第8話 こんにちは トカゲ?さん
######### side トルク #########
毒薬のレシピを入手した後も生産クエストをこなし続けた。
時々気分転換もかねて討伐クエストもこなしたが、生産クエストのほうが圧倒的に多かった。
レベルのほうも、アーチャーがレベル27、薬師がレベル22といった具合で、もう少しでサブジョブのレベルがベースジョブに追いつきそうだ。
なお、サブジョブはベースジョブのレベルを超えられない。
なので、もうしばらくしたら冒険者ギルドのクエストを主体にしようと思う。
調合レシピもハイポーションやマナポーション、しびれ薬や爆薬など、ラインナップが豊富になってきた。
今は、討伐クエストを通して新しい薬品の実験をした、その帰り道だ。
ん?あれはプレイヤーか?
何かに追われているけど、様子を見てみよう。
…おー、空飛ぶトカゲに追われてる~。
現実逃避はここまでにして、どう見てもドラゴンだ。
あの外見だとワイバーンかな。
なんでこんなところに出現したのかは後で考えるとして、
急いで冒険者ギルドに報告しよう。
見捨てるのは心苦しいが、町に被害が出るより
「うお~い、たすけてくれ~。」
プレイヤーに気付かれた。
しかも、ワイバーンにも気づかれたようだ。
なぜか先ほどまで追っていたプレイヤーよりも、こちらに狙いを定めているみたいだし。
とにかく逃げないと。
そう思って走り出したが、さっきのワイバーンにあっさり追いつかれ、かまれそうになった
とっさに転がって回避、そしてすぐに体制を立てつつ周囲に意識を向ける。
「あれ?さっきの人がいない?」
先ほどまで追われていたプレイヤーがどこにも見当たらない。
ただ走るだけなら後姿くらいは見えるはず。
隠密系のスキル使って逃げたのか!?
見捨てようとした自分が言うのもなんだけど、薄情な。
とにかく知り合いだけでもワイバーンのことを伝えよう。
さっきの人が冒険者ギルドに伝えるかわからないし。
『フェードの森周辺にワイバーン出現。現在交戦中。冒険者ギルドに連絡頼む。』
フレンドに一斉送信っと。
「おわ!」
警戒を解いたつもりはなかったけど、ワイバーンの翼に吹き飛ばされた。
体勢を立て直し、毒の矢で[ガトリングショット]を発動するが、大したダメージにならなかったらしい。
その後すぐにワイバーンの体当たりを受けてしまい、HPがレッドゾーンまで減ってしまった。
すかさずライフポーションで回復後、[ベノムショット]を発動する。
命中すると、ワイバーンの動きがふらつきだした。
「よし、毒が効いたみたいだ。」
これである程度毒のダメージが蓄積される。
それに、翼の動きもぎこちない感じがする。
飛行系のモンスターは毒状態だと動きが鈍るのかな?
とにかく、これで討伐の目処が立った…気がする。
ワイバーンの攻撃をかわした後[パワーショット]で攻撃する。
[ガトリングショット]に比べれば少し与ダメージが多いうえに、命中した瞬間だけひるませるため時間も稼げる。
ただ、少しだけ溜めが必要なので、素早い相手や対多数のときには被ダメージを覚悟しなければならない。
ワイバーンの動きが鈍らなければ選べなかった手段だ。
しばらくの間、ワイバーンの攻撃を躱しては攻撃していたが、ワイバーンの素早さが元に戻ってきた。
「毒が切れたのか!」
毒状態には有効時間があったらしい。
考えてみれば当たり前か。
毒状態がずっと続くなら、どんなに強力なモンスターでも倒せるし。
元の素早さに戻ったワイバーンが突っ込んできた。
心なしか毒状態になるよりも速いうえに、怒っているような。
かろうじて躱すが、風圧で吹き飛ばされる。
体制を整え、毒の矢でワイバーンに[ベノムショット]を発動し、
その後すぐに[ガトリングショット]を発動する。
しかし、ワイバーンは気にした様子もなく突っ込んできた。
躱そうと横に跳ぶが避けきれず、HPが一気に半分近くまで削れる。
ライフポーションを飲んで回復した後、[ベノムショット]と[ガトリングショット]で攻撃するが、毒状態になる様子は全くない。
どうやら一度状態異常になると多少耐性ができる、もしくは一定時間同じ状態異常にならないようだ。
このままではジリ貧だ。
…どうしよ。
逃げられるような相手じゃないし、僕は生き延びれるのか?
######### side 追われていたプレイヤー #########
ラッキー。
ミスってワイバーンに追われてたけど、別のやつにタゲが移ったみたいだ。
今のうちにとんづらするか。
一応、冒険者ギルドには報告するけどな。
町が襲われたら俺も危ないし。
「よし、毒が効いてきたみたいだ。」
聞こえた声に足を止めて振り向く。
視線の先のワイバーンは確かに動きが悪くなっていた。
毒?
毒薬の類じゃなさそうだな。
もしや、モンスターを毒状態にするスキルでもあるのか?
知り合いにも教えとくか。
改めて、さいなら~。




