ゴーストミーツガール
私は暗闇の中で一人うつ伏せになっている。あれ…なんで私が私をとらえているのだろう。あそこにいるのは私、なのに私は私。不思議な感覚。ふと後ろに誰かいるのに気づき体が硬直した。声が出ない。体の自由も効かない。声が聞こえる。ささやくような声。はっきり聞くことはできない。瞬間、体が宙を舞ってうつ伏せになってる自分に吸い込まれていった。
目やにでシパシパする目をゆっくりと開けた。ああ、夢か。コンタクトレンズをはめたままで瞳が乾燥して痛い。再び目を閉じたら外れてしまった。あれ? 近視で見えないはずの視界にやけにはっきりと映り込むものがあることに気づいた。ベットの下の何か…。あ、え、人?あまりの恐怖感に声も出ない。じっとこちらを見ている。
それは明らかにこの世に存在するものではないと一目でわかった。周りの背景に比べて存在が濃すぎるのだ。恐怖で目が離せない。するとあちらの方がじわじわと距離を詰め始めた。
体の動かない私は後ずさりすることもない。
「キーーーーン」
急なモスキート音に頭がふるえた。
「あれ違うかこれか」「波長が違ったな。」
声が私の耳に届いたが私の前に存在するそのおそらく人間ではないであろう人の口は全く動いてはいなかった。しかしそれは確実に彼のものであろう。
「わっ!!」
急な大声に驚いたが身体は反応できない。「お前死のうとしてんのか?」今度は穏やかな声だった。何か言い返そうとしても身体が言うことを聞かない今は返答することすらできない。「ああそうか。わかんねーよな。心だよ心。心に意識を集中すればいいんだ。そしたらこっちにお前の声が届く。そういう仕組みだ。」何を急に説明しだしたのだろう、戸惑いを覚えながらも心に意識を集中させてみた。「一体誰なんですかあなた?」 声が届いたようだ。 まだ状況を理解できないせいか声が震えている。
「まあそう怖がるなよ。そんなに怖いみためでもないだろ…。俺は簡単に言えば幽霊。信じられないだろうけど、、まさか俺自身も幽霊が本当に存在して自分が幽霊になるなんて想像もしてなかったよ。」
状況が把握できたと言っていいのだろうか。私は今幽霊と話しているらしい。あまりにどこでもいるような若い男性口調で話す彼に私は少し落ち着いた。
「あの、わかりました。幽霊さん、なんですね…。しかしてなぜ私に見えるんですかね。」
幽霊は少し笑みを浮かべた。
「お前すごい丁寧な話し方すんのな。高卒の俺とは大違いだ。」
高卒…学歴コンプレックスのある幽霊なんて聞いたことない。少し笑えた。
「見える理由はお前が死にかけたからだよ。床見てみお前リスカしてそのまま寝たから血がすこしずつ抜けてヤバイことになってるぜ。」