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プロローグ

オリジナル小説は初めてなのでおかしな点があったらすいません。楽しんでいただけると幸いです。今回は凄く短いです。

冬の夜空を切り取った様な金色。ゆるやかな曲線を描いた、落ちてきそうな満月。それをバックに舞う雪はきめ細かく、眩しいほどの月光に照らされて時折きらきらと輝く。

まるで一枚の絵の様な、否そう表現するのすら躊躇われるほどの景色。その中に浮かぶのは一人の少女。

無重力の空間に放り出された四肢はゆらゆら泳ぐように舞う。肌は驚くほどに白く冬特有の深い黒色の空によく映える。深く閉じられた目を縁取る睫毛は長く、光に照らされる栗色の髪にはパラパラとした雪が降り落ちて溶けていく。

時間が止まったかの様だった。

スローモーションの様な動きで空を舞った後、どさ、と音がして少女は道に落ちた。





親方空から女の子が





何言ってんだこいつと思うだろうが俺にも訳がわからない。








皮膚を切る様な寒さに包まれた深夜十二時。充電器のケーブルが原因不明の事故でいきなり千切れるというもう最初からよく分からない事件の所為で俺は近くのコンビニまで走らされる事になり、静かな住宅街を歩いていた。

ちょっと引っ張っただけなのにいきなり千切れた時は泣きそうだった。どんだけ脆いんだよ。もう充電器のケーブルゴムで作ろうぜ。電気通らねえけどなとか考えるレベルには困惑してたし動揺してた。尚且つ雪まで降り始めやがってふざけんな。マジで泣く一歩手前まできて視界が潤み始めた。


そして女の子降ってきた。どういう事だ。


いや、本当に降ってきたのだ。あっやべ泣きそうと思って目にあてがった手をどかした次の瞬間にはもうその姿はあった。

夜空を舞い、地面に吸い込まれる様にして落ちていった少女。完全に幽霊の類だと思った。殺される。なんか祟りとか呪いとかなんやかんやそんな感じので殺される。

半泣きどころじゃない。視界ウルウル保湿100%。もういっそ泣いてしまいたい。泣いて全力疾走かましたい。

情けないとかそういう次元の話じゃない。道路に頬をべったりと付けて横たわる女の子の顔は真っ青で血の気がない。

これ放置していいのだろうか。

もしも人間だったら、この寒空の下長時間放置するのは命に関わる。

でも人間だったらいきなり現れていきなり降ってくるなんて出来るものなのか。なにそれアクティブ過ぎて惚れる。でも朝の朝刊に近所で凍死体が発見されましたなんてのは御免被りたい。

恐る恐る近付いていく。近付く程に目を閉じていても分かるその端正な顔立ちが明らかになり、思わず心が躍った。


「おーい…大丈夫、か?」


そーっと手を伸ばし、試しにその手に触れると確かな温かみを持っていた。暗くてよく見えないため手探りで脈を探す。幾重にも重なった服のせいで時間はかかったが、なんとか探り当てるとトクトクという心拍を刻む音が聞こえて来て安心した。

とりあえず生きてるらしい。空から降ってきたよなどういう身体してんだよ大丈夫なのかコイツとかすんなり触れたけどいきなり目の前に現れたよね。え?大丈夫だよねとかなんか色々ツッコミどころ多いけど全部置いておくとして、だ。


どうするこの状況。


警察に届けるか?いや、ここから近くの交番までは遠い。少女とはいえ人一人背負って歩くのは骨が折れる距離だ。ならコンビニに?いや、流石にそれは迷惑だろう。


…俺の家?


「いやいやいやいや…」


考えてすぐに否定する。まだ17歳とはいえそれはなんだ、その、誘拐?拉致?って奴になるんじゃないか?


「それに親だって…」


いや、両親は海外出張中だったか。


「………」


いや、でも、その、だって


「…ここで凍死体が上がる方がよっぽど事件だよな」


…ああもう


「………今晩だけ」


ならいっかと言い訳をしてマフラーを外し、少女を抱え起こして背中に背負うと落ちてしまわないように自分と少女の首に一緒に巻きつける。歩き出して暫くすると背中に押し付けられた心臓の拍と、耳元かかる寝息が微かに聞こえた。


「いきなり現れたり、落ちてきたりするけど…」


生きてる、んだな


人間ではないかもしれない。けれど生きてるのなら助ける理由はそれで充分のはずだ。

首に手が回されてないからすぐずり落ちていく体をよっと抱え直すと、白い息を吐き出しながらなるべく早く帰路を急いだ。
















ちなにに胸はありませんでした。いや別に全然残念とか思ってないし。

ご閲覧ありがとうございました。

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