここで事務局の受付・案内を担当しているす天使です。何かわからないことなどございましたら、いつでもお尋ねくださいませ」
「藍ちゃんね、リコです。よろしくお願いします」
やっぱり第一印象は大切に。
まずは挨拶から。
「俺は蓮です。ここで解決者として働いている天使です。よろしくお願いします」
「解決者?」
「実際に地上に行って、人々の希望を叶える天使のことだよ。まあ、どうにもならないこともあるけどね」
「そんなときはどうするの?」
「神様が閻魔様に手紙を出すんだよ。『この人はこうでこんなことをしましたが、残念ながらこうでした。裁く際、ご配慮ください』みたいな感じにね」
なにそれ、そんな話聞いてないよ神様。
閻魔様か、変な人じゃないといいなあ。
「って、こんな話してる場合じゃない!猫を探したいの!女の子からの手紙にあった猫!」
「この子です。」
風ちゃんが横で写真を出してくれる。
良い子。
「猫の迷子か」
「もう4日も帰ってないみたいなの。私、この猫知ってるかも知れないんだ。一緒に探してほしいの。早くしないとこの子…」
「焦らなくても大丈夫だよリコ様、天界は地上と時間の流れが違うんだ。」
「でも、」
「大丈夫。俺を信じて、リコ様。絶対に見つけてみせるから。」
蓮の言葉を聞くと、なぜか心が落ち着いた。
「…そうだよね、私が焦ったって状況が良くなることもないしね」
「うん、俺もついてるし、頑張って見つけよ」
「ありがとう、蓮。よろしくお願いします」
「こちらこそよろしくね、リコ様。行こっか」
「じゃあ、風ちゃん、藍ちゃん、行ってきます!」
「「行ってらっしゃーい!」」
蓮につれられて、地下へ向かった。
「ここの池に手紙を浮かべて」
「こう?」
言われた通り、浮かべてみる。
すると、手紙は溶けてしまった。
「手紙なくなっちゃったよ?」
「見て」
水面に目をやると、そこには街の風景が映っていた。
「この池に手紙を浮かべると、その街に繋がるんだ」
「へー、便利だね」
いちいち探さなくてもいいんだ。
「この時、もし探している猫がもういないのなら、手紙は溶けないんだよ。溶けたということは、まだ生きてるということだ」
「…絶対に見つけようね」
「もちろん。さあ、入るよ」
「え?」
バシャーン
リコ、生まれてはじめて池に突き落とされる。
もう死んでるんだけども。
「ここ?」
「みたいだね」
公園だ。
気づいたら公園の滑り台の上にいた。
「この近くに猫がいるの?」
「そうだよ、この近くのはず…」
にゃー
「…この子?」
「この子だね」
念のため、首輪に飼い主の連絡先か何か証明できるものがあるかチェック。
ちゃんとご飯食べられなかったんだろうね。
私が見たときより少し痩せてる。
あの時大丈夫だったかな?
怪我とかしてない?
見た感じ無さげだけど、病院につれていってもらおうね。
首輪の裏に『リン』って書いてあるのを発見。
この子で間違いないね。
私たちはすぐに、リンちゃんをおうちに帰してあげた。
さすがに、「私、神です。あなたの祈りは聞き届けられましたよ。」
なんて言ったら不審者だ。
どうやって引き渡そう。
と考えていると、ふと電柱に目がいった。
「迷い猫のポスターだね」
「リンちゃんだ」
あのポスターを見た通行人ってことにしとこうか。
いや、そもそも、神様と天使の姿って見えるの?
「リンちゃん!よかったあ!本当にありがとうございました!」
見えるっぽい。
「いえいえ、ただ見つけただけですので」
「何かお礼を…」
「いえ、本当に結構ですよ。それより、もしかしたらどこか怪我してるかもしれないので、念のため病院に連れていってあげてください。」
「はい、ありがとうございました!」
「リンちゃん!」
女の子の声が聞こえた。
風ちゃんより少し大きい。
六年生くらいかな?
「小豆、リンちゃん帰ってきたわよ。良かったわね」
「うん!ありがとうございます!」
女の子はきゃーきゃーはしゃぎながら、リンちゃんを連れて扉の向こうへ行ってしまった。
よかったよかった。
「では、私たちはこれで失礼します」
「本当にありがとうございました」
その家を後にした。
私たちは天界へと帰るべく、『池』を探していた。
「蓮」
「なーに?」
「また池なの?」
「そうだよ、池は天界と地上を繋いでいるからね」
「ふーん」
「リコ様は初仕事、どうだった?」
「何もやってないよね。地上におりたらそこに猫いたし。」
「まあ、迷子とか物紛失したから探してって祈りは結構多いよ。今回みたいに、地下におりたら目の前にいた、みたいなことがほとんどだね。」
「天界の池って高性能だね」
「そうだねえ。あ、リコ様、池あった」
「…あんまり綺麗じゃないからここはやだなー」
バシャーン
振り返ると同時に池に突き落とされる神様。
扱い雑じゃね。
ここやだって言ってんのに。
「おかえりなさいませ」
藍ちゃんの声が聞こえる。
帰ってきたのか。
「ただいまー」
気がつくと、事務局のロビーだった。
「初めてのお仕事はいかがでした?」
「それが何もしてないんだよー」
「…まあ、そんなこともございますよ」
藍ちゃんがにこにこしてる。
「じゃあ俺はまた寝るねー、おやすみ」
「お待ちください蓮様、報告書は本日の17時までに閻魔様宛に送ってくださいね」
「はいはい、17時ね」
そう言って蓮は『仮眠室』と札の掛かった扉の向こうへ行ってしまった。
「ほんとに寝るの」
「いつもああなのです。」
「報告書は閻魔様に送るの?」
「はい、裁く時に必要な情報として、今の閻魔様から始まりました」
「閻魔様も変わるんだね」
「世代交代だと、前任の閻魔様はおっしゃっていました」
おじいちゃん神様もそんなこと言ってたな。
「閻魔様も転生なのかな?」
「私たちはそう聞き及んでおります」
「会ってみたいなー、閻魔様。どこに行ったら会えるのか神様に聞いてみよ。じゃあ、私帰るねー。…藍ちゃん、私どやって帰ればいいの?」
来るときは風ちゃんにバイクの後ろに座らせてもらった。
残念ながら怖すぎて景色なんて見ちゃいない。
景色って言ったって、ほとんど雲みたいなもこもこしたのしか見えないけど。
どうしようかなーと思ってたその時、
「リコ様ー!」
こ、この声は!
「風ちゃん!」
「おかえりなさーい!」
てけてけ走ってきた風ちゃんを抱き締める。
「あ~、癒し~!」
「お仕事お疲れ様でした!おうちまでお送りします!」
「いいのー?ありがとうー」
風ちゃんはどこからかあの大きなバイクを持ってきて、私にヘルメットを差し出した。
「どうぞ!」
「あ、ありがとう」
私はヘルメットを被り、風ちゃんのバイクの後ろに座った。
「しっかり掴まってくださいね!行きまーす!」
ギュンッ
「!!!」
私はまた、声にならない叫びをあげた。
「リコ様、つきましたよ!」
気がつけば、もうポストの前だった。
「風ちゃん、ありがとうねー」
怖かったけど。
「おかえり。どうじゃった仕事は」
「神様ー、ただいまー」
神様の方を振り向いた私の目は、信じられないものを見た。
手紙の山。
なにこれ。
神様見えないよ。どこ。
と思ったら、山の端からヒョコっと神様。
「神様ー、それ何」
「手紙じゃよ」
「めっちゃあるね」
「いつもこんなもんじゃよ」
まじか。
やべ、神様思ったよりたいへんだわ。
誤字脱字、おかしな表現などあると思います。
ご指摘いただけると嬉しいです。