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ボーダー@ディベート!  作者: 塩コーフ
第一話 絶対領域
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第一話 絶対領域 その4

 やっと、絶対領域が見られる。

 リモコンを操作しながら、残念そうに顔をうな垂れる相坂。可哀想だが仕方がない。

 映像が再生されたと同時に、盛大な歓声が耳に飛び込んできた。満を持して、彼女たちがついに、絶対領域を露わにしたのだ。過程を飛ばしてしまったので、私たちは、満を持していないわけだが。

 それでも、彼女たちの絶対領域の破壊力は絶大だった。

 ステージ上を所狭しと駆け回る彼女たちのパフォーマンスは、絶対領域の持つ魅力を最大限活かすべく計算されたものなのだろう。特に、ラブリーステップ(相坂曰く、ファンの間での愛称)という、ステージ際まで近づき、180度ターンすることにより、スカートをひるがえすことで、絶対領域を見せつけるテクニックは、教師という立場を忘れさせ、食い入るほど見つめさせるほど強烈なものだった。これが、ラブスト……!


 「どうです! 最高でしょう、最高っすよね!?」

 いつの間にか回復していた相坂は超絶ハイテンション。

 「正直、アイドルをなめていた。まさか、これほどとは……」

 「でしょう、でしょう!? これを期に、先生もアイドルにハマるべきっす! 特別に持ち歩き用のDVDを貸してもいいっすよ!」

 「ふむ……」

 悪くない提案、乗るべきか、乗らざるべきか。

 「ちょーっとまったー!」

 机から身を乗り出し、八重塚が叫んだ。

 「なんだ八重塚。私は今大事な決断を」

 「今大事なのは討論でしょうが!」

 「あ、ああ。そうだな」

 DVDを借りるかどうかは、討論が終わってから決めることにしよう。


 「さて、DVDを見終わったことだし、相坂に絶対領域の魅力について語ってもらおうか」

 「先生がアイドルに興味を示したようですし、ここは本気を出さねばなりますまい」

 相坂は、DVDを一時停止しながら、リモコンを指し棒代わりに使って語り始める。

 「まず、2次元になくて3次元にあるもの。それは、肉厚! 絶対領域は、その肉厚を最大限活かすべくあるものなんすよ!」

 「な! 2次元にだって肉厚はあるわよ!」

 「八重塚、人が話している間は静かに聞くものだ」

 「うう……」

 小さく唸りを上げる八重塚。私も、そこにはちょっと反論したいところだが。

 「確かに、八重塚の言いたいことはわかる。僕も、同好会に入ってから2次元についての知識を持ち始めたからな。でも、足りない。3次元と比べると圧倒的に足りない!」

 相坂は、更にDVDの再生を進める。ちょうど、絶対領域が目立つところで再生を止めて、そこをリモコンで指す。

 「どうです、この肉厚! イラストでもテクニックさえあれば肉厚を出すことは可能です。しかし、どんななにがんばっても、このどっしりとした肉厚を表現することはできないでしょう!」

 「そ、そんなこと」

 「まあ、これについては僕の知識不足もあるのではっきりとは言えません。肉厚のあるイラストを見れば意見が変わるかもしれません。しかし、それ以上に決定的な違いがあるんですよ!」

 2次元と3次元の決定的な違い……?

 「それは、動きがあるかどうかの違いです!」

 「ちょっとまって! 2次元にはアニメがあるわ!」

 「確かに、アニメは映像作品です。しかし、僕が言っている動きがあるというのは、そういうことを言っているわけでは無いんですよ」

 相坂が、DVDを再生する。画面に映っているのは、ラブストの華、ラブリーステップ。

 「この、スカートのひらめき! 垣間見える絶対領域! とんだハプニングに期待してしまうこの気持ち! アニメでは味わうことはできないっすよね!?」

 「………………」

 先ほどまでの威勢はどこにいってしまったのか。八重塚がすっかり沈黙してしまった。

 ……仕方ない。ここら辺で休憩を挟むか。


 「さて、お互いに意見は出せたみたいだな。それじゃ中間発表に入るぞ」

 中間発表、この同好会での討論は、前半戦と後半戦に分けて行う方式を取っている。そのため、休憩に入る前に中間発表を行い、その中で簡単なまとめと、どちらが優勢に立っているのかを説明する。

 「まず、2次元チームは、イラストを使って、絶対領域はキャラクターを引き立てる要素のひとつだということを主張した」

 「対する3次元チームは、アイドルのDVDを使って、2次元にはできないこと、肉厚や絶対領域を見せるためのテクニック、予期せぬ事態の発生はアニメでは表現不可能と主張した、ということでいいんだよな?」

 「おっけーっす」

 「残念だが2次元チームの主張は、前田が言ったとおり、3次元でも同じことが言える。対して3次元チームは、2次元との差異を主張してきた。現時点では、3次元チームの優勢であるという結論を出さざるを得ないな」

 「ふふふ、今日は負ける気がしないっすよ!」

 「…………」

 余裕の表情を浮かべる相坂と前田、対する八重塚、篠原は無言のまま。

 「とりあえず一旦休憩を取るか。お互い、後半戦もがんばってくれ」


 さて、主力兵器の登場で一気に優勢に立った3次元チーム、それに対して2次元チームはどのような方法で逆転をするつもりなのだろうか。

 

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