第3話 初めまして プレイヤー
######### side 茜 #########
「それにしても、プレイヤーが全然いないな。」
ベータテスト時代でもほとんど人が来なかった訓練場に人がいて、そんなことを呟いていた。、
「ほとんどの人が訓練場の存在を知らないし、知っていても無駄だと思って戦闘訓練を受けないからよ。」
疑問のつぶやきに、そのように返した。
「そうなんですか。
初めまして。トルクです。
見ての通りアーチャーです。
あなたは?」
「私は茜。ローグよ。」
「なんでそ」
「なんでそんなことを知っているかというと」
相手の言葉をさえぎっちゃった。まぁいっか。
「私がベータテスターだからよ。」
堂々と言ったら少し顔をしかめた。
「ベータテスターとか気にする人?
実際に有利なのは否定しないけど、気にしてもしょうがないわよ?」
気にするようなら今後あまり交流しなければいいことだし。
「いえ、それとは別で。えーと、こっちの都合です。」
それ、明らかに気にしていますって言ってるようなものでしょうに。
でも、ずるいとかそういうことじゃなさそう。
…聞き出せたら面白そうね!
「そう、まぁ聞かないでおくわ。それじゃあね。」
たまに話しかけて、どんな人か知ろう。
悪い人じゃなさそうだし、いじりやすそうだし。
隠し事を聞き出すためにも長期戦でいこうかしら。
########## side out ###########
######### side トルク #########
「そう、まぁ聞かないでおくわ。それじゃあね。」
そう言って茜さんは訓練のために場所を移動した。
しかし、さっそく遭遇したプレイヤーがベータテスターとはね。
『Hunt and Farm』のスキルを使ったらすぐにばれそうだ。
まぁ、プレイヤーのいる訓練場で『Hunt and Farm』のスキルを使うつもりはなかったけど。
さて、訓練を始めよう。
他の人の様子を見る限り、普通に弓の練習をすればいいようだ。
それじゃあ、練習開始!
構えて、案山子の中心を狙って、放つ。
当たったけど中心から少し外れた。
『Hunt and Farm』と結構感覚が違うな。
いや、ゲームとリアルの差が出てるのか?
でも、Dexの補正は効いてる気がする。
… 弓の練習中 …
いつの間にか夕方だ。結構練習してたみたい。
"トルク様はアーチャーレベル4になりました。
レンジアタックがレベル2になりました。"
アナウンスだ。
VRMMOの割には結構早くレベルが上がった気がする。
実践だともっと早く上がるのかな?
さて。現実逃避はここまでとして。
仕事してないから宿代がない!
どうしよう?
「うろたえているようだけど、どうかしたの?」
茜さんが話しかけてきた。
「いえ、宿代もないのに訓練していたことに気づいてしまって…」
情けないけど素直に答えることにした。
「ああ、ゲームの時は宿に泊まる必要がないものね。
でも泊まるところの手配もせず訓練するなんて、まぬけさんね?」
「あ、アハハ。」
からかわれた。
この人なかなか意地悪だ。
「初回ログインの時点で、イベントリに少しばかりお金があったはずよ。
最低ランクの部屋なら2,3日くらい泊まれるわ。」
おお、確かに100リルある。希望が見えてきた。
「藁を敷いただけの馬小屋みたいなところだけど。」
…あげて落とすとか、ほんとイイ性格してるよ。
でも、そこしかなさそうだ。
「そこしか泊まれなさそうです。どこにありますか。」
「ふふ、からかったお詫びに案内してあげる。
ついてきて。」
「ありがとうございます。ちなみに茜さんは」
「かしこまらなくていいわよ。茜って呼んで。」
「…了解です。茜は宿代どうしたの?」
「訓練をする前にお店で配達のクエストをこなしたわ。
お店ごとに1日一回しか受けられないけど、一般の宿代を稼ぐには十分ね。」
「そんなのあるんだ。アルバイトみたいだね。」
「実際にクエスト名が「○○店のアルバイト」だしね。
それでも低レベルの討伐クエストと同等の報酬をもらえるし。
しばらくの間は討伐クエストを受けてもクリアに時間がかかりそうだから、助かるわ。」
なるほど。僕もバイトしよう。
しばらくはアルバイトでお金を稼ぎながら訓練場に通う日々になりそうだ。
「でも、それなら他のプレイヤーも…」
「ベータテスターの中でも、生産職のプレイヤーが知り合いにいないと気づかないわよ。
生産職ならお店の人からアルバイトの話を持ち掛けられるけど、戦闘職の場合は自分から聞かないと受注できないもの。
それにアルバイトといっても戦闘職は配達のアルバイトしか受けられないの。
配達のアルバイトはそれほど報酬をもらえないから、ある程度レベルが上がれば討伐クエストを受けたほうが割に合うのよ。」
…最初の一時期くらいしか意味がないのか。
「生産職だと違うの?」
「納品のクエストといって、もらった材料から指定されたものを作って納品するクエストを受注できるの。
材料を集めずに経験値やスキルの熟練度を稼げるから、報酬以外にも得するのよ。」
しかし、結構いろいろ教えてくれるし、親切な人だな。
「はい、到着。
後は宿の人の説明を聞いてね。
それとフレンド登録しましょ。」
「あ、うん。ありがとう。」
到着したようだ。
会話に集中してて、全然道を覚えてないや。
フレンド登録してっと。
「じゃ、またね。」
「ありがとう。それじゃ。」
…あ、ついフレンド登録しちゃった。
まぁ、パーティを組むわけでもないし。いいかな。
今後気を付けないと。




