第2話 初めてのギルド訪問
######### side トルク #########
とりあえず情報を集めよう。
基本的な情報はヘルプから得られそうだ。
ベースジョブとサブジョブというものがあるのか。
サブジョブはレベルが一定以上で選択できて後々変更可能だけど、
ベースジョブはPC設定の時に決めて変更不可なんだ?
僕のベースジョブはアーチャーか。
もともと狩猟の時は弓を中心にしていたからいいけど、薬草育てたり薬品作ったりできるかな?
爆薬や状態異常付与の矢が作成できれば、『Hunt and Farm』とほぼ同じスタイルで生活できそうだ。
ステータスはレベルアップ時に上昇し、上がり方はメインジョブに依存する、と。
さらにレベルアップ時に得られるステータスポイントを自由に割り振れるんだね。
ステータスはstr(力)、vit(体力)、dex(器用さ)、int(知能)、mind(精神力)、spe(素早さ)、luck(運の良さ)に分かれていて、
メインジョブに関連するものが上昇しやすいのか。
スキルはレベルアップ時に得られるSPを使って習得でき、
後は熟練度を上げることで効果を高められるみたいだ。
また、いくつかの条件を満たせばSPなしでも習得できるみたい。
クエストは冒険者ギルドや職人ギルドから受けるほか、いろんなNPCから受ける場合もあるのか。
メインクエストは何らかの条件を満たすことで自動的に発生するんだね。
この辺は大抵のオンラインゲームと同じだ。
でもメインクエストは発生場所が分からず、しかも1度きりかつ全プレイヤーが参加可能なレイドクエスト扱いなのか。
ゲームクリアの条件を考えると当たり前かも。
他に、フレンド機能やクランシステム、チャットも大体同じか。
だいたいこんなものかな。
本当はもっと詳しい話を他のプレイヤーに聞いたほうがいいんだろうけど、
どんな人に遭遇するかわからないし。
実際に生活しつつ、NPC、じゃなくてこの世界の人たちにいろいろと話を聞こう。
まずは、当面の生活費を稼ぐためにギルドに行ってクエストを受けよう。
さて、各ギルドはどこだろう?
「すみません。冒険者ギルドと職人ギルドはどこにありますか?」
「面白いことを聞くねぇ。冒険者ギルドは大通り沿いに進めば見えてくるよ。
そして職人ギルドはすぐそこのあれだ。」
「あ、本当だ。ありがとうございます。」
目の前にあったのか。恥ずかしい。
って、看板を見たけど文字が読めないや。
こっちの世界でも要勉強か。
基本的な文字を誰かに教わらないといけないな。
とりあえず、職人ギルドでクエストを受けてみよう。
建物に入ると、受付らしきカウンターに赤髪の女性がいた。
「こんにちは。トルクと申します。クエストを受けたいのですが。」
「トルク様ですね。かしこまりました。
どのようなジョブに就いておられますか?」
「アーチャーです。」
受付の女性は少し呆れた顔をした。
「当ギルドは生産職に就いておられる方のみクエストを受注できます。
お客様は戦闘職ですので、冒険者ギルドでクエストを受注してください。」
ありゃ。職人ギルドのクエストは生産職限定か。
「ベースジョブが戦闘職ではダメってことですか?」
「いえ、サブジョブを生産職にしている間はこちらのギルドのクエストも受注できます。」
「なるほど。サブジョブにつくにはどうしたらいいですか?」
「ベースレベルを20まで上げた後、就きたいサブジョブのクエストを該当するギルドで受注してください。
ただし、サブジョブに就くためにはジョブごとに一定以上のステータスが要求されますので注意してください。」
「なるほど。ありがとうございました。」
お礼を言って、職人ギルドを出た。
サブジョブに就くためには、先にレベル上げをしなければいけないのか。
薬品づくりのために薬師になりたいし、食事のために料理人にもなりたいから早くレベルを上げよう。
気を取り直して冒険者ギルドに向かうと、受付に金髪の小柄な女性が座っていた。
「こんにちは。トルクと申します。クエストを受けたいのですが。」
「いらっしゃいませ。トルク様は戦闘職のジョブに就いていますか?」
「はい。アーチャーです。」
「読み書きは可能ですか?」
「いえ…」
ス、ストレートに聞いてきたな。
「申し訳ありません。不快でしたか?」
どうやら顔に出ていたらしく、受付の人に謝られた。
「いえ。別に。」
「本日初めて冒険者ギルドにいらした方々は読み書きのできない人ばかりだったので確認いたしました。
不躾な質問をして、申し訳ありませんでした。」
「そういうことでしたか。」
なるほど。今日初めて来た人たちとはプレイヤーたちのことだろう。
プレイヤーたちは全員この世界の文字を読むことができなかったんだな。
受付の人も少しうんざりしていたのかも。
「冒険者ギルドについて説明いたします。冒険者ギルドでは、クエストの受注と戦闘訓練をすることができます。」
受付の人が説明を始めた。
「受注可能なクエストは討伐クエストと調査クエストです。
また、クエストの中には特定のジョブやステータスやスキルを必要するクエストもございます。
このようなクエストは、パーティ内に条件を満たす人物がいれば受注できます。
ギルドから一度に受注できるクエストの数は1パーティにつき1つです。
ただし、緊急のクエストは例外になります。」
クエストに関する説明が続く。
「トルク様は冒険者になられたばかりですよね。でしたら草原ネズミの討伐がおすすめ…といいたいところですが、
多くの冒険者たちがこのクエストを受注しておられるので、規定数に達するほどの草原ネズミが既にいないかもしれません。
いかがいたしますか?」
しまった。ここは現実だから、モンスターを倒しても時間経過でリポップする、なんてことはないんだ。
「いえ、やめておきます。
戦闘訓練とはどのようなことができますか。」
「戦闘訓練とスキルの習得ができます。
戦闘訓練では、ジョブに該当する訓練をすることで経験を積むことができます。
スキルの習得では、スキルごとにSPを消費することでスキル習得の訓練を受けられるようになります。」
まあ、SPを消費するだけでいきなりスキルが使えるようになるのは現実ではありえないよね。
「アーチャーの戦闘訓練をしたいです。」
「かしこまりました。
あちらの扉の向こうが訓練場です。
訓練場に入ってすぐ近くの小屋に訓練用の武器があるので、そちらを使って訓練してください。
訓練終了後に片付けをお忘れなく。」
さて、訓練場とはどんなところだろう。
扉の先には広場があり、広場の端のほうにいくつかの案山子が立っていた。
そして、何人かが武器で打ち合っていた。
無料で利用できるからこんなものだよね。
動く的に当てる訓練をするときは、誰かに手伝ってもらう必要がありそうだ。
とにかく、練習用の弓で訓練を始めよう。
「それにしても、プレイヤーが全然いないな。」
「ほとんどの人が訓練場の存在を知らないし、知っていても無駄だと思って戦闘訓練を受けないからよ。」
なんとなくつぶやいたら、返事が返ってきた。
振り返った先には黒髪で軽装の女性がいた。
「そうなんですか。
初めまして。トルクです。
見ての通りアーチャーです。
あなたは?」
「私は茜。ローグよ。」
さっそくプレイヤーに遭遇してしまったようだ。




