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第4話 まともな生活

######### side トルク #########

「いらっしゃい。渡し人亭へようこそ。」

建物に入ると、背の高く少々人相の悪いおじさんがいた。

「店主のゴッシュだ。泊まりかい?一部屋につき一泊朝食付きで200リルだ。数泊する場合は前払いで頼む。

あと、一応馬小屋なら一泊50リルで泊まれるが、どうする?」

所持金は100リルだしね。

「馬小屋で一泊お願いします。」

「…そうか。馬小屋はそっちだ。また、7時から8時の間に食堂に来れば朝食を出すから来てくれ。」

少しかわいそうな目で見られた気がするが、気にしない。

もしもに備えてお金を残しておきたいから、夕食はなしだな。

とっとと寝よう。


… 翌日 …


いてて、あまりよく眠れなかったな。

でも朝食はなかなかうまかった。


今日はちゃんと仕事してまともな部屋に泊まろう。


さて、どこに行けばバイトできるだろう。

「いらっしゃい」

歩き回っていたら声をかけられた。

振り向いた先には、カウンター越しにおばさんが立っていた。

すぐ脇にはパンの絵が描かれた看板があったので、ここがパン屋であることにすぐに気付いた。

「おはようございます。バイトがしたいのですが、何かありませんか?」

「お、じゃあ「渡し人亭」から注文を受けているから配達してくれるかい?」

「はい、わかりました。」

「頼んだよ。代金を受け取って報告してくれ。」


"クエスト[パン屋のアルバイト]を受けました。"


ちょうど泊まった宿あての依頼だった。

結構、量があるな。

さっさと完了しよ。


… 配達中 …


「ありがとう。はい、バイト代。」


"クエスト[パン屋のアルバイト]を完了しました。"


報酬は300リルと少々の経験値か。

他にもやってみよう。


… バイト中 …


本当に配達のバイトしかなかった。

でも、装備品の配達のほうが少しだけ報酬が高かったな。


さて、いい時間だし、昼食を食べたら冒険者ギルドで訓練しよう。


適当に食堂に入って昼食を食べた。

しっかりした食事(朝食は軽めだった)を堪能し、冒険者ギルドに向かう。


ん?カウンターで口論してる?


「だから、草原ネズミの討伐に行ったらグリズリーに遭遇したんだっていってるだろ。

ギルドの調査ミスじゃないのか!」

「草原ネズミの出現範囲とグリズリーの出現範囲は大きく異なります。

そして、草原ネズミの出現範囲にグリズリーの目撃情報はありません。

そのため、突然変異かもしれないので具体的に遭遇箇所を教えてください、と言っているではありませんか。」


ああ、狩場がよっぽど混んでたんだな。

大方、他のプレイヤーによって、ほとんどの草原ネズミが駆除されたんだろう。

でも、そのことにあせって強いモンスターの縄張りまで探しに行き、結果返り討ちとは、かわいそうだけど自業自得だろ。


「すみません、訓練場を借りたいんですけど。」

「お名前と内容を教えてください。」

「トルクです。内容は戦闘訓練で。」

「トルク様ですね。

かしこまりました。

どうぞお使いください。」


さ、訓練をはじめ

「なぁ、あんた。訓練なんて時間の無駄だぞ?

討伐クエストを通して実戦を積んだほうがよっぽど有意義だろう。」

訓練場の扉の前で声をかけられた。

振り返ると、ローブを身に着けた男性が立っていた。

「ご忠告どうも。トルクです。ベースジョブはアーチャー。あなたは?」

「俺はダンガン。ベースジョブはメイジだ。

それよりも、さっき言った通り、訓練より実践積んだほうがいいぞ。

訓練しても大して得るものなんてないだろ?」

高身長(180cmくらい)で赤髪のオールバックといった外見とは裏腹に、言葉遣いは少々雑だがこちらを気遣うように言った。

一応忠告してくれているのかな?

「だから俺とパーティ組んで討伐に行こうぜ。」

勧誘だった。

「忠告ありがとう。でも遠慮しておくよ。

草原ネズミをはじめ、序盤の討伐対象モンスターは刈り尽されていそうだからね。

訓練でもレベルとスキルレベルの両方とも上がるし、今の状況なら訓練のほうがいいと思ったんだ。」

するとダンガンは驚いたようだった。

「経験値入るのか!スキルのほうも!

てっきり操作方法の練習程度にしかならないと思っていたが、そうなのか。」

茜の言っていた通り、本当に無駄だと思われていたらしい。

「いいこと教えてくれてありがとよ。

そうだ!フレンド登録してくれ。

今度お礼するからさ。」

…またか。でもこの流れで断るのは気が引ける。

「りょーかいです。どうぞ。」

「なんか投げやりだな。気でも障ったか?」

おっと、さすがに良くない態度だった。

「いいえ。何でもないですよ。」

「それならいいんだが…。

あと、敬語はいらないぜ。

そんじゃ、またな!」

そういってダンガンはカウンターに向かっていった。

この様子だと、すぐに訓練場で鉢合わせそうだ。

別にいいけど。


「あら、今から訓練?」

訓練場には茜がいた。

「うん。茜は終わったところ?」

「ええ。これから友達に話をしに行くところよ。

訓練がんばってね。」

そう言って、茜は去って行った。

さて、訓練を始めよう。


訓練を始めて少しすると、案の定ダンガンが声をかけてきた。

「よう。さっき振り。

案山子に向かって魔法を撃っていればいいのか?」

「そうだよ。」

そう答えるとダンガンも訓練を始めた。

しかし、すぐに退屈になってきたのか

「どうせならPvPみたいな形の訓練をしてみないか?

訓練用の武器だから、威力も大したことないし。」

と言ってきた。

結構危ないことは避けたいけど、それも経験になりそうだ。

「やってみようか。

一方が攻撃してもう一方がそれをよけるっていう形でいい?」

「最初はそんな感じで、なれたらお互いに隙を見て攻撃って形にしようぜ。」

「そうしよう。」


そういって攻撃の打ち合いを始めた。

ダンガンはレベルが低かったせいか魔法のバリエーションは少なかった。

ただ、火や氷の魔法は出た後でもなんとか避けられたが、雷の魔法だけは速すぎて避けられなかった。

そのため、詠唱のを聞き取ったり魔法を撃つ時の癖を見たりなど、目に追えなくても避ける工夫をするようになった。

逆に、こちらの攻撃がダンガンに命中したのは最初のうちだけで、

こちらの攻撃の速さとタイミングに慣れたのか、次々とかわすようになった。

そのため、フェイントや速射、山なりに撃つなど工夫を凝らさなければ命中できなかった。


… 訓練中 …


結局、お互いが攻撃に工夫を凝らしていたため、回避に精いっぱいとなった。

PvP方式の訓練はまたの機会ということになりそうだ。


"トルク様はアーチャーレベル10になりました。

レンジアタックがレベル6になりました。

フェイントを習得しました。

クイックショットを習得しました。

アーチショットを習得しました。"


スキル習得の訓練を受けていないのにスキルを習得した?

スキルの内容が分かっていればスキル習得訓練を受けなくてもスキルを習得できるのか。

効果の高いスキルはともかく、簡単なスキルは自力で習得したほうがよさそうだ。

それに昨日よりもレベルが上がったな。


「今日はありがとよ。

おかげで大分レベルが上がったぜ。」

「僕も打ち合いや魔法の回避を経験できてよかったよ。

一人でやるよりもレベルが上がったし。」

一人の訓練よりも複数の人と協力して訓練したほうが多く経験を積めるようだ。

まぁ、何かしらの制約はあるだろう。一定レベル以上になると経験値が減るとか。

「おお、じゃあ訓練場であったときは一緒に訓練しようぜ。またよろしくな!」

「こっちこそよろしく。」

そんなやり取りをしてダンガンと別れた。

僕もレベル上げが効率よくできるなら大歓迎だ。

でも、隠し事(ステータス関連)を考えると少しうかつだったかな。

余計なことは言わないように気を付けよっと。


「いらっしゃい。…なんだ、また馬小屋かい?」

「結構バッサリ言いますね。

一部屋お願いします。とりあえず3泊で。」

「そいつはよかったな。3泊で600リルだ。」

気遣ってくれていたようだ。一言余計だけど。

昨日の今日だから仕方がないか。

「夕食は食堂で注文すればいいんですか?」

「おう。食い終わったら朝食の時と同じようにしてくれ。」

「わかりました。」


… 食後、自室にて …


「そういえば『Hunt and Farm』のアイテムとスキルは使えるのか?」

夕食後、部屋のベットで寝ころんでいると、そんな考えが浮かんだ。

一部使えないかもしれないし、使えても効果が変わっているかもしれない。

まともな生活が送れるようになったことだし、もう少ししたら町の外に出て確かめよう。

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