第1話 Game start
「初めまして、皆様。私は皆さまをこの世界に招待した者です。」
ゲーム開始後、町の広場らしき場所に多くのプレイヤーが集まっている中で、
そんなアナウンスが聞こえてきた。
「初めに申しあげますが、この世界はゲームの世界ではございません。」
周囲が静まり返る中、そのアナウンスは非情な現実を伝えた。
「この世界は現実です。」
「えっ」
周囲から戸惑いの声が聞こえてきた。
「この世界は『蒼穹のつながり』に酷似していますが、現実の世界です。
そのため、この世界で死んでしまえばそのプレイヤーの人生が終わります。
なお、スキルやシステムはゲームの設定どおりでございます。」
ざわめきの声が広がり、中には怒声も聞こえる。
「元の世界に戻る方法はただ一つ。この世界のある存在を倒すことです。」
ざわめきが小さくなり、安堵の声も聞こえてきた。
「その存在が倒されたとき、生存しているすべてのプレイヤーが元の世界に戻るかどうか選択できます。
それでは皆様、この世界をお楽しみください。」
その言葉を最後にアナウンスはやんだ。
多くのプレイヤーが困惑する中、
「えーっと?」
トルクは別の意味で困惑していた。
######### side トルク #########
VRMMO『Hunt and Farm』にログインしたら、見慣れない場所に出た。
「こんな町、あったっけ?
そもそも僕が最後にログアウトしたのは自分の農場だったはず。」
マップには『レスタ』という町の名前が表示されているし。
どこからどう見ても見慣れた農場じゃない。
やけに人も多いし、あんな魔法使いみたいな装備あったかな?
システムのヘルプで確認しよう。
「あれ?ステータス画面ってこんな感じだっけ?
レイアウトから何から全部違う?
ってログアウトの項目がない!」
明らかにおかしい!
他のプレイヤーもログアウトの項目がないことに気付いたようだ。
違和感を感じて周囲に話しかけているプレイヤーもいれば、
デスゲームではないかと議論しているプレイヤーも見られる。
お、説明のアナウンスが聞こえてきた。
… 冒頭の説明中 …
「えーっと?」
ここ、『Hunt and Farm』じゃないの?
というかリアルってどういうことさ?
訳が分からん。
『蒼穹のつながり』がクローズドベータテストをしていたことは知ってたけど、
それ以上の知識はないんだよね。
『Hunt and Farm』でイベントリに入れてたアイテムは全部使えそうだし、
ステータスもスキルもほぼそのままみたいだから、他の人よりは安全だろうけど。
むしろ他の人の目につけられないように気を付けたほうがよさそうだ。
それに『蒼穹のつながり』のスキルが覚えられるかわからないしね。
さて、どうやって生きていこうかな。




