砂漠のサボテン
水を飲むことで、なんとか感情を制御しつつあった、リッツ。
しかし喉が潤ってからも、やはりハルカを捕らえたかった。
「ちくしょう。ハルカ・・・・・・。それともうひとりの野郎も、ぶっ殺す!」
水を袖でぬぐってから、リッツは銃を手に取った。
チュールはリッツの殺意をいち早く察知して、ハルカを隠さなければ、とあわてて行動に移す。
「ここは危険だ。ずらかるぞ」
――いざとなったら、コイツで・・・・・・。
チュールは剣を引き抜いて刀身を見つめた。
ぎらり、と太陽に反射するその真っ青な剣は、透明の、まるで鏡のような妖しさを秘めていた。
「こいつの名は、バルムンク。古代、様々な勇者の生き血をすすってきた、いわくつきの剣さ」
「でも」
ハルカはここで、つっこまずにいられなかった。
「剣が使われなくなったのは、火器や銃器類が発達したため、じゃなかったっけ。リッツは未来の人間で、二十一世紀の私がいた世界のものよりずっと、進化した武器もってたじゃない。勝てる確率なんてあるの?」
チュールは真っ赤な顔をしながら、低くうなる。
「どうしたの」
「うるさいっ! お前は黙って俺についてくりゃいいんだよッ」
怒りんぼのチュールは、ハルカの腕を引っ張って、砂漠化した大地を足早に歩く。
砂漠。
どこまでいっても、砂漠、砂漠、砂漠!
サボテンひとつ見つからない。
「砂漠にはサボテンがあるはずなんだけど・・・・・・それさえあれば水や鉄分ほか、栄養素が含まれてるから、飲んで生き延びられるって」
「過去の昔話だな」
チュールが砂に足を取られたハルカに手を伸ばす。
「リッツもいってたじゃないか。既にここは、人が住める、否、動物が住める星じゃないんだよ」
「でも・・・・・・希望は捨てるものじゃないって・・・・・・」
「甘ったれたことを」
片腕を腰に当てるチュール。
その姿にハルカは、恐怖をおぼえて身をすくめた。
「そんなコト言ってると、あっという間リッツに殺られちまうぞ」
「でもあきらめたら、そこで終わりじゃない」
チュールはハルカの澄んだ黒い瞳へ、釘づけになる。
吸い込まれそうな錯覚に陥りながらも、チュールは自制心を保とうと必死だった。
――バカか俺は。こんなときに何を考えている。
「私は生きたい、死にたくなんてないよ」
ハルカはうるんだ瞳をチュールに向け、懇願し、チュールはチュールで乾燥してパサパサの髪の毛をわしづかみにして、彼は怒鳴った。
「わかった、わかったから、そんな顔して俺を見ないでくれッ」
――俺が何とかしてやるよ。
口には出さなかったけれど、それがチュールにとって、精一杯のやさしさだった。
な、なんかリッツ、置いてきぼりって感じがする(笑。
もともと好きなキャラじゃなかったせいか、あんまり出したくないのかな、自分(w