第6話 1つ目のサブジョブ
######### side トルク #########
"トルク様はアーチャーレベル20になりました。
レンジアタックがレベル13になりました。"
よし、ようやくサブジョブにつける。
一応ヘルプで確認しておこう。
サブジョブはベースジョブ以外ならどんなジョブにもつけるのか。
そして、サブジョブのレベルもステータスに影響するようだ。
弓使いであることを生かすならdexかspeが上昇するジョブについたほうがいいだろう。
まぁ、もう決めているけどね。
職人ギルドのカウンターにやってきた。
「いらっしゃいませ。どのようなご用件でしょうか。」
「サブジョブにつきに来ました。」
「どのジョブにいたしますか?」
「薬師で。」
「かしこまりました。クエストを発行します。」
"クエスト[調合の基本]を受けました。"
「ヒールポーションを1つ納品してください。ただし、自ら材料を採取し、調合したもののみ受け付けます。
ヒールポーションの材料は、蒸留水と薬草です。
こちらが調合に使用する道具です。」
"初心者用調合キットを受け取った。"
これで状態異常薬や爆薬を作れるようになれば、『Hunt and Farm』の時みたいに異常状態付与の矢とか使えそうだ。
後は短剣が使えれば『Hunt and Farm』のときと同じような戦闘ができそうだけど、
そこはあきらめよう。
生産だけでなく近接戦闘にまで手を出したら、中途半端になりそうだし。
さて、まずは材料の採取からか。
薬草はレスタの町周辺に大量に生えてたけど、蒸留水はどうするんだろ?
購入はダメだから、川か井戸の水を汲んで蒸留すると思うけど…。
お、調合スキルのレシピ欄に蒸留水がある。
これなら大丈夫だ。
先に井戸水を汲んでおこう。
…そういえば入れ物も自分で調達するのかな?
僕は『Hunt and Farm』の空きビンを持っているからいいけど、ほかの人はどうやって入手するんだろ?
クエストを終えたら、カウンターの人に聞いてみよう。
さて、薬草を集めに行くか。
レスタの町の外に出たが、薬草が見当たらない。
「お兄さん、薬草採取にきたの?」
声をかけられたので振り向くと、金髪の少年がいた。
「こんにちは、僕はトルク。アーチャーです。
きみは?」
「僕はfam。薬師だよ~。」
のんびりした子みたいだ。
「お兄さん、アーチャーってことはサブジョブのクエストを受けたんだね。
残念だけど、このあたりの薬草は採りつくされちゃったみたい。」
「ええ!
いつになったら採れそうかな?」
「ここまで根こそぎとられたら当分先にならなきゃとれないって、この世界の人が不機嫌そうに言ってた~。」
いきなり障害発生か。
しかも、近くの町の人に不満を持たせるなよ。
「どこに行けば採れそうかな?」
「フェードの森の近くまで行かないとないかも。
畑を手に入れれば、自分で栽培することもできるらしいよ~。」
「畑、か。ありがとう。」
今回のことを考えると、薬草や毒草のたぐいを安定して入手するために畑がほしいな。
この世界でも農業することになりそうだ。
とにかく、今はフェードの森に向かおう。
フェードの森の近くにきた。
少しばかり採取の形跡があるけど、まだまだ大量にある。
「モンスターに警戒しつつ、採りすぎないように注意しないと。」
声に出して確認し、採取に取り掛かった。
… 薬草採取中 …
途中で草原ウルフに出くわしたが、距離があるうちに[連射]で仕留めた。
スキル名が間違ってる?
この世界では[ガトリングショット]だろって?
…まだ慣れてないんだよ。少しずつ直すさ。
さて、薬草は30もあればいいかな。
レスタに戻って水を汲もう。
水汲み完了。
次は調合だな。
レシピ通りに作る場合は、アイテムと個数を選択するだけなのか。
初心者用調合キットを装備して、蒸留水のレシピを選択し、実行。
「蒸留水、完成~。
…実感がわかない。」
わがままかなぁ?
とりあえず、とっととヒールポーションを作って納品しちゃおう。
… ヒールポーションの調合および納品中 …
「ヒールポーション1つ、確かに受領しました。」
"クエスト[調合の基本]を完了しました。
トルク様は薬師のサブジョブにつきました。"
「初心者用調合キットはそのまま支給いたします。
ご活用ください。」
「ありがとうございます。
ところで、さっきのクエストは蒸留水の材料の水を汲むために空きビンが必要ですよね。
空きビンも購入してはいけなかったのですか?」
「いいえ、材料を自力で調達すればよいので、材料の材料は購入しても大丈夫です。
つまり、空きビンを購入してもよかったですし、水を購入してもよかったのです。」
そうだったのか。
まぁ、買えばお金がかかるし、もっている空き瓶を使ったほうがいいよな。
そういえば、もともと持っていたせいかスキル[採取]とスキル[調合]を習得しなかったな。
他のほとんどのスキルも習得できなかったりして。
それは少しつまらないなぁ。
職人ギルドを出ると、広場に茜と姉黄がいた。
「こんにちは。
サブジョブを生産職にしたんだ?」
茜に声をかけられた。
「はい。薬師になりました。」
「薬師ってことは、回復薬を作るんだね。
回復役がいないなら結構有用かな。」
「でも、ステータスの補正がないよね。
それでよかったの?」
姉黄には肯定的に受け取られたが、茜にはそうでもなかったようだ。
「毒薬みたいな状態異常付与の薬品を矢に塗れたら便利だし、爆薬と組み合わせることもできそうだからね。
単純に、どうせものづくりをするなら使うものを作りたいし。」
装備品だと自分用以外は売るしかないからなぁ。
それだと、売る手間が少しめんどくさい。
「確かに、それなら戦略の幅が広がるね。
作れるようになったら少し売ってくれない?」
茜が興味を持ったようだ。
ベースジョブがローグだし、手数で攻めるなら状態異常付与の攻撃を効果的に使えそうだ。
「いいよ。
といっても自分用優先だから、余りものを売るっていう形になりそうだけど。」
「それでいいわ。
作れるようになったらよろしくね。」
「了解。
それじゃあね。」
挨拶して茜たちとわかれる。
レベル上げの直後にクエストを受けて、さらにフェードの森周辺に行くことになったから疲れた。
渡り人亭に戻って寝よ。
明日からしばらくは薬師のレベルを上げよう。
######### side 茜 #########
「それじゃあね。」
状態異常付与の薬品ね。
ベータテスト時代には毒薬くらいしか存在しなかったし、武器に塗ったという話は聞いたことないけど、別のゲームで使ってたってことかしら。
単に試したプレイヤーがいなかっただけかも。
それとも、さまざまな状態異常付与の薬が作れることを知っている、もしくはトルクだけが作れるとか?
もしかして、プレイヤーをこの世界に召喚したのはトルク?
いや、さすがにそれはないか。
もしそうだったら、もっとトルクに優位な状態にするはずだし。
「茜、考え事?」
「うん、ちょっとね。」
「もしかしてトルクのこと?」
「間違ってはいないわよ。」
「へぇ~」
「勘違いだって言ってるでしょうが…」
さて、実際のところ、どんな秘密があるんだか。




